茨城のスーパーに罰金刑、医薬品医療機器等法について (2017/8/30 企業法務ナビ)
はじめに
清涼飲料水「水素水」の販売に際して、医薬効能をうたっていたとしてスーパー「ジャパンミート」とその食品部長の40代の男性が25日、東京簡裁で罰金50万円の略式命令を受けていたことがわかりました。医薬品以外のものに医薬品的な効能をうたうことを禁止している医薬品医療機器等法。今回はその規制について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、「ジャパンミート」(茨城県)は2015年8月から11月にかけて東村山店と瑞穂店で清涼飲料水の「水素水」を「癌や動脈硬化に効く」「悪玉活性酸素を排出」などとして販売しておりました。その間同社はこの水素水を約23万本仕入れて約8万4000本を販売し、約800万円余り売り上げていたとのことです。警視庁は同社とその食品部長ら3人を書類送検しておりました。3人はいずれも容疑を認め、「売上を伸ばすために違法な広告をしてしまった」などと供述しているとのことです。
医薬品医療機器等法とは
平成26年11月25日に旧薬事法が大改正され、現行の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)に名称も変更になりました。医療機器の承認などの規定を医薬品類から独立させ、再生医療に関する規定を新設するなどの改正がなされております。同法では旧薬事法と同様に医薬品、医薬部外品、化粧品などについて規定されており、未承認でこれらのものを製造販売したり、また医薬品であるかのような表示で販売することが禁止されております。以下具体的に見ていきます。
規制されている物品
(1)医薬品
医薬品とは2条1項によりますと、人または動物の「疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」、人または動物の「身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」を言うとしています。治療や予防目的で人や動物の生理的機能に影響をおよぼす性質を有する物ということです。
(2)医薬部外品
医薬部外品とは、吐き気その他の不快感、口臭、体臭の予防、あせも、ただれ、脱毛防止、育毛除毛、鼠ハエ蚊などの防除等を目的とする「人体に対する作用が緩和なもの」を言うとしています(同2項)。また厚生労働大臣が特に指定するものを指定医薬部外品と言います。
(3)化粧品
化粧品とは、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つため」のもので「人体に対する作用が緩和なもの」を言うとしています(同3項)。医薬部外品と同様に身体に対する効果が医薬品よりも緩やかなものということです。
承認や禁止事項
上記の医薬品や医薬部外品、化粧品を製造販売しようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければなりません(14条1項)。承認を受けていない段階で「その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告」をしてはならないとされております(68条)。そしてこれらの医薬品、医薬部外品、化粧品等に関して、製造方法、名称、効能、効果につき「明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告」してはならないとしています。違反した場合は2年以下の懲役、200万円以下の罰金またはこれらの併科となります(85条4号、5号)。
コメント
厚労省の通知(昭和46年6月1日薬発第476号)によりますと、本法の規制の対象となる医薬品に該当するかは(1)成分(原材料)(2)医薬品的な効能効果(3)医薬品的な形状④医薬品的な用法容量などから判定されるとしています。たとえば「癌が治る」「血圧が下がる」「血糖値が下がる」といった表示や広告がなされている場合は医薬品的な効能効果を標榜しているとみなされることになります。この場合、「医薬品」に該当するにもかかわらず未承認で製造販売、または広告を行っていることになり上記の違法事由に該当します。
本件でジャパンミートは「水素水」につき「癌や動脈硬化に効く」「悪玉活性酸素を排出」などと広告していました。これは医薬品的な効能効果をうたったものであり「医薬品」とみなされ、厚労大臣の承認を要することになります。以上のように疾病の治癒や健康増進に関する製品についてはかなり厳格な規制がなされております。製造販売する製品が何に該当するのかを正確に把握して必要な許認可、また行ってはいけない表示に注意することが重要と言えるでしょう。
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