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データで明らかになった“働かないおじさん”の実態とその処方箋 (2017/12/6 瓦版

関連ワード : 労働・雇用 調査 

大規模調査で浮き彫りになった“働かないおじさん”説の深層

働き方改革が着実に前進する一方で、ミドル層・シニア層が過渡期の狭間でもがいてる。出世街道に乗っていれば先はみえるが、そうでなければ、茨の道が待ち受けているのだから無理もない。法政大学大学院石山恒貴研究室とパーソル総合研究所のミドル・シニア社員4,700人を対象にした大規模な共同研究で明らかになったのは、同層での行き詰まりと躍進の境目にある一定の法則だ。

居眠り

リストラでは真っ先に対象とされ、給与削減はもちろん、横ばいは当たり前。年功序列全盛の時代に好景気を謳歌し、人口減少フェーズの停滞期には新しい働き方へのシフトで、忠誠ベースの昇進パターンが事実上崩壊――。その渦中にいるミドル・シニア世代(40歳~54歳・55歳~69歳)は、突然のレール断線にモチベーションを大きく減退させている。不可抗力の側面もあり、なんとも気の毒だが、周囲には経験があるのに楽ばかりする“働かないおじさん”にしかみえない…。

実際のところ、“働かないおじさん”は本当なのか。同研究はそうした偏見を抜きに同世代を不足する労働人口を担う最大のボリュームゾーンと捉え、その実態を徹底調査。ベールに包まれがちだったその働きぶりを企業の協力を得ながら、インタビュー調査なども交えて大規模に調べ、その傾向や実像をエビデンスベースで明らかにし、対応策にまで踏み込んでいる。

まず、ミドル・シニアの活躍実態はどうなっているのか。同研究では、同層を大きく「躍進層」「中間層」「非躍進層」の3タイプにカテゴライズ。自己採点方式で、その輪郭を浮き彫りにした。その結果、それぞれ21.2%、48.2%、30.3%となった。“働かない”とされるミドル・シニア層にあって、3人に1人があてはまる結果だ。質問は、仕事に対する前向きな姿勢に関するものばかりなので、“自称”非躍進層が3割超というのは、なかなかのインパクトといえる。

年代別では、非躍進層は45歳~49歳が最多で36.7%、躍進層が最も少なかったのは50歳から54歳で16.3%だった。いわゆるバブル世代があてはまり、かつての好景気の恩恵を享受しているだけに、現状の厳しさに耐えがたいものを感じていることが反映された結果といえるのかもしれない。性別では、男性の非躍進層が31.1%に対し、女性22.4%。一方、躍進層では、男性20.8%に対し、女性25.4%となっており、“働かないおばさん”が目立たないことが証明される結果となっている。

ミドル・シニア社員調査

同研究では、ミドル・シニア社員をさらに違う軸でタイプ別に分類。「ハイパフォーマー」「バランス」「伸び悩み」「事なかれ・安住」「不活性」の5つにカテゴライズしている。最も多いのが伸び悩みタイプで38.3%を占め、全体の4割弱となっている。このタイプについて、法大石山教授は「忙しさや昇進・昇格に対する見通しも感じている。今後については勤めつづけたい気持ち、転職したい気持ちもともに低い。おそらく日常の忙しさの中で、敷かれたレールの上をそのまま走ってしまっているのではないか」とその実態を分析する。

4割弱の“働かないおじさん”を再生するヒント

モヤモヤしつつも、それなりの意欲はある。それだけに、同研究でもこの層の再生が労働人口減少を補てんする重要項目になると認識。その上で、伸び悩みタイプからバランスタイプへのシフトを促す打ち手を次のように提言する。

パーソル総合研究所との共同研究の結果を解説する法大大学院・石山恒貴教授

パーソル総合研究所との共同研究の結果を解説する法大大学院・石山恒貴教授

「今回の調査で躍進している層の行動が明確に裏付けられた。伸び悩みタイプからバランスタイプへシフトするには、5つの行動から構成される『躍進行動』を促進する必要がある」と石山教授。5つの行動とは、<仕事を意味づける><まずやってみる><学びを活かす><自ら人と関わる><年下とうまくやる>。多くは新人奮起にも当てはまりそうな項目だが、経験を積んだミドル・シニア層だからこそ、より自律的・主体的に行動することが、見違えるような躍進につながり得るということだろう。

一方で、石山教授は、年下上司が当たり前になる世代だけに、上司のマネジメント力の重要性も指摘する。「年上をマネジメントすることになる年下上司は、年上部下を特別扱いしたり、手取り足取りでなく『認めて・任せる』マネジメントへシフトすることが肝要です。一方で、年下上司のもとで働くミドル・シニア層も積極的に会話をするなどの姿勢が求められるでしょう」。簡単なようで難しい、非躍進タイプのミドル・シニア層の扱い方。腫れ物に触るようではお荷物にしかならず、手をかけすぎると反発する。そのさじ加減は相当難しそうだが、ひょっとするとそうしたことも、“おじさん働かない説”拡大の根底にあるのかもしれない…。

石山教授は研究の総括として、次のように解説する。「伸び悩みタイプは、とりわけ上司に対する不信感が強い傾向にある。従って、認めて任せるマネジメントやキャリアサポートの強化、仕事を介した信頼関係の構築などで変われるはず。その上で、働く個人は出世軸から専門性を追求する仕事軸へシフトし、自走する力を意識することが大切になる」。

昨今は、人生100年時代といわれる。生涯現役も叫ばれる。ミドル・シニア層の想定ゴールは、良くも悪くも随分先に延びた。とりわけミドル世代にとっては、まだ人生の折り返し点でしかない…。殻に閉じこもってくすぶっていても、ますます自分の首を絞めるだけだ。時代の流れを嘆く暇があるなら、隣の若手とほどよい距離感で会話できるよう<まずやってみる>。そうした行動が、職場での喜びを生み、やりがいへとつながり、ひいては人生の充実度を高めてくれるのではないだろうか。

提供:瓦版

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