PMSや生理痛、正しく知って婦人科かかりつけ医に相談を (2023/12/22 政治山)
11月25日、跡見学園女子大学と大塚製薬株式会社共催による「女性の健康セミナー〜正しく知って対処するPMS!~」が同学文京キャンパスにおいて開催されました。本セミナーは同学の学生に加え文京区民も対象としており、当日は学生の他に幅広い年代層の女性、少数ながら男性の参加者も見られ、関心の高さがうかがえました。
ヘルスリテラシーが高い人は、仕事のパフォーマンスが高い
はじめに、跡見学園女子大学マネジメント学部の石渡尚子教授は、女性ホルモンの変動に対する理解は女性のライフプランに欠かせないものとして「働く女性の健康増進調査2018」(日本医療政策機構)の結果に触れ、PMS(月経前症候群)や月経随伴症状、更年期症状によって仕事のパフォーマンスが半分以下になると、約半数の女性が回答したことを指摘しました。
(参照:日本医療政策機構 「働く女性の健康増進調査 2018」)
また、同調査ではヘルスリテラシーが高い女性は、低い女性よりもPMSや月経随伴症状、更年期症状があるときの仕事のパフォーマンスが高いという結果にも触れ、健康に関する正しい知識と不調時の対処法を身につけ、ヘルスリテラシーを高める大切さを説きました。そしてその第一歩として、女性ホルモンの変動を意識することで仕事の量やスケジュール調整が可能となり、自分らしい働き方につながると述べました。
ライフステージによって変化する女性ホルモン
次に、女性ホルモンを調節する体の仕組みについて、「女性ホルモンは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という働きが異なる2種類のホルモンが卵巣から分泌されています。
そのホルモンの増減によって、初潮を迎えた後10代後半くらいから月経前症候群(PMS)がはじまり、ホルモンの分泌が減少する50歳前後には閉経が近くなることで更年期症状が現れてきます。更年期症状の有無や強さは人により異なり、症状も約200種類にも上ると言われています」と解説し、ライフステージによって女性ホルモンが大きく変化することを強調しました。
近年の傾向として、社員の健康状態が会社の経営状況にも影響するとの考えから「健康経営」を推進する企業を経済産業省がサポートしていますが、ライフステージによって顕れやすい症状や罹りやすい病気を把握し対策することも重要と言えそうです。
また、生理の症状の1つにある「冷え」の原因として筋肉量と女性ホルモンの影響が考えられると述べ、冷えない体をつくるための対策として、無酸素運動(いわゆる筋トレなど)で筋肉を増やすことやビタミンをバランスよく摂ること、特に朝食で温かいものをよく噛んで食べる(たんぱく質を多く含んだ具沢山のスープなど)ことを紹介しました。
文京区で取り組んでいる女性の健康づくり
続いて登壇した文京区の上田ゆきこ区議会議員は、区の各種施策や考え方について以下のように述べました。
「文京区では更年期や骨粗しょう症・女性特有のがん対策として、厚生労働省が定めた3月1日から3月8日までの女性の健康週間に、大塚製薬などの協力を得て、女性のライフステージごとの健康課題とその対策の啓発活動を行っています。
他にも女性の生理等に関する研修を男性職員を含むマネージャークラスの職員に実施したり、お手洗いに生理用品を設置し、生理休暇の制度も整備されています」
また上田氏は、PMSや更年期の症状は個人差が大きいことや男性にも更年期や男性特有の病気があることに触れ、「女性だからと一括りにするのではなく、自分に合った健康管理法を行ってほしい。区からの情報発信も積極的に行っていくが、婦人科のかかりつけ医を見つけるなど普段から専門家に相談できる環境が望ましい」と述べました。
月経痛や月経不順も病院で治療できる
最後に登壇した、神谷町WGレディースクリニックの尾西芳子院長は、月経の仕組みや諸症状、その対策について詳細に紹介しました。
まず月経の周期として、月経(頭痛・吐き気・腹痛)→卵胞期(気分が安定)→排卵(少し腹痛・むくみ)→黄体期(イライラ・眠気・吐き気・下腹部痛等)に触れ、PMSは黄体期に顕れる症状であること、排卵後のホルモン減少が大きな要因と考えられていることを解説し、特に月経困難症について、以下の2つに分類されることに触れ、セルフチェックで自身の症状を確認してほしいと述べました。
- 原因となる病気がないもの…「機能性月経困難症」10代に多い
- 病気が原因となって引き起こされるもの…「器質性月経困難症」
中でも、以下の症状がみられる場合は、婦人科医の受診を勧め、月経困難症は保険診療も可能で鎮痛剤や低用量ピル、ホルモン剤から漢方まで様々な治療方法があるとし、「月経痛や月経不順が病院で治療できると知らない人が多いので、我慢せずに病院へ行きましょう」と呼びかけました。
- 生理痛がだんだん悪化している
- 生理痛がひどく寝込んでしまう
- 生理以外にも腰痛がある
- 市販薬で痛みが治まらない
学校では教えてくれない?PMSのこと
次にPMSについて、原因はよく分かっておらず、2つのホルモンが原因と考えられるがホルモンだけでない可能性もあるとし、「PMSの辛さは、その人が怠け者だから起こるわけではなく、本人がコントロールできるものでもない。若い人の間では少しずつ認知が広がりつつあるが、PMSについては男性にも知ってほしいし、会社の研修などでも教育していくべきだ」と述べ、当事者だけでなく家族や学校、会社など周囲のリテラシー向上が必要であると強調しました。
(参照:大塚製薬 PMSラボ「PMSチェック」)
また、PMSの症状を緩和する対策として、一駅分を歩くなどの有酸素運動や喫煙・飲酒・カフェイン摂取を控えたり、睡眠習慣の見直しも効果的だと言います。特に食事については、GI値(食後血糖値の上昇を示す指数)に注意し、空腹を満たすときには血糖値を急に上げてしまう甘いものではなく、大豆バーなど低GI食品を摂取することを勧めました。
PMSも月経痛と同様に婦人科医での相談が可能で、作業や勉強が捗らないときやクラブ活動・社会活動をやめたとき、他人との関係に支障をきたしたときなどには婦人科の受診を勧めています。
治療方法としては冷え性対策も可能な漢方薬や低用量ピル・LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)製剤、抗うつ薬などがあり、体のむくみを取ったりイライラの症状を和らげるサプリメント(特にγ-トコフェロールやγ-トコトリエノール、エクオール、カルシウムを含むもの、γ=ガンマ)も有用であると述べました。
20歳以降は年に1回、婦人科検診にいこう!
最後に、尾西院長は「病院によってはPMSや月経痛だけでなく、貧血や頭痛、花粉症まで相談できる医師もいる。婦人科は女性の身近なお医者さんであり、ライフプランニングパートナーでもある」と述べ、「20歳以降は年に1回、婦人科健診にいきましょう!」と呼びかけました。
講演後の質疑では、「PMSの辛さが周囲の理解を得られない」とか「出産後にPMSがひどくなった」、「昼夜逆転の生活で生理が止まることがあるか」などの切実な声が聞かれ、周囲に伝えていくことや正しい知識を身に付けていくこと、規則正しい生活を送ることの大切さが共有されました。
また、更年期を迎えることへの不安については、ホルモンの急激な減少を補うために大豆イソフラボンのパワーの源であるエクオールを摂取するなどの対策を紹介し、「PMSのサプリメントで太ることはないのか」との問いには、「むくみを取る効果が期待できるので痩せることはあるかもしれないが、太ることはないと思う。実績のあるメーカーの製品なら心配ないのではないか」と答えました。
PMSや更年期については、セミナーを共催した大塚製薬が運営する以下のサイトでも紹介されています。
・PMSラボ
・更年期ラボ
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