海外渡航時の安全対策―バングラデシュテロ事件を受けて (2016/7/18 JIJICO)
地球規模の緊急事態と言わざるを得ない
親日国であるバングラデシュで起きたテロ事件は、専門家である私でも驚かされる事件でした。現在の世界情勢を鑑みた場合、地球上に安全な場所は無いと言わざるを得ません。
近年のテロ活動はインターネットを巧みに利用し、その事件背景すら変えながら広まっていると感じられます。過去のテロ事件は、共通した政治的な目的意識が背景にあり、共感した者同士が意思表現の為に行われる事が殆どでした。しかし、現在のテロ事件を考えた場合、目的が殺戮であり、その背景に共通するものが殆ど感じられません。つまり、共通する目的意識は後付けのようなもので、不平不満を持つ人間を募り、洗脳紛いの手法で、一般人をテロリストに変貌させているのかも知れません。
もう他人事では済まされない
テロ事件を未然に防ぐ方法として「水際で防ぐ」方法が一般的に知られています。つまり、テロリストを入国させないという方法です。各国とも真剣な取組みがなされ、軍隊や軍さながらの装備を有した組織が、国境の警備活動を行っており、入国は安易なものではありません。
しかし、SNSなど通信手段を利用し、テロリストを現地調達できたとするならば、違った観点からの対策が必要になります。海外渡航時には、旅行や仕事など目的に関係なく、被害に遭わない為に、また被害に遭った時の対策を身に付けなければなりません。そして、テロ行為の標的は「どの国の人物か?」や「どんな仕事をしているか?」などは関係ないと考えるべきです。前述したように、もしテロリストが現地調達なら、その国々によって違う「風習」や「習慣」なども考慮しなければなりません。渡航先で被害に遭わない為に、自身の常識を捨てる必要もあるでしょう。
自身の命は自分自身で守る覚悟
防災対策では「自助」「共助」「公助」と三段階に分けて対策を行わなければならないとされています。テロ事件から自身の命を守る為にも同様の事が考えられます。仮に「自衛」「共衛」「公衛」とします。「自衛」は自分で守る、「共衛」は互いに注意喚起して守る、「公衛」は大使館や外務省など国家機関に頼ることです。
災害に限らず、真っ先に求められるのは、自分自身の対策である事に変わりはありません。自分がテロ事件に遭遇した場合、頼れるのは自分以外に無いことは明白な事実です。そして、悲惨なテロ事件に遭遇しない為にするべきことは「死にたくない」と真剣に感じることです。それが安全対策の第一歩です。
海外渡航時にするべき安全対策
- 外務省「海外安全ホームページ」で渡航先の治安事情を調べる。
- 渡航を断念する勇気を持つ。
- 昼夜を問わず、群衆の集まる場所へ近づかない。
- 劇場やレストランなどを利用する場合は、避難経路を事前に確認する。また、避難経路に最も近い場所(席)を利用する。
- 公共の交通手段(電車やバス)を利用しない。
- 不審者、不審物に安易に近づかない。また、危険(非日常)の察知に努め、気づいた場合は計画(予定)を中断する。
- 異変に気づいた場合は、避難を何よりも優先させる。また、現地大使館の場所を正確に把握する。
- 家族や知人との連絡を小まめに行う。
- 現地の休日には、特に強い意識を持つ。
- 事件に遭遇することを前提に行動(計画・予定)する。
渡航した場合
そして、安全対策の最後に「悲しまなければならない結果」を付け加えます。もし、自分自身がテロ事件に巻き込まれ命を失ってしまった時に備え、家族へ対する「思いやり」を必ず準備してください。
- 関連記事
- 「シリアで戦闘員になるより自国でテロを」ISが世界の支持者に呼び掛け その背景とは ニュースフィア
- 「現代の奴隷」世界に4600万人、日本にも… 搾取を止めるために我々にできることとは?
- 世界で高まる核テロの危険性、日本の原発の対策は十分か? 外と中からの攻撃への備え
- テロリスト、犯罪組織、武器商人も利用…なぜタックスヘイブンは重宝される?-パナマ文書
- 「ハニートラップに気をつけて」中国の地下鉄、街角に漫画ポスター 習主席の意図とは