チケット転売仲介サイトの社長が詐欺容疑で書類送検、何が詐欺にあたる? (2018/1/13 JIJICO)
転売は法律では禁止されていないのに詐欺になる?
チケット転売仲介サイトの社長が詐欺容疑で書類送検されたとの報道に接しました。報道によりますと、高額転売を目的として人気女性歌手のコンサートチケットを不正に入手したことが詐欺に該当するとのことで検挙されていたようです。
この点、転売そのものが法律で禁止されているわけではないですし、チケット入手にあたり代金も支払っているようなので、なぜ詐欺に問われるのか疑問に思う方も多いようです。その点について解説してみます。
「詐欺罪」とは?詐欺が成立するための法律上の構成要件を解説
まず、刑法246条1項が「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と定めているとおり、詐欺罪は、人を欺罔して、財物を騙取することによって成立します。「欺罔」とは、人を錯誤に陥らせることですから、詐欺罪が成立するためには、「欺罔行為」により相手方が「錯誤」に陥り、それを原因として相手方が「財産上の処分行為」を行い、その結果、「財物の交付」がなされるといった因果の流れが必要となります。
そして、欺罔行為の手段・方法には制限がありません。言語によるものもあれば、動作によるものもありますし、直接的なものもあれば、間接的なものもあり、さらには、作為によるものもあれば、不作為によるものもあります。
チケット販売会社の利用規約には何が書かれている?
ところで、チケット販売サービスについては、業者ごとにサービス利用規約が定められています。
例えばチケットぴあの利用規約には、サービスの利用にあたり行ってはならない禁止行為として、「当社の承諾なく、本サービスを通じて、もしくは本サービスに関連して、営利を目的とする行為、またはその準備を目的とした行為」「当社から購入したチケットを、営利を目的として第三者に転売、または転売のために第三者に提供する行為」「チケット券面金額より高い価格で転売、または転売を試みる行為、オークションまたはインターネットオークションにかけて転売、または転売を試みる行為」などが定められています。
この規約を前提に、転売目的で購入することを詐欺罪の構成要件に従って整理してみますと、「転売目的であるのにそれを秘匿し、転売目的ではないものと装って購入申込み」→「販売業者において申込者は転売目的ではないものと誤信」→「申込者に対する財物(チケット)の売却・交付」→「申込者による財物(チケット)の取得」となって、詐欺罪の構成要件に該当することになるわけです。
「転売目的」でのチケット購入は「騙す行為」にあたる
転売目的でチケットを購入するところに騙す行為があるのですから、コンサートに行く予定でチケットを購入したものの、その後、予定が立たなくなってやむを得ず友人にチケットを転売することは、騙す行為は存在せず、何ら問題がないということになります。
仮に、正規の代金を支払って購入しているのであるから、一見すると、チケット販売業者には損害が発生していないようにも思われるのですが、騙されたことによって財産的価値のある「チケット」を交付し、それを失ってしまったことを損害と捉えるのです。
自由取引経済をベースに考えると転売行為自体を規制するのは困難
乗車券等の不当な売買行為(ダフ屋行為)については、「公共の場所」や「公共の乗物」でなされる行為のみ、各都道府県迷惑防止条例で罰則規定が設けられているところですが、転売目的購入を禁止しているチケット販売業者からの転売目的購入自体をなんとか詐欺罪に問うことはできたとしても、それ以上の規制まで設けることは、自由取引経済社会の中ではやや行き過ぎなのかも知れません。
- 著者プロフィール
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田沢 剛/弁護士
裁判官として数々の紛争処理を経験してきたこと
裁判官時代に民事、刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり、裁判所がどのような点を問題にしているのか、どの部分の証拠が足りないのかなど、事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。
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