【箕面市長 倉田哲郎氏:第1話】頑張った人が報われる 自治体の給与制度改革 (2017/10/9 HOLG.jp)
【倉田哲郎氏の経歴】
総務省での仕事を経て、大阪・箕面市へ出向。任期満了により総務省に戻るが、慣れ親しんだ箕面の地と、地方自治の仕事を忘れられず箕面市長選挙に挑戦、第15代箕面市長に就任。就任時(34歳2ヶ月)は全国最年少市長。市長就任の翌年度、5年連続だった財政赤字を黒字に転換。徹底した行財政改革を進める一方、多彩な政策とスピード感のある行政運営を展開。
――地方自治体の人事領域における改革が進んで行くのではないか、という声を自治体職員から聞くことが増えて来た。頑張った人が報われないどころか、杭のように打たれることもまだまだ多いと言われる自治体文化だが、この声が大きくなっている背景には、そういった旧態依然の制度や文化から脱却することへの期待が含まれているのではないかと感じる。
実は、自治体職員の間であってもあまり知られていないことだが、3年前の2014年に既に年功序列の給与制度を改革した市長が存在する。大阪府箕面市(みのおし)の倉田哲郎市長だ。この事例が全国の自治体の参考になればと思い、倉田市長に話を伺った。
「ずるくありませんか?」
加藤(インタビューアー):給与制度改革について、どういった目的で進められたのか教えていただけますか?
倉田市長:もともと、僕は総務省で仕事をしていた公務員です。国でも自治体でも基本的には、自分の仕事の結果が給料に結びつかないんですよ。ただ、自分がいた総務省本省を眺める限りにおいては、大きな格差みたいなものは感じていなかったです。
だけど、国からの出向で初めて箕面市に来たときに、その格差がすごく激しいと感じました。うっすらとそう感じていましたが、市長になって一期目の終わりくらいに20代後半~30代前半くらいの若手の職員と飲んでいたんです。そこで愚痴を聞きました。
彼らが「なんか、やっぱり…ずるくありませんか」と言うんです。頑張ってやっている人にばかり仕事が回ってきて、何もしない人は全然何もしない。もちろん、若手達も頑張って仕事をするんだけど、頑張らない人でも歳をとるだけで給料が上がっていく。
頑張った人が報われる給与体系にしないとダメ
加藤:昇進なども同様に不満があったのでしょうか?
倉田市長:箕面市役所は比較的早くから、昇進は年功序列ではなくなっていました。だからこそ、活躍して昇進した若い人間に年上の部下がいて、その部下のほうが上司よりも給料が高い。「それってどうなの?」という話になりました。
その話を聞いてから、市役所全体のパフォーマンスを上げるためには、頑張った人が報われる給与体系にしないとダメだと感じました。実際、役所の中には頑張らない人達が、頑張っている人達を迷惑そうに見ることもある。「お前らが頑張っているから、俺達も頑張らなければいけなくなって迷惑なんだよ!」という感覚で見ている人達がいるわけですよ。
公約に書かないと実現できないと思った
加藤:その後、どのように動かれたのでしょうか。
倉田市長:市長二期目の選挙で公約に書いたんですよ。
加藤:公約に書いてできなかった場合は政治家としてのリスクも大きいと思います。実現できるという確信があったということでしょうか?
倉田市長:いえ、むしろ、「公約に書かないと実現できない」と思ったんです。選挙で住民に宣言して勝つと、そこに力が生じるんです。行政内部においても「いや、もう公約しちゃったから」と言えることはとても強い力なんですよ。
僕は一期目のときには自民党も民主党も公明党からも推薦をもらいましたし、市役所の職員組合も応援に入ってくれていました。しかし、この話を進めていこうと思ったら、色々反対が出てくるわけですよね。ですので、二期目は結局どこからも推薦をもらわずに完全無所属で選挙に出ました。背水の陣でした。
組合と議会にどう納得してもらえるかが肝
加藤:この制度を通すうえで越えるべきハードルは、人事の担当課、組合、議会でしょうか。
倉田市長:やはり組合と議会にどう納得してもらうかが肝ですね。一方、人事の担当課(以降、人事室)のことは、どうやったらできるのかを一緒に作る相手でした。やはり、彼らは部下であったし、制度について僕より詳しい。その制度に詳しい立場から、「ここは難しい」「これはできるかもしれない」という感じで提言してくれる。
もしかしたら僕が元役人とかではなく、純然たる政治家として来ていたとしたら、制度の話は難しいので言い負かされている可能性はありますけどね。
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