【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第18回:環境にも働く人にもやさしい職場、サンフランシスコのDPRオフィス  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第18回:環境にも働く人にもやさしい職場、サンフランシスコのDPRオフィス

【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第18回:環境にも働く人にもやさしい職場、サンフランシスコのDPRオフィス (2018/1/12 nomad journal

職場での環境問題ということで考えると、普通は製造現場のエネルギー消費量低減といったような話になりますが、最近では私たちの働き方やオフィスのあり方の面でも様々な対策が話題になっています。今回はアメリカのサンフランシスコで見た「環境にも働く人にもやさしい職場」をご紹介します。

オフィス

ネットゼロエネルギーとは

2年ほど前にサンフランシスコで働いていた知人を訪ねたのですが、その時にこの知人の勤務先のオフィスを見学する機会がありました。たかがオフィスと思うかもしれませんが、このオフィスはDPRという建築会社のもので、2014年に改造し、同年ENRというエンジニアリング機関の「ベスト・プロジェクト賞」を受賞したオフィスなのです。ではDPRオフィスは、どんなところが評価され賞を獲得したのでしょうか。

受賞の最も大きな理由はこのオフィスが「ネットゼロエネルギー(NZE)」というコンセプトに基づきデザインされていたことです。ネットゼロエネルギーとは、消費するエネルギーをなるべく節約し、その一方で太陽光などの再生されたエネルギーを使うことによりエネルギー量の収支をプラスマイナスゼロにしていこうとする考え方です。日本でも2012年に経済産業省が「ネットゼロエネルギー」のコンセプトを定義し、一般に広めてきていますが、実際に職場でこれほど高いレベルで使われているのを見たのは、このサンフランシスコのオフィスが初めてでした。

天井の設計がキーポイント

DPRがネットゼロエネルギーを達成するために、最も力を入れたのがオフィスの天井の設計です。実際、オフィスには普通の平らな天井はなく屋根裏が天井になっています。そしてこの屋根の上にはソーラーパネルが敷かれ、オフィスの照明や機器に必要な電力をここから供給するのです。また温水器も取り付けてありますから、お茶を飲んだりするためのお湯もこの温水器から使います。

さらに、この屋根の2カ所には天窓が取り付けられています。この天窓はオフィス内の照明を必要以上に使わないように設計されたもので、天窓の表面には特別なコーティングが施され、室内の明るさに応じて差し込む光の量が調整されるようになっています。また、オフィスは平らな天井がない分だけ空間が広くなっていますから、何もしなければ冷たい空気は下の方に溜まり、暖かい空気は上の方に溜まってしまいます。これを避けるために、屋根裏(天井)の数カ所に大きな扇風機を取り付け空気を巡回しオフィス全体の空気の温度が均一になるように工夫しています。

働く人にもやさしいデザイン

このようにDPRオフィスのデザインは、環境にやさしい要素をふんだんに取り入れているのですが、そこで働く人にとってもやさしい心配りがされています。まず一番の工夫は「リビングウォール」です。リビングウォールとは植物を覆わせた壁のことです。オフィスの壁全部を使うのではなく、一か所の壁をアクセントウォールとして選びアレンジします。一瞬、造花を飾っているように見えるのですが、近づくとそれが造花ではなく花を付けた活きた植物であることがわかります。見ただけで心が和みます。でも活きた植物を使っているのは、見た目を良くするためだけでなく、植物がオフィス内の二酸化炭素を吸収し、代わりに酸素を吐き出してくれるためなのです。つまりオフィス内の空気を新鮮に保つことができ、そこで働く従業員の健康に良いからなのです。

DPRのオフィスには、このほかにも働く人の健康を配慮したアレンジが見受けられます。それが多目的ルームとジムです。多目的ルームはその名の通り様々な目的に使われますが、特に定常の机から離れて、静かな雰囲気の中で一人になって仕事をしたいときに効果的だそうです。またジムは、仕事中でも汗をかきたい人は使っても良いそうです。

仕事中の飲酒もOK

更に驚いたのが「ワインバー」。そう、このオフィスにはアルコールを飲むためのカウンターがあるのです。ワインバーエリアに置かれた冷蔵庫にはアルコール類を含む飲み物が冷蔵されており、仕事中でも飲んで良いそうです。もちろん、飲み過ぎて仕事に支障をきたすようでは困りますが、少量のアルコールは創造力を高めるのに効果があるという研究発表もあります。建築を手掛けているDPRではアルコールが持つ創造力醸成効果を取り入れたそうです。ただし、案内しくれた知人は、「ほんとうに大丈夫か」というこちらの心配を気遣ってか、「通常は仕事が終わってから一杯やる」と苦笑いをしていました。

ちなみにこのワインバー、すばらしい赤褐色の木材で作られているのですが、これがなんとリサイクル品だということで驚きました。知人の話によると、サンフランシスコのある古い建物の内装にレッドウッド(せこいあ)という木材が使われていたのですが、その建物を壊すことになり、その時にこのレッドウッドを引き取り、リサイクルして利用したものだそうです。

世界的に年々関心が高まっている環境問題。今回ご紹介したサンフランシスコのDPRオフィスのデザインは、関心が高まっている環境だけでなく、そこで働く人々の健康をも考慮して、いくつもの工夫がされていることに感動しました。これからの理想の職場を提示しており、「ベストプロジェクト賞」にふさわしい素晴らしいオフィスだと思いました。

記事制作/setsukotruong

提供:nomad journal

関連記事
出来るビジネスパーソンは疲労を溜めない!毎日全開フル回転できる疲労回復術
東京都の働き方改革宣言とは~その中身と評価は~
まだまだ棲息。働き方改革を阻害する社畜という名の有害社員のあるある事例
非正規充実、正社員低調のワークライフバランス調査が示す理想の働き方
働き方改革で注目、テレワークの必要性とガイドライン