内閣府の働き方改革の取り組み~建設業の働き方改革に関する協議会の事例から~ (2017/12/27 nomad journal)
なぜ働き方が改革が必要か
安倍総理が主導で行われている働き方改革実現会議では、
日本経済の再生を実現するためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と、労働参加率の向上を図る必要がある。そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創ることが必要である。一億総活躍の明るい未来を切り拓くことができれば、少子高齢化に伴う様々な課題も克服可能となる。家庭環境や事情は、人それぞれ異なる。何かをやりたいと願っても、画一的な労働制度、保育や介護との両立困難など様々な壁が立ちはだかる。こうした壁を一つひとつ取り除く。これが、一億総活躍の国創りである
としています。こうした社会を実現するために、長時間労働の改善、非正規・正規の区別をなくす、それぞれの生活環境にあった働き方を選択できるための法整備を目指しています。そこでこのこのコラムでは具体的な事例として、建設業を取り上げ、実際にどのような議論が協議会で行われたのか紹介します。
建設業に働き方改革が必要な理由
内閣の働き方改革で建設業が協議されるには理由があります。ここではなぜ建設業に働き方改革が必要なのか、その理由について説明します。
1.高齢化が進んでいる
建設業は高齢化が深刻です。国土交通省の資料によれば、「55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題」であることが分かります。このまま高齢化が進み、高齢者が退職すれば深刻な人手不足に陥ることは間違いないでしょう。
2.技能労働者の減少
さらに問題なのは技能労働者の減少です。つまり建設に関する専門的な技術を持っている労働者が減っているのです。特に10代、20代の技能労働者が少ないため、今後、専門的な技術を持っている労働者が不足するのは間違いありません。
3.年収が低い
建設業の年収に関しては、他業種と比較して低くなっています。国土交通省の資料によれば、建設業生産労働者は年収が417万6800円であるのに比べ、製造業生産労働者は468万2200円と、「年収額は上昇傾向にあるものの、未だに製造業よりも1割程度低い水準」です。こうした状況であれば、他の業種で働く人が増える現状も分かるでしょう。
4.労働時間の問題
建設業は労働時間も長く、出勤日数も多いのが特徴です。国土交通省の資料によれば建設業の2016年度の年間総労働時間は2056時間で、製造業の1951時間と比べ、105時間も長くなっています。また、製造業が2007年よりも労働時間が42時間短くなっているのに比べ、建設業は9時間しか短くなっていません。こうした違いは1日の労働時間に直すと、大きな数字ではありませんが、業界全体が長時間労働を改善しようという意志が少ないと考えることはできます。
また建設業は2016年度の年間出勤日数が251日であったのに比べ、製造業は234日で17日の差があります。年間で17日というとかなり大きな数字です。実際に「建設工事全体では、約65%が4週4休以下で就業している状況」で、休みが少ないのは確かです。
今後の方向性はどうなるか
前述した状況を踏まえて、今後の方向性について議論されています。ここでは今後の方向性について説明します。
1.工事期間の適正化
まず挙げられるのは工事期間の適正化でしょう。短時間での工事はどうしても労働者にしわ寄せが来てしまいます。
そのため、「時間外労働の上限規制に対応できるよう週休2日を前提とした適正な工期設定による工事の発注や施工時期の平準化を推進」(国土交通省の資料)ことが、今後の取り組みとされています。こうした見直しが行われれば、労働時間が短くなり、出勤日数が少なくなるはずです。
2.社会保険などの福利厚生費の確保と安全衛生経費の確保
工事期間が長くなればコストが増えますから、その分を人件費削減で埋め合わせても不思議ではありません。
せっかく労働時間が減ってもこれでは意味がないですよね。「適正な工期設定に伴うコスト増加のしわ寄せが必要経費の削減に繋がらないよう、社会保険の法定福利費や安全衛生経費を含んだ適正な請負代金による契約を徹底」(国土交通省の資料)が必要になるのは間違いありません。
3.ICTを活用し生産性を向上する
建設現場にはICTの導入が進んでいないところも多いです。ICTを活用して、生産性を向上すれば労働時間も少なくなり、休みもとれるようになるでしょう。
4.ガイドラインの策定
1、2の内容はただ発表しただけでは意味がありません。ガイドラインを策定して、しっかりと守ってもらう必要があります。そのため、これらの内容をしっかりとガイドラインとして策定する方向へと向かっています。
5.監視の強化
またガイドラインを策定しても、それが守られなければ意味がありません。「受注者による工期ダンピングや発注者による短工期の強要を防ぐための取組について検討」する方向へと向かっています(国土交通省の資料)。
建設業だけでなく全業種に共通している
これまで紹介したのは建設業について協議されていることですが、これは建設業に限られたことではありません。この働き方改革の流れはすべての業種に共通することでしょう。労働者にとっては今よりも労働環境が改善するのは間違いありません。
企業としてはそうした流れの中で、逆に労働環境の良さをアピールして優秀な労働者を確保することが求められるでしょう。
記事作成/ジョン0725
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