加速する非正規社員の正規化と職場弾力化が暗示するもの (2017/8/25 瓦版)
弾力化する職場と雇用のカタチVol.5
非正規社員の正規化が加速する背景
着々と進む、雇用の弾力化。一方で、非正規の正規化を進める動きが目立ち始めている。これまでもこうした動きはあったが、ここへきてライザップ、クレディセゾンが1000人超の単位で実施するなど、その動きは加速している。
背景にはなにがあるのか。ひとつには、忠誠心向上による質の追求があるだろう。非正規が低レベルということはないが、雇う側にとっては、一線があり、コントロールし難い側面は拭えない。労働時間や業務領域など、契約ベースのため、必要以上の業務を課すことはできない。雇用側にとって、そうなれば消費者に対し、より踏み込んだサービスを提供しづらくなる。そこで無期雇用とするなど、待遇を引き上げつつ、社員並みの処遇とすることで、やりがいやモチベーションアップを促進する。
法改正も無関係ではないだろう。2018年度から、有期雇用労働者が、契約更新を繰り返してて通算5年を超えれば、無期雇用に転換できるようになる。法の上では待遇改善の義務づけはないが、同一労働同一賃金も政府がその実現に動いている。そうした動きに先んじたアクションである側面も少なからずあるハズだ。
あくまで企業主導のこの流れ。労働側にとって、非正規から正規への転換は、給与や休暇、社会保障面が充実し、働く上での安心感を得られ、悪い話ではない。一方で、より忠誠心が求められ、割り切った関係性を築きづらく、どうしても窮屈になる。それゆえにあえて非正規を選択しているワーカーも少なくない。
非正規の多くは望んで選択という結果も
折しもエン・ジャパンが、「エン派遣」上でアンケートを行っている。その結果、派遣で働く理由として最も多かったのは「勤務時間や勤務地を選びたい」。仕事で叶えたいことのトップは「プライベートを充実させたい」だった。さらに今後希望する働き方についても「派遣で働きたい」と答えた人が69%で断トツのトップだった。
ライフスタイルに合わせて仕事を選びたい労働者側とより忠誠心を髙め、長く働いて欲しいという思惑をにじませる企業側。そこには溝があるが、単なる非正規から正規への転換に留まっていないのが、昨今の正規化の動きの特長といえる。
例えばクレディセゾンは、正規転換にあたり、質の向上を求める一方で、より柔軟に働ける施策も併せて導入している。ライザップも同様だ。その意味では、加速する正規化は、環境の変化に対応し、非正規のよさを取りこみながら、正規のよさも生かしたハイブリッド型への進化であり、別の意味での職場弾力化といえる。
高齢化による人材不足で企業の人材確保は、ますます困難になっている。優秀な人材となればなおさらだ。昨今の正規化の流れは、そうした中で小手先の魅力アピールから受け皿としての抜本的な職場改善といっていいだろう。個人に目を向ければ、とりわけ優秀な人材にとって、働き口の選択肢は多様にある。加えて、弾力化が進む職場。その先にあるのは、労働者の最適化か、はたまた格差拡大か…。決して悪くはない動きだが、不穏な要素も内包していることを忘れてはならないだろう(続く)。
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