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スマートフォンアニメ風加工アプリによる著作権侵害(君の名は。) (2016/12/15 企業法務ナビ

関連ワード : ICT 法律 

1 事案の概要

 現在大ヒット中のアニメーション映画『君の名は。』風に写真を加工できると話題になっていたアプリ「Everfilter」が、著作権侵害を理由に一時的に配信を停止しました。このアプリは、自分で撮った写真をアニメ風に加工できるというものです。しかし、この加工が「君の名は。」などを手掛ける新海誠監督のイラストを無断で使用しているのではないかという疑惑が持ち上がりました。

 それに対し、Everfilterアプリ制作側は、4日、公式ツイッターで「運営チームにて調査したところ、中国国内の使用に関しては著作権者よりライセンスを受けていたものの、誤って海外版にも使用してしまったことが発覚しました」と説明しました。また、「現在、Everfilterアプリでの画像加工に、著作権問題となるコンテンツは一切使用されておりません」とし、「Everfilterアプリは日本、韓国を含むリリースした全ての地域において、App store及びGoogle Playでの配信を一時停止することを決定いたしました」と発表しました。

公式ツイッター

スマホアプリ

2 著作権侵害

 著作権は、著作者が、その著作物について、その保護期間内において、独占的に、複製などの行為を行うことができる権利です。したがって、著作者の許諾を受けることなく著作物を一部でも複製等したりすれば、原則として著作権侵害となります。

著作権侵害とは(経済産業省)

3 著作権の保護期間

 著作権の保護期間は、原則著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後50年までです。もっとも、例外的保護期間を設けているものもあります。例えば、映画の著作物については、公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)とされています。

著作権の保護期間はどれだけ?(著作権情報センター)

4 外国の著作権保護

 著作物は、海外でも利用されるため、世界では、条約を結んで、お互いに著作物などを保護し合っています。そして、このような国際的な保護は、著作権は「ベルヌ条約」と「万国著作権条約」などによって行われています。日本は両方の条約に加入しており、世界の大半の国と著作権保護の関係があります。なお、1992年に中国も「ベルヌ条約」と「万国著作権条約」の両方に加盟しています。

外国の著作物の保護は?(著作権情報センター)

5 著作権侵害の判断基準

 既存のイラストや画像に類似するイラストや画像を作成した場合、それが既存のイラストや画像の著作権を侵害しているかどうか著作権を侵害しているかどうかの判断基準は、(1)著作物性、(2)依拠性、(3)類似性の3点がポイントとなります。以下では、(1)~(3)の判断基準について、説明します。

(1)著作物性(既存のイラストや画像が「著作物」か)
 イラストや画像のデザインが「著作物」に当たるためには、「創作性」が必要となります。よって、既存のイラストや画像に「創作性」がない場合には、「著作物」にはあたりません。例えば、機械で撮影した写真などは人間の手を介在しないため創作性がなく、著作物にあたりません。

(2)依拠性(新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像を参考にして作成されたものか)
 既存のイラストや画像を参考にせずに作成し、結果として、たまたま既存のイラストや画像と類似のものが出来上がったとしても、法律上、著作権侵害にはあたりません。

(3)類似性(新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像に類似しているかどうか)
 「類似性」については、新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像を参考に作成したものであっても、既存のものと類似していなければ、著作権侵害にはあたりません。また、「類似しているかどうか」の判断基準は、「既存の著作物の表現形式上の本質的特徴部分を、新しい著作物からも直接感得できる程度に類似しているか?」が重要となります。
※実際にトラブルとなるケースでは、(3)の「類似性」が問題となることが多いです。

今話題の著作権侵害の判断基準について

6 著作権侵害の判例(類似性)

※以下の問題となった事件のイラストについては下記のホームページをご参照ください。
実際の裁判では著作物の類似性判断はどのように行なわれるか

(1)タウンページ事件(東京地判平成11年12月21日)
 この事件では、被告の作成したタウンページ・キャラクターの図柄と原告作成のキャラクターの図柄との類似性が問題となりました(両者とも本を擬人化したキャラクター)。原告漫画のキャラクターと被告イラストのキャラクターは、本を擬人化したという点では共通しているが、それ自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではないとしました。

「原告漫画も、被告イラストも、キャラクターの目、口、腕等で表情を表現しているということができるが、そのこと自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではなく、原告漫画と被告イラストとでは、キャラクターが異なることは、前示のとおりである。」(地裁判旨)

(2)LEC出る順シリーズ事件(東京地判平成16年6月25日)
 この事件は、東京リーガルマインドの参考書の表紙に記載された人形のキャラクターが原告のイラストの著作権を侵害しているとして裁判となりました。

「人形を肌色一色で表現した上,人形の体型をA型にして手足を大きくすることで全体的なバランスを保ち,手のひらの上に載せた物が見る人の目をひくように強調するため,左手の手のひらを肩の高さまで持ち上げた上,手のひらの上に載せられた物を人形の半身程度の大きさに表現するという表現方法は,原告の思想又は感情の創作的表現というべきであり,原告イラスト1の特徴的な部分であるということができる。そして,被告イラスト1は,このような原告イラスト1の創作的な特徴部分を感得することができるものであるから,原告イラスト1に類似するものというべきである。」(地裁判旨)として類似性を肯定しました。

7 著作権侵害の罰則

 著作権を侵害した場合には侵害者は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、またはその両方を科されます(著作権法119条)。また、法人の代表者や従業員等が著作権侵害行為を行った場合には、本人と当該法人にも3億円以下の罰金が科されます。(著作権法124条)

8 コメント

 著作権者の許諾により著作物を使用することが出来るようになります。その際、著作権者の許諾内容は個々の契約により異なります。例えば、著作権者の許諾内容が日本国内のみの許諾なのか、世界中での許諾なのかによって著作権利用の形態が異なります。したがって、著作権者から著作物の利用等の許諾を受けた企業の法務担当者は、契約内容についてしっかりと把握するべきです。

 また、社内の法務担当者が営業・広報・開発担当との情報共有を随時行う等の社内全体で契約内容を共有するシステムや著作権法上問題がないかどうかを確認するシステム作りが重要となります。そうしなければ、思わぬところで著作権を侵害してしまう可能性があるので、注意が必要です。

提供:企業法務ナビ

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