35~54歳の不本意中年フリーター125万人、現状と対策は? (2017/9/26 JIJICO)
中年フリーターの現状
総務省の2016年「労働力調査」によりますと、35~54歳までで正規職員になりたくてもなれずに非正規となっている方(不本意非正規)が125万人いるとの結果が出ています。この中年フリーターの問題をどのように解決すれば良いのでしょう。
不本意ながら非正規職員となっている125万人を男女別に見ると、男性49万人、女性76万と女性の方が多くなっています。育児や介護等により一度退職すると、それが終わっていざ正規に戻ろうとしてもなかなかなれない、ということが大きな要因です。
一方で男性の場合、就職氷河期に正規雇用で就職できず、正規の仕事を探しているにもかかわらずそのままフリーターを続けている方や、一度退職してよりよい条件、仕事を探して転職を試みたもののそれが無く、やむを得ずフリーターを続けている方も多いようです。
非正規雇用による低賃金は、結婚したくてもできない、母子家庭に至っては子供の貧困など様々な社会問題の引き金となっています。
売り手市場で正規雇用のチャンスが
景気回復と少子高齢化により、有効求人倍率が正社員で本年6月に1倍を超え、直近で1.01倍となり、売り手市場となってきました。
これを受け、大手企業では人手を確保するため、非正規を正規に転換する事例や、人手不足の業界では、猫の手も借りたいという現状から中途採用時に経験を問わないなどの動きも出てきているようです。
これらの流れを上手く利用して、今こそ積極的に正規採用を目指して動くときです。現在の職場での社員採用や転職活動を諦めてしまっている方は、もう一度、正規職員になるための道を探っていくべきではないでしょうか。たとえば、ご自身の経歴を振り返って整理したり、世の中にどのようなニーズがあるのか情報収集するところから始めてみましょう。
年金の支給開始年齢などを考えれば、70歳までの現役社会が来ています。まだまだ働く期間は長いので、少しでも充実した仕事をして行きたいところです。
政府の働き方改革にも期待
政府としても働き方改革で、世の中から「非正規」という言葉を無くす、と謳っています。「同一労働同一賃金」を実現するため、秋の臨時国会でパート労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正をする予定です。
最低賃金についても毎年3%上げ、全国加重平均で1,000円を超えることを目標にしています。今年の10月からは全国平均848円、昨年から23円上昇です。育児や介護などで、転勤できない、短時間しか働けないなど、様々な事情を抱える従業員に対して、多様な働き方を認める社会となるよう、限定正社員なども提唱しています。
平成3年前半にバブルは崩壊したと言われていますが、その後の就職氷河期に就職できなかった中年フリーターも50代に突入する時期になってきてしまいました。中年フリーターの問題は、喫緊の課題です。政府も上記対策を早々に進めて、正規も非正規もない、格差のない社会を目指していく必要があるでしょう。
- 著者プロフィール
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影山 正伸/社会保険労務士
給与計算含む労務管理、従業員トラブル解決、人事体系整備に強み
手続業務、給与計算はもちろん、労働基準監督署労災課、監督課での実務経験を活かし、従業員とのトラブル解決、労務管理の諸問題の相談・指導に特に強く、また、賃金体系・人事評価制度の整備にも詳しい。
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