認知症高齢者の鉄道事故、賠償金を補助 神戸市が救済制度の導入を検討 (2016/10/1 JIJICO)
G7神戸保健大臣会合「神戸宣言」!初めて「認知症」がテーマに
感染症や認知症など世界が直面している保健医療分野の課題について、先進7カ国の担当大臣らが話し合う「G7神戸保健大臣会合」が今月神戸において開催され「G7各国は、すべての人々の健康な暮らしと福祉を確保することの重要性を認識する」などとする「神戸宣言」を採択、閉幕いたしました。
今回、「認知症」が初めてテーマとなり、認知症患者の生活環境の改善を目指した対策に乗り出すことが話し合われ「認知症にやさしいプログラムの構築」「認知症にやさしいまちづくりの推進」が具体的に示されました。
これまでに神戸市は、「認知症にやさしいまちづくり」の推進を進めて参りましたが、更に鉄道事故による「救済制度」を導入することを検討するという、これまでにない制度を発表しています。
認知症高齢者による鉄道事故判決及び「救済制度」とは?
2016年3月に認知症高齢者による鉄道事故の最高裁判決があり、第一審・第二審の加害者遺族による監督義務責任を覆す「逆転判決」がなされました。しかし、判決では、今後、客観的状況が認められる場合には、法定監督義務者に準ずる者として、損害賠償責任が発生する可能性を示唆しています。ということは、今後もこの様な事案が予測され早急の対策が急がれますが、現在、認知症高齢者による事故への公的補償制度はありません。また、認知症高齢者を24時間監督することは不可能に近いと考えられます。
そうした中、神戸市独自の認知症高齢者に対する鉄道事故への救済制度として損害賠償金を一部補助する「事故救済制度」の導入を検討することを明らかにいたしました。具体的には、加入者の掛け金を財源とする任意加入の共済制度か、市費で支払う給付金制度を検討しており、有識者の意見をふまえ、平成29年度予算案において検討を進めて参ります。
社会全体で、認知症高齢者に対する対策が必要
医療産業都市を推進する神戸市だからこそ「G7神戸保健大臣会合」において、「認知症」がテーマに「神戸宣言」提言できたのではないかと思われます。これまでも進められていた「認知症にやさしいまちづくり」の一環ではありますが、社会全体で認知症高齢者を支え合い、負担を分かち合うことが必要であると強く発信されています。
また、鉄道事故という観点では、既に多くの鉄道会社においても、認知症高齢者に対する安全確保への投資が検討されています。認知症高齢者に対する社会全体での取り組みでは、この鉄道事故救済制度は、スタートに過ぎないのかもしれませんが、この「神戸宣言」から、更なる広がりに繋がることを期待しています。
- 著者プロフィール
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松本 孝一/介護事業コンサルタント
株式会社オフィス松本
1987~2003年 阪神電気鉄道株式会社の不動産事業本部で不動産仲介業務などに従事。また、阪神間の住宅営業所の所長業務を担い、数値・労務管理や部下育成のマネジメントを実践し、成果を挙げる。約16年間の営業活動を通じ、「人と人とのつながり」の大切さを学ぶ 2003~2005年 大手不動産仲介会社(三井のリハウス)で仲介業務を経験。さらにたくさんの人との出会いから「ギブアンドテイク」ではなく「ギブアンドギブ」を学び、今日までたくさんの人との出会いを大切にしている 2005~2014年 介護事業者に入社、初めて介護業界に携わる。デイサービスセンターに配属され、介護職員として送迎・介助・レクリエーションなど経験。その後、センター長となり、全体の運営を任される。そして、訪問介護の現場業務や居宅介護支援事業の管理業務などを経験して、介護現場の難しさを実感し「介護サービスは究極のサービス業」であると認識。事業展開を図り、グループホーム・小規模多機能型居宅介護・サービス付高齢者向け住宅など23の新規事業所を立ち上げた 2014年 株式会社オフィス松本を開業
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