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あすの日本を先取り? ゴーストタウン寸前の北海道夕張市 (2016/8/17 政くらべ

人口減少が続き、高齢化が進む日本の都市の未来とは、どんな姿なのでしょうか。住民負担は限界いっぱいの最高額なのに、最低限の住民サービスしかありません。空き家となった廃屋が建ち並び、見かけるのはお年寄りの姿ばかり。そんな都市が既に北海道で誕生しています。財政再建中の夕張市です。

廃屋

ランチタイムもまばらな人出、閑散とした商店街

JR夕張駅から夕張市役所へ向けて歩いてみました。お昼時間だというのに、数えるほどしか人がいません。ときおり見かけるのはお年寄りばかりで、若い人たちと出会うことはできませんでした。商店街のシャッターは多くが閉まったまま。路地へ入ると今にも崩れ落ちそうに見える建物もありました。シャッター通りを通り越し、もはやゴーストタウンとさえ思えてくるほどです。

夕張市は映画の街を標榜し、あちこちの店に古い映画の看板が掲げられています。「太陽がいっぱい」「男はつらいよ」「史上最大の作戦」など、今から半世紀ほど前の映画全盛時代の作品ばかりです。アラン・ドロンさん、渥美清さん、ジョン・ウエインさんら往年の名優が笑顔で住民を見守っていましたが、私の目には太陽が夕張のどこにも降り注いでいないように感じられました。ゴーストタウン寸前の街に暮らす「市民はつらいよ」といったところでしょうか。

人口は1万人割れ、高齢化率は市部で全国最高

夕張市は戦後、炭鉱街として栄え、12万人もの人口を抱えたこともありました。古い看板の映画が新作として公開されたころが、夕張の全盛期でした。

しかし、炭鉱が斜陽産業になると、夕張の繁栄にも影を落とすようになります。やがて、市は観光、リゾート産業に目を向け、借金を重ねて観光施設を建設する一方、リゾート施設の誘致に奔走しました。だが、これが裏目に出ます。リゾート施設は十分な集客ができずに相次いで撤退したのです。市はこれらを買い取って地域経済を支えようとしますが、借金だけが膨れ上がることになりました。

ちょうど10年前の2006年、市は353億円の赤字を抱えて財政破綻を表明、財政再建団体(現在は法律が変わって財政再生団体)に転落します。その結果、人口は急減し、1万人を切りました。全人口に占める65歳以上の高齢者人口を示す高齢化率も48.86%(2016年1月現在)に達し、全国の市部で最高となっています。

史上最大のコストカットで借金を返済

財政再建で夕張市は24年間で借金を返済する過酷な計画を課せられました。年間の税収はざっと8~9億円。普通に考えればとても達成できそうもない額です。公共団体である自治体が借金を返すのは当然ですが、見せしめの意味も込められていたのでしょう。

市は住民税、軽自動車税など住民負担を限界まで引き上げる一方、「史上最大のコストカット作戦」に乗り出します。市の公共施設や出先機関を次々に廃止、市職員の給与を2009年度まで平均30%、2014年度まで平均20%削減しました。小学校は破綻前の6校を1校に、中学校は3校を1校にし、市民病院を診療所に縮小したのです。

その結果、市職員は次々に退職し、破綻前の263人が100人を下回りました。北海道や東京都などから応援を受けないと、事務に支障が出かねないのが現状です。近隣で職を得られる若い層も相次いで市を離れました。その結果、どこへも行けないお年寄りだけが取り残され、高齢化率を異様に押し上げています。

「地域社会が崩壊」と第三者検討委員会が報告

しわ寄せを受けるのは当然、住民です。年金生活のお年寄りは多額の住民負担を支払いながら、十分な行政サービスを受けられず、苦しい生活を強いられています。市民病院がなくなった以上、おちおち病気になることもできません。市職員は地方公務員としては日本一の薄給なのに、日が変わるまで身を粉にして働いています。ブラック企業もびっくりの労働状態なのです。

市は3月、有識者による第三者検討委員会に市の現状と再生に向けた報告書をまとめてもらいましたが、そこに記されていたのは「このままでは地域社会が崩壊する」という厳しい言葉でした。過去のでたらめな借金が市民に重いつけを残しているのです。国も借金が1,000兆円を超えています。人口減少や高齢化の進行にも歯止めがかかりません。ゴーストタウン寸前の夕張の現状は、あすの日本の姿なのかもしれません。

提供:政くらべ

高田泰
50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。
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