地域おこし協力隊の応募に踏み切れない人へ。僕の協力隊になった理由・なるべき理由を共有しましょう。 (2016/4/2 地域移住計画)
田舎暮らしをしたいのに、地域おこし協力隊にならないのは損ですよ。
こんにちは、三重県尾鷲市地域おこし協力隊員のすずきです。
僕はいわゆる「里帰り出産」で三重県尾鷲市に生まれ、その直後に東京に行き、それからずっと東京で26年間暮らし、働いてきました。
保育園から大学、2社を経る中で、一度たりとも東京を出て暮らしたことはありません。
でも、僕は一つひとつの街にドラマがある(と思っている)東京を愛しているので、ずっと東京で生活・仕事が出来ている環境をありがたく思っていました。
しかし、色々考えた結果、今年の2月より尾鷲に移住し、地域おこし協力隊として活動をすることになったのです。
地域おこし協力隊って、今は結構、やりたいと考えている人が多くなってきているホットな仕事だと思います。
しかし、一定数の募集に対して、「やりたいけど、ちょっとなぁ…」とためらう人の割合って、多分かなり大きいと思うんですよ。
それはもちろん、「住んでいる街を離れて、縁のない田舎へ飛び込む」という事のハードルの高さです。
僕は生まれが尾鷲で、母方の家族も尾鷲にいるというのは励みになりましたが、それでもこの決断には大いに悩みました。
東京は今までずっと育ってきた地で、父方はもちろん、友人も、世話になっている人も、彼女も、ほとんど全ての仲間がそこにいます。
しかし、東京を離れてしまえば、そういった繋がりが一切疎遠になってしまうのです。
もちろん、仕事だって東京の方が充実していて、好きな仕事を選べるし、給料も高く、キャリアを積むこともしやすい。
逆に、田舎に行ってしまえば、給料やキャリアアップはなかなか望めないので、会社員で居続ける選択肢ではうまみが大きく減ってしまう…
こういう悩みを持つからこそ、地域おこし協力隊という素晴らしい制度があるにも関わらず、田舎に飛び込んでいけない人は多いはず。
だから、そういう方に向けて、「なぜ僕が地域おこし協力隊になろうと考えたのか」を共有しようと思います。
「地域おこし」が「本当にやりたい仕事」だと思った
これが一番自分の中では大きかったです。
地域おこし協力隊の本分である、地方創生・まちづくりといった分野。
僕は、これに非常に情熱を感じたので、協力隊になろうとしたのです。
僕は元々、街歩きなどで街の雰囲気に触れるのが大好きで、その影響もあって地域活性化に興味を持つようになりました。
なので、大学では行政経営や地域活性化について学ぶゼミに所属し、鳥取やら岐阜やら各地に赴きつつ、その地域について勉強を行っていました。
大学を卒業後も、地域活性化に繋がる仕事がしたい一心で不動産デベロッパーに入社しました(自分に合わず、3年弱で辞めましたが)。
そんな背景もあり、どうしても「地域活性化」を直接仕事にしてみたかったんです。
その思いが、日々激務に耐えて働くうちに強くなっていき、「協力隊に応募しよう!」という事になったわけです。
毎日終電まで働くことに限界を感じた
僕は新卒で入社した不動産会社から、独立のためのスキルを蓄えようと、Web広告のベンチャー起業に転職をしました。
元々、不動産会社勤務の時に副業としてネットビジネスを学び、Webを使った商品のプロモーション・販売戦略などの一連のマーケティングスキルを身に付け、手ごたえを感じたことがきっかけでした。
転職は正解でした。
前の会社と違って、意思決定は相当早いし、変なしがらみも無いし、皆仕事に前向きで、考えることが明確。
給料も下がったし、仕事も忙しくなったけれど、学ぶ事も多かったし、何より会社の雰囲気が自分に合っていて、とても刺激的でした。
特に、右も左も分からないままチームリーダーに昇格し、上からも下からもボコボコにされましたが、良い経験をさせてもらえたと思っています。
しかし、やはり良いことばかりではありません。
ただでさえ忙しいWeb広告代理店の中で、少ない人数で工数のかかる案件ばかりひたすらに回す会社だったので、帰りは毎日終電近くになっていました。
平日の楽しみと言えば、会社周辺の店でかき込む夕飯と、シャワーを浴びて寝ることだけ。
5日連続、毎日2時に寝て8時ギリギリに起きる事を繰り返す中で、次第に限界を感じるようになりました。
体力や精神というよりも、その生活スタイルに限界を感じたのです。
朝仕事に出て、帰ったら寝るだけという生活を繰り返しているので、平日は全て仕事しかしていません。
せっかくの休日も、平日のツケが回って疲れており、満足に活動できない日もありました。
そうなると、今は良いとして、いずれ必ず体力が衰え、自分の将来を見据えた勉強や行動、思考がなかなか進まなくなってしまうなと思ったのです。
幸い、僕は精力的に協力隊になる選択肢を予め詰めたりしていたので、うまくチャンスに乗ることができ、激務から脱出することができました。
しかし、あのままベンチャーで仕事をしていたら、今の人生はもっと暗かったかもしれません。。
今は当時に比べて、圧倒的に自分の時間をきっちりと確保できています。
だから、日々勉強も情報発信も息抜きも、ちゃんと行えている訳なのです。
きっと、今の積み重ねが利いて来れば、近い将来に何かしら成果が出せる自信はありますねー。
叩き上げられたのはとても良い経験でしたが、やっぱり人間、余裕は必要ですね。
地方の方が、起業に踏ん切りが付くと感じた
僕は協力隊での経歴を経て、近々起業をしようと考えています。
元々、僕は自分のやりたい事だけを自分で突き詰めたいタイプなので、「会社勤めより、起業した方が面白いんじゃないか?」と考えています。
もちろん、起業に向けて色々な勉強はしてきましたし、起業家や志望者が集まるシェアハウスに入居したりして、意識を固める事もしてきました。
しかし、やはり「起業=リスキー、難しい」というイメージが先行したり、自分の実力に自信を持ちきれなかったりしていて、まだ実際に起業をするには至っていません。
ただ、やはり「自分が本当にやりたい仕事」を突き詰める事こそが、仕事の本質であり、起業をする本質だと思うのです。
だから、地域おこし協力隊の制度を知った時に、「これだ!」とも思ったんですね。
協力隊であれば、給料が貰えるから、資金切れリスクが非常に低くなる。
それに、大義名分があるので、行政のバックアップや、住民にも早期に顔が利くアドバンテージが得られます。
しかも、地方は人件費や不動産価格が安い為、ビジネスをするにも、東京と比べて低レバレッジで事業ができ、リスクを低く抑えられる可能性が高い。
だから、自分で事業を興す場として、協力隊の制度を使うのは非常に恵まれていると感じたのです。
僕は今、協力隊として与えられた「尾鷲に移住者を増やす」というミッションに即した仕事を仕込んでいる一方で、自分の飯のタネにもなりそうな物も、常に探しています。
まぁ、地方に行ったからといって、自分で会社を興して継続していく事が難しいのに変わりはありませんが、僕にとっては起業の踏ん切りがいよいよ付いたなぁ、という感じです。
じゃあ、なぜ三重県尾鷲市だったのか?
僕が地域おこし協力隊になろうと思った理由は、以上の3点でした。
その想いが次第に強くなっていった事で、協力隊になる選択肢を選べたのです。
しかし、尾鷲市が丁度良いタイミングで募集していなかったら、まだ僕は協力隊になっていなかったかもしれません。
というのも、僕は「活動したい場所」の候補を具体的に上げており、その一つが尾鷲だったからです。
活動したい場所以外での協力隊には、飛び込む決断ができるくらいの興味をそそられませんでした。
では、なぜ僕が尾鷲を候補として選び、活動の場に決めたのか?
それについても、共有したいと思います。
(1)母方の家族がいる
これはやはり大きいですね。
母親が尾鷲出身で、小さい頃は良く尾鷲に一緒に帰省をしていたので。
馴染みのある街だし、何より一人暮らしをしていても、他に飯を食べたり、寝床を求めたりできる場所がある。
祖父母の顔も見たいですしねぇ。
(2)まちおこしに積極的
僕が協力隊になる選択肢を固めたきっかけは、「地域仕掛け人市」という、地域おこし協力隊になりたい人と自治体を繋げるイベントでした。
そこには尾鷲もブースを出していたので、チャンスと思って参加をしたのですが、そこで尾鷲の方々の話を伺い、感銘を受けたのです。
「あぁ、尾鷲は結構頑張ってるし、地域おこし協力隊へのビジョンもしっかりしてる」
尾鷲市は、役所はもちろん、観光物産協会や三セク、民間企業まで、色々な団体が面白いイベントや施設を運営し、情報発信をしています。
僕が子供の頃に訪れた尾鷲は、単なる寂れた田舎の港町でしかなく、あまり良い印象はありませんでした。
しかし、今になって見てみると、色々と面白い事を精力的にやっている。
これは、尾鷲を活動の場に選ぶに当たって大きな要素となりました。
で、やはり積極的に活動している自治体というのは、まちおこしに対するビジョンも明確なんですね。
各人に「やらされている感」とかが無くて自発的ですし、各々のミッション・ビジョンもしっかりしている。
だから、尾鷲で活動するのは良い刺激になるだろう、とも思ったのは大きいですね。
(3)魚とか、飯がうまい
尾鷲は漁港の街だけあって、何より魚が旨いんです。
今ではもっぱら刺身をガンガン食わせてもらってます。笑
東京では食えないネタでも、安くて新鮮なものが気軽に手に入るんですよね。
そりゃあ、そんな魚をガンガン食えるのは魅力的です。
その他にも、柑橘類とか、大内山牛乳とか、牛ホルモンとか、美味いものが色々。
東京じゃなかなか味わえないような良い素材を楽しめるのは、やはり魅力ですよねぇ。
ちなみに、地酒も色々あって、意外とうまいんですよ。
(4)都会に出るのに不便じゃない
やっぱり、地方に出るとはいえ、たくさんの仲間がいる東京にはちょくちょく帰りたいと僕は考えています。
だから、あまりにも東京に行きづらい街では、活動の拠点を持てませんでした。
尾鷲は、正直東京からは非常に遠いのですが、行きづらいという訳ではありません。
毎日夜行バスは出ているし、特急や高速バスで名古屋にも出られるので。
名古屋には友達もいるし、片道3時間・3,000円程度で行けるので、たまーに遊びたい時なんかでも行けるのはポイントでしたね。
また、高速も開通したので、車があれば京都も3時間、大阪は3時間半で行けます。
紀伊半島の僻地にありながら、都会へのアクセスはそこまで不便じゃない。
それも安心要素としてはありましたね。
地域おこし協力隊になりたい人へ、一言
以上、僕が地域おこし協力隊になった理由をお話ししてきました。
最後に、これから協力隊になりたいと思っている方に、お伝えしたいことがあります。
協力隊員になるにあたっては、必ず以下のことをきちんと考えてほしいのです。
自分は、本当に何の仕事がしたいのか?
結局、協力隊だって仕事、職業です。一つの働き方であって、「生き方」ではありません。
だから、「自分が本当にしたい仕事は何か?」をまず突き詰めて考えるべきです。
そして、その結果、協力隊になるべきだと感じたのなら、応募すれば良いのです。
というのも、たまに「田舎暮らしがしたいから」という理由だけで協力隊を志望する方を見かけるんですよ。
しかし、それは自分の理想のライフスタイルにしか目が行っておらず、仕事という観点が抜け落ちてしまっているので、全くお話になりません。
それは、三菱商事の面接を受けて「給料が良いから志望しました!」って言ってるのと同じことです。
協力隊だろうが何だろうが、就職して仕事をするんだから、そんな甘い話じゃありません。
というか、日本全体が少子高齢化著しい中、地方自治体の人口減・税収減はどう足掻いても止められないのだから、田舎のまちおこしって、ある意味負け戦、無理ゲーですよ。
そんな中で、他の自治体と差別化し、全国に認められる成果を出さなければいけないので、まちおこしって言うのは、めっちゃ難しい仕事だと思うんですよ。
だから、そんな仕事に正面からぶつかり、こなせる情熱と覚悟がなきゃ、たとえ協力隊になってもすぐにギャップが生じ、ついていけなくなるはずです。
実際、友達がいない街に飛び込むと寂しいですし、情熱を持って主体的に動けないと、つまらなくて仕方がない状況にもなります。
また、集落に入った人は、人付き合いの狭さ・濃さが嫌になって、都会が恋しくなる人も珍しくないそうです。
そんな状況になっても負けない信念を持つよう、しっかりと自分自身のやりたい仕事を考え、「本当に協力隊になるべきか、なるならどの自治体で何をするか」を決めてください。
自分が理想とする暮らし方は?
もちろん、協力隊は田舎に飛び込む仕事なので、「田舎に移住」という要素も非常に大きなものです。
ですので、自分の活動する自治体を選ぶ際には、「自分の理想のライフスタイル」を良く考え、その自治体でそれがきちんと実現できるかどうかを考える必要があります。
「飽きるほど刺身を食いたい!」「休日はめっちゃサーフィンしたい!」と思ったら、内陸の山村には行きませんよね。
「ダーツとか、カラオケとか、風俗とかで夜はハジけたい!」と思ったら、都会へのアクセスが良い場所じゃないと、フラストレーションが溜まるかもしれません。
僕であれば「前向きに物事に取り組む人と一緒にいたい」「都会と田舎を行き来する働き方がしたい」といった考えを持っていました。
で、今まで人に触れたり、話を聞いている中で、「それは尾鷲なら実現できるな」と考えたのです。
せっかく都会を捨てて田舎に行くという選択肢を取るのなら、やはり田舎は満喫したいところ。
でも、見知らぬ地を満喫するためには、やはり自分が理想とする生き方、暮らし方については良く考えなければいけません。
行き当たりばったりで田舎に移住し、嫌になってすぐ都会に戻ったり、ノイローゼになったりする人の例もたまに聞きます。
そうならないように、きちんと自分が「地域に何を求めるか」を考える事も必要になるのです。
以上、僕が地域おこし協力隊になった理由と、協力隊になるに当たって考えるべき事についてお伝えしました。
この記事が、これから地域おこし協力隊になろうとしている方の参考・励みになれば幸いです。
では、また。
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