国家公務員の「配偶者手当」が減額・廃止へ  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   国家公務員の「配偶者手当」が減額・廃止へ

国家公務員の「配偶者手当」が減額・廃止へ (2016/8/9 JIJICO

関連ワード : 一億総活躍 公務員 労働・雇用 

国家公務員の「配偶者手当」が減額・廃止の方向へ

人事院は、年収130万円未満の配偶者に国家公務員の「配偶者手当」(月額13,000円)を2017年度から、課長級以上は段階的に廃止、課長級未満の職員については、段階的に50~73%(室長級で最終的に3,500円、その他の職員で6,500円)まで減額することを勧告する方針とのことです。

働く女性

女性の就労意欲の低下を招いている制度

今までは、配偶者が年間130万円以上稼いでしまうと、「配偶者手当」は支給されません。月額13,000円ですから年間では、156,000円になります。これが無くなるくらいなら、中途半端に130万円を超えるくらいならこれ以上は働きたくない、という心理が当然出てきてしまいます。

少子化による労働人口が減少する中で、女性や高齢者に働いてもらわなければならないのにこれでは、就労意欲が低下し本末転倒です。アベノミクスでは1億総活躍社会を掲げていますから、それを達成するためにも今回の「配偶者手当」廃止が必要となった背景があります。

ただ、「配偶者手当」を廃止したとしても、年収で130万円を超えると今度は、社会保険(健康保険・国民年金3号被保険者)の扶養からも抜け、自身で何らかの社会保険に加入しなければならないことと、配偶者の収入が103万円を超えると納税者が受けられる配偶者控除が減ることも女性の就労意欲を低下させている要因になっていて、これらはまだ残っています。

社会保険の方は、10月より大手企業(501人以上)については、1週20時間以上年間所得106万円以上での加入が義務づけられ、広く浅く対象を広げるようにはなってきますが、こういった制度を含め全体として改革していく必要があるでしょう。

「配偶者手当」廃止には、手順があります

国が1億総活躍社会を目指すため「配偶者手当」を廃止するなら、当社も廃止してしまおう、と簡単には考えないで下さい。国としても「配偶者手当」を廃止する代わりに、子どもに対する手当を6,500円から10,000円に増額します。民間企業でもトヨタ自動車が「配偶者手当」を廃止しましたが、同じく子供に対する手当を5,000円から20,000円と4倍に引き上げています。つまり、「配偶者手当」を安易に人件費削減の材料にしてはならないと言うことです。

「配偶者手当」を廃止することで、子供の居ない世帯は所得が減りますが、子供の居る世帯は所得が増えます。企業全体で見れば総人件費は減額になっていない、ということがないと「不利益変更」になってしまい、民事上は認められないことになるのです。

国も民間の大手企業でも「配偶者手当」を廃止の方向ですが、自社で行う際には、上記のように子供に対する手当を増額するなど手順を踏む必要がありますので、注意して下さい。

提供:JIJICO

著者プロフィール
影山 正伸影山 正伸/社会保険労務士
影山社会保険労務士事務所
平成6年11月、社会保険労務士資格を取得。平成8月1月、影山社会保険労務士事務所開業。船橋労働基準監督署の労災課相談員や労働基準協会連合会委嘱「就業規則普及指導員」を務め、労働相談、就業規則受理などの経験を積む。平成11年10月、日本人事総研の研修を受け、実力資格制度の導入等のコンサルティングを開始。現在、新規開業企業に就業規則や労働条件の整備をコンサルティングしている。
関連記事
女性の社会進出拒むガラスの天井とは―女性活躍推進法が4月施行
男女平等格差は先進国の中でも最低水準!女性活用が必要な理由
経団連が提言!配偶者手当見直しで女性の労働促進?
同一労働・同一賃金問題をどう解決?見習うべきオランダの取組み
国家公務員の女性採用34.5%で過去最高
関連ワード : 一億総活躍 公務員 労働・雇用