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衣料メーカーに4000万円の賠償命令、製造物責任法について (2016/12/6 企業法務ナビ

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はじめに

ダウンジャケットのフードのゴム紐が目に当たり視力が低下したとして、東京都内の男性がメーカーに損害賠償を求めていた訴訟で3日、東京地裁が約4千万円の支払を命じていたことがわかりました。製品の欠陥によって消費者に損害が生じた場合の責任を規定した製造物責任法について見ていきます。

ダウンジャケット

事件の概要

原告である東京都内の男性は2010年末頃、ユニクロの経営で知られるファーストリテイリングの子会社で「セオリー」等のブランドを展開している「リンク・セオリー・ジャパン」(山口市)が製造したダウンジャケットを購入しました。同年12月、男性が携帯電話を右ポケットから取り出す際、ダウンジャケットのフードに付いているゴム紐の先端の留め具が右腕か携帯電話に引っかかり、外れたはずみで留め具が男性の左目に当たりました。それにより男性は外傷性白内障になり視力が低下したとのことです。男性はリンク・セオリー・ジャパンを相手取り約1億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしていました。

製造物責任法とは

メーカーの製品によって損害が生じた場合、民法の不法行為規定によって賠償請求を行うとメーカー側の故意・過失を被害者側が立証することになります。しかしメーカー側の予見可能性や結果回避義務違反等を被害者側が立証することは相当困難で賠償を得ることは多くの場合不可能と言えます。そこで製造物に欠陥があった場合にメーカー側の故意・過失の立証を要することなく賠償責任を課し、消費者を保護する目的で製造物責任法が制定されました。製造物に欠陥があればメーカーは無過失責任を負うということです。つまり民法の不法行為規定を修正し、故意・過失の代わりに欠陥の存在を立証することによって不法行為責任を追求できるというわけです。

製造物責任法の対象

製造物責任法の適用の対象は「製造物」です。2条1項によりますと製造物とは「製造又は加工された動産をいう」としています。部品や原材料に手を加えて新たな品物を作り出したり、新たな価値を不可することを言います。つまり手を加えた物でなければ適用されません。また不動産も「動産」では無いことから適法がありません。そして責任を負う「製造業者等」は同3項によりますと、「業として製造、加工又は輸入」している者、それらと誤認させるような表示を製造物に表示している者、実質的な製造者と認められる表示をしている者が挙げられます。OEM製品の場合や製造元を表示せずに自社製であるかのような表示をしている場合も該当するということです。

欠陥とは

ではメーカーの責任が発生する「欠陥」とはどのようなものでしょうか。2条2項によりますと、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」としています。一般的に通常の用法により使用していれば問題が無い程度の安全性が必要であるということです。刃物や工具といった物はその特性上本来ある程度の危険性を有しており、使用者の過失で負傷しても欠陥には当たりません。また通常とはことなる使用法による損害も欠陥には当たりません。欠陥には①設計上の欠陥、②製造上の欠陥、③指示警告条の欠陥の3種類に分けられます。具体的には設計段階で安全性を欠いていた場合、製造段階で問題があり設計どおりにできていない場合、製品の特性上の危険を消費者に適切に表示できていない場合です。

免責事由

製造物に欠陥があった場合でも一定の場合には免責されることがあります。製造当時の科学技術によれば欠陥があることを認識できなかった場合(4条1号)、他の業者の設計に関する指示に従った場合で、過失がない場合(同2号)には製造事業者は免責されることになります。2号の他者の指示による場合とは、下請業者が元請業者の設計に従って製造した場合等をいいます。元請業者の設計どおりに製造したのに責任を負わされたのでは酷であるということです。

コメント

本件で東京地裁は「ゴム紐が長く、着用者の意図せず顔や目を負傷するおそれがある」と構造上の欠陥を認定しました。ジャケットのゴム紐の留め具が目を直撃する危険性を警告する論文が2年前から出ていたことから、メーカーは危険を認識できたとしています。そして男性側の不注意も認定し過失相殺をした上で4千万円の賠償を言い渡しました。

ダウンジャケットのフードの特性から通常の使用法で顔や目に紐が当たり負傷するということは一般的には考えにくいと言えますが、留め具の形状と相まって危険である旨の意見があった点に鑑みて欠陥が認定されたものと思われます。今後控訴審で覆る可能性も十分にあるでしょう。製造物責任は欠陥と過失の立証が異なるだけで、それ以外は民法に準拠します。損害と因果関係の立証や過失相殺、共同不法行為規定等も適用されます。製品の欠陥により訴訟となった場合には製品の特性や用法、使用者の使用法等から欠陥に該当するのか、現代の科学で認識できたのかといった点に加えて、因果関係や相手方の過失等も検討し対応していくことが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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