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テロ対策に「共謀罪」は必要か? (2016/9/13 JIJICO

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テロ対策を目的として組織犯罪処罰法改正案を政府が提出予定

政府は9月の臨時国会で、テロ対策を目的として組織的な重大犯罪を計画した段階で処罰できる組織犯罪処罰法改正案を提出する予定である、と報じられています。

この法案、名前は「テロ等組織犯罪準備罪」とされていますが、その実体は過去に3度廃案となった「共謀罪」を基にしたものです。具体的には、これまでの共謀罪法案の適用対象が単に「団体」であったものを「組織的犯罪集団」に限定し、「目的が4年以上の懲役・禁固の罪を実行することにある団体」と定義しています。さらに、「犯罪の遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、その処罰にあたっては、計画をした誰かが「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」としています。

具体的には、テロ組織や暴力団、人身取引組織、振り込め詐欺集団などを想定しているものと思われます。

国会議事堂

共謀罪は過去にも国会へ提出されたものの不成立に

共謀罪については、2003年から2005年にかけて関連法案が国会へ提出されましたが、現実に犯罪を実行したか否かを問わず、単に「謀議」がなされたことを持って犯罪として処罰できることは処罰対象を無制限に拡大する危険性があり、思想弾圧にも用いられかねないという批判があり、最終的に成立に至りませんでした。

今般、東京オリンピックを控えてテロ対策が求められる中で、政府が国連越境組織犯罪防止条約締結のための国内法整備として「テロ等組織犯罪準備罪」を検討しているものであり、10年ぶりに共謀罪の要否が形を変えてもう一度問われることになります。

テロ等組織犯罪準備罪ではテロを未然に防ぐことは難しい

では、「テロ等組織犯罪準備罪」でテロは未然に防止できるのでしょうか。

私見ではありますが、この点についてはかなり消極的に考えています。謀議を処罰すればテロが防止できるのであれば、既に世界的に対策が進んでいるはずですが、実際はテロの危険性が下がったという話は聞きません。
また、実際のテロ行為は現行法でも十分処罰できるものであり、あえて弊害が指摘される「テロ等組織犯罪準備罪」を創設する必要はないと考えます。

政府が理由とする国連越境組織犯罪防止条約は経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは本来無関係なものです。むしろ、限定を付したとはいえ、なお「共謀」を処罰するという法案の危険性や、「組織的犯罪集団」という定義の曖昧さを考えると、共謀罪が問われたときの問題は全く解決していないと思われます。

日本弁護士連合会は、2016年8月31日付けで「いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明」を発表しており、この問題については強い危惧感を持っています。テロ対策という抽象的な必要性だけではなく、より実質的な必要性の有無や弊害の有無など、今後慎重に議論がなされることを希望します。

提供:JIJICO

著者プロフィール
半田 望/弁護士半田 望/弁護士
半田法律事務所
弁護士登録当初から交通事故や離婚・消費者問題、労働問題等の市民事件や破産・管財事件、刑事・少年事件を多く取り扱う。また、行政事件(市民側)や国家賠償請求事件等の集団訴訟の弁護団にも多数加入し研鑽を積んでいる。弁護士業務の傍ら、地元大学での非常勤講師(民事訴訟法)や各種講演などの活動にも積極的に取り組む。
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