世界一貧しい大統領と言われたムヒカ氏の提言で日本は変われるか? (2016/4/22 JIJICO)
ムヒカ氏は古き良き日本人の清貧を高く評価してくれた
育児と介護が同時期「ダブルケア」を乗り越えるために先日、世界一貧しい大統領と言われたウルグアイのムヒカ元大統領が来日しました。ムヒカ氏はその際に、「西洋文化に染まる前の日本人は、質素でありながら清く正しく生きていた。」と、今では死語になりつつある「清貧」という言葉を彷彿とさせるコメントを残しました。
また、貧乏であることと質素に生きることは別であるとして、限りない物欲に終止符を打ち、自分の時間を自分のために使うことの大切さを強調しました。スタジオ・ジブリのトトロのような、映画「三丁目の夕日」のような生活が、実は人間本来の幸せを感じる生活スタイルではないかと感じたのは私だけではないと思います。
ミニマリストはムヒカ氏のいう清貧を実践している
近年、物を持たない生活が注目されています。必要最小限の電化製品、家具、衣類で生活をする人たちのことです。シンプル・ライフをおくっている人たちと言い換えてもいいでしょう。
物欲に見切りを付けて断捨離を行い、殺風景な部屋で暮らすことが一種の新しいファッションになったようです。彼らは決して貧乏ではなく、可処分所得がありながら物を買わないという忍耐力が、むしろステータス・シンボルになっており、ムヒカ氏が主張する清貧に近い生き方ではないかと思います。
年金生活者はムヒカ氏の清貧を実践できるか?
それではムヒカ氏と同じ年代の年金生活者は清貧な生活を実践することができるでしょうか。都市から地方に移住し、家庭菜園で野菜に関しては自給自足の生活をすることは可能だと思います。住居も老夫婦二人が暮らせるように都会の住居を売却して小さな家に移れば、キャピタルゲインを手にすることができるかもしれません。
厚生年金の受給者であれば、田舎暮らしには十分の金額の年金を受給していると思われますので、自分の時間を自分のための使う優雅な生活を満喫することができそうです。ただし、国民年金の受給者のケースは年金額が相対的に少ないため、厚生年金受給者のようにはいかないと思います。
問題は非正規労働者の若者と生活保護の受給者だ
しかし、就活に失敗した若者が非正規労働者となり、貧乏な暮らしを強いられているという現実があります。この場合は低賃金 → 貯金ができない → 結婚できない という負のスパイラルのような状況から脱出する必要があるのです。
物欲から解放されれば心豊かに生きられるとか、自然豊かな山間部に移り住んで農業で生計を立てればよいという話ではなさそうです。「贅沢品を買わない人=ミニマリスト」と「贅沢品を買えない人=非正規労働者/生活保護受給者」は、明らかに違います。
日本はウルグアイの経済対策からも学ぶべきだ
ムヒカ氏の母国であるウルグアイはかつて経済格差が大きかったのですが、教育水準の引き上げ、経済特区の設置、低所得者向け住宅の建設と労働機会の創出などの対策により、劇的に低所得者層が減少したといわれています。我が国でも基本的には全く同じであり、住宅確保、教育支援、職業訓練が経済格差問題解決の三本柱と考えられます。
日本はムヒカ氏の質素な暮らし思想を再評価しつつ、ウルグアイのように実効性のある経済格差対策を講じてもらう必要があります。安倍総理の提唱する「ニッポン一億総活躍プラン」の「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」が真に経済格差を解消してくれるものなのか、全国民が注視していかなければならないと思います。
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