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GMOインターネットの仮想通貨事業参入から見る仮想通貨法 (2017/1/20 企業法務ナビ

関連ワード : ICT 仮想通貨 法律 金融経済 

1 事案の概要

 GMOインターネットグループは1月17日、仮想通貨の交換および、取引事業に参入すると発表しました。GMOインターネットグループは、2016年10月11日に「GMO Wallet」を準備会社として、仮想通貨の交換および取引事業に参入するとのことです。

 GMO Walletでは、GMOインターネットグループがインターネット証券事業やセキュリティ事業で培ってきたノウハウを活用し、安心かつ確実な仮想通貨の取引環境を提供するとともに、グループ各社との連携を進め、リーズナブルで利便性の高いサービスの開発、提供を目指すとのことです。

ビットコイン

2 仮想通貨とは

 仮想通貨とは、インターネットを通じて不特定多数の間で物品やサービスの対価に使用でき、中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず専門の取引所を介して円やドル・ユーロ・人民元などの通貨と交換できるものです。仮想通貨の種類は600種類以上あるといわれています。例えば、ビットコインやRippleなどがあります。

 法律上の正確な定義は以下3(3)を参照ください。

資金決済法

3 仮想通貨法

(1)仮想通貨法とは
「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」が成立しました。その中の「資金決済に関する法律」に「第三章の二 仮想通貨」が追加されました。これを仮想通貨法と呼んでいます。

教えて!仮想通貨法
情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(49ページ)
情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律の概要

(2)施行日
公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとなっています(附則第1条)

(3)仮想通貨の定義(法律上)
資金決済に関する法律 第2条の5
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移することができるもの

 要するに財貨サービスの購入等のために不特定多数に対し使用ができ、また、売買ができる財産的価値で、電算ネットワーク上で移動できるものということです。

(4)登録制の導入
1.仮想通貨交換業者の登録
仮想通貨交換業は、登録を受けた法人でなければ行ってはならないこととされています(同第63条の2)。

2.登録拒否要件等
登録に際しては、株式会社であることや業務遂行に適合する資本要件・財産的基礎、執行適正性・体制整備が求められています(同第63条の5)。

(5)仮想通貨交換業
仮想通貨交換業とは、1.仮想通貨の売買、他の仮想通貨との交換、2.媒介、取次、代理と、3.仮想通貨の管理を行うものを指します。(同第2条7項)

(6)課税関係
1.法人税
仮想通貨の売却損益は所得とされ、他の所得と同様に法人所得とされます。

2.消費税
仮想通貨の消費税法上の取扱は、いまだ明確なものにはなっていません。しかし、仮想通貨は何らかの価値を有する「モノ」として、消費税法上も資産と評価でき、その譲渡は「資産の譲渡等」に該当し、課税対象と思われます。

仮想通貨に係る消費税の課税関係

(7)仮想通貨交換業者の業務に関する規制
仮想通貨交換業者の業務に関する主な規制は次の通りです。
1.仮想通貨交換業者は、情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない(63条の8)。
2.仮想通貨交換業者は、利用者への情報提供など利用者の保護を図り、業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならない(63条の10)。
3.仮想通貨交換業者は、利用者の財産を自己の財産と分別して管理し、その管理の状況について、定期に公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない(63条の11)。
4.仮想通貨交換業者は、利用者の苦情処理及び利用者との間の紛争解決に関し、指定仮想通貨交換業務紛争解決機関との間で手続実施基本契約を締結する措置、又は当該紛争解決機関がない場合には、仮想通貨交換業に関する苦情処理措置及び紛争

(8)仮想通貨交換業者に対する罰則
資金決済法の既存の罰則規定が、仮想通貨交換業者に対しても適用されます(107条~109条、112条~117条)。主な違反事由と罰則は以下の通り。

1.3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方(107条)
 ・無登録で仮想通貨交換業を行った者
 ・不正の手段で登録を行った者
 ・名義貸しをした者
2.2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方(108条)
 ・63条の11第1項の規定による利用者の金銭・仮想通貨の分別管理義務違反
 ・63条の17第1項の規定による仮想通貨交換業の全部又は一部の停止の命令違反
3.1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方(109条)
 ・63条の20によって義務付けられた公告をしないこと、又は虚偽の公告をすること(1号)
 ・63条の13によって義務付けられた帳簿書類の作成・保存義務違反、虚偽の帳簿書類の作成(4号)
 ・63条の14によって義務付けられた報告書・添付書類の不提出、虚偽記載(5号)
 ・63条の15によって義務付けられた報告・資料の不提出、虚偽の報告、虚偽の資料の提出(6号)
 ・63 条の15によって義務付けられた答弁拒否、虚偽答弁、検査拒否、検査妨害、検査忌避(7号)
4.6ヶ月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又はその両方(112条)
 ・63条の3第1項の規定による登録申請書又は第2項の規定による添付書類の虚偽記載
5.100万円以下の罰金(113条)
 ・63条の16の規定による業務改善命令の違反

アンダーソン毛利・友常法律事務所解説(5ページ)

4 コメント

 仮想通貨法に違反した場合には最大で3年以下の懲役および300万円以下の罰金を課せられます。違反した場合の法的リスクは比較的重いと思われるので自社が違反しないよう法務担当者は仮想通貨法を理解し、自社の仮想通貨についての取り扱いを確認すべきです。

提供:企業法務ナビ

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