社会福祉法人に求められる「地域における公益的な取り組み」、公的補助のないことなどが要件―厚労省 (2016/6/9 メディ・ウォッチ)
社会福祉法人に求められる「地域における公益的な取り組み」とは、▽社会福祉事業・公益事業を行うにあたって提供される▽日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対する▽無料・低額な料金で提供される―という要件をすべて満たす福祉サービスをいう―。
厚生労働省が1日に発出した通知「社会福祉法人の『地域における公益的な取組』について」(平成28年6月1日・社援基発0601第1号)で、こうした点が明確にされました。
「地域における公益的な取り組み」の3要件を明示し、具体例も提示
社会福祉法人に対しては、「過剰な内部留保(利益剰余金)が蓄えられている」などといった批判があり、(1)公益性・非営利性の徹底(2)国民に対する説明責任(3)地域社会への貢献―を柱とする改革案が2015年にまとめられました。これをベースに社会福祉法が改正され、今年(2016年)3月31日に公布されています。
今般の通知では、(3)の柱である「地域社会への貢献」のひとつである「地域における公益的な取り組み」(改正法第24条第2項)について、趣旨や具体的な内容を明確にしています。
それによると、「地域における公益的な取り組み」とは、▽社会福祉事業・公益事業を行うにあたって提供される▽日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対する▽無料・低額な料金で提供される―との3要件をすべて満たす福祉サービスであることが明らかにされました。
このうち「社会福祉事業・公益事業を行うにあたって提供される」福祉サービスには、例えば「地域の障害者、高齢者と住民の交流を目的とした祭りやイベント」などは該当するものの、「当該法人の施設・事業の入所者・利用者と住民との交流活動」や「環境美化活動」「防犯活動」は該当しません。
また「日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対する」福祉サービスには、例えば「要支援・要介護高齢者に対する入退院支援」「子育て家族への交流の場の提供」「家庭環境により十分な学習機会のない児童に対する学習支援を目的とした活動」などは該当しますが、「自ら移動することが容易な者に対する移動手段の提供」や「地域住民に対するグラウンドや交流スペースの提供」「一般的な学力向上を主たる目的とした学習支援」などは該当しません。
さらに、「無料・低額な料金で提供される」の意味は、「既存制度の対象とならず、公的な費用負担(委託事業または補助事業による事業費全額についての公費負担のこと)がない福祉サービスを提供する」ことであると明記されました。このため「既存制度の対象となる」場合や、「公的な補助金などがある」場合には、粉の無料・低額な料金の要件を満たしません。
厚労省は、より具体的に、「法人独自に付加的なサービス提供を行っている場合」や「法人が介護保険サービスに係る利用者負担を軽減する」ことは該当するものの、「自治体の委託事業を受託して費用の補填を受けている」場合には該当しないとしています。
ところで、社会福祉法には「地域公益事業」(第55条の2第4項第2号)という規定もあります。この「地域公益事業」と、今般明確にされた「地域における公益的な取組」との関係について、厚労省は次のように整理し、具体例を図示しています。
▽「地域における公益的な取組」は、すべての法人の責務であり、継続的ではない取り組みも含まれる
▽「地域公益事業」は、社会福祉充実残額を保有している法人が、その財産を活用する社会福祉充実計画に位置付ける「事業」として規定しているものであり、社会福祉法第26条に規定する公益事業に含まれるもの
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