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SDGsとインターネット投票―平和と公正をすべての人に (2018/12/20 政治山 市ノ澤充)

関連ワード : SDGs ネット投票 制度 

 SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)は、17の目標と169のターゲットから構成されており、国連加盟193カ国が2016~2030年に達成すべき目標として、2015年9月の国連サミットで採択されました。

 国内では2016年5月、政府内にSDGs推進本部が設置され、2017年12月には「SDGsアクションプラン2018」を公表し、官民での取り組みが進んでいます。推進本部が定めた実施方針は、「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」をビジョンとし、(1)普遍性、(2)包摂性、(3)参画型、(4)統合性、(5)透明性と説明責任を実施原則としています。

SDGs実施方針の概要

SDGs実施方針の概要

 また、全国の自治体による地域のステークホルダーと連携したSDGsの達成に向けた積極的な取り組みの総体として「自治体SDGs」が発足し、「SDGs未来都市」として北海道やつくば市、鎌倉市など29の自治体を選定しています(SDGs未来都市一覧)

 今後、あらゆる事業やサービスには、SDGsの視点からの評価が伴うこととなります。そこで、インターネット投票を実現するということがどのような価値を持つのか、検証したいと思います。

 まずはゴールとターゲットから、該当しそうなものをピックアップしてみます。

5.ジェンダー平等を実現しよう(ジェンダー)
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.b 女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう(イノベーション)
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。
10.人や国の不平等をなくそう(不平等)
国内および国家間の格差を是正する
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進する。
12.つくる責任 つかう責任(生産・消費)
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
12.5 2030年までに、予防、削減、リサイクル、および再利用(リユース)により廃棄物の排出量を大幅に削減する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
16.平和と公正をすべての人に(平和)
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型、および代表的な意思決定を確保する。

チーム

 ジェンダーについて、わが国においては女性議員の少なさが課題とされており、ネット投票では候補者比率を定めたり(パリテ方式)議席の割合を定めたり(クオータ制)することが容易です。そのため、女性議員の増加に貢献することができます。

 また、イノベーションについては触れるまでもありませんが、技術革新は不平等とのかかわりも深く、障がい者や高齢者、LGBTsなど、投票所に行きづらい人、投票しにくい人の投票環境を改善します。オンライン投票が可能になることで、そういった問題を解決し、投票率を上げることが可能です。

 また、生産・消費については、現行制度で用いられている投票箱や投票用紙など、投票所の運営にかかる様々な物資を大幅に減らすことができます。さらに投票方法が変われば選挙方法も変わり、大量のビラやハガキなどの紙材、ポスター掲示板に用いられる木材と設置にかかる人と車なども減らせる可能性があり、選挙にかかるコストを大幅に削減できます。

 そして、もっとも大きく貢献するのは平和です。国の民主化は、民主的でかつ公正な選挙の実施から始まります。残念ながら、今の選挙制度では自らが投じた一票が正しく処理されたことを確認する術がありません。また、一票の格差も課題ですが、それ以前に投票の機会すら平等ではありません。

 SDGsを推進する国連開発計画(UNDP)においても、「民主的ガバナンス」への取り組みは優先課題の核として位置づけられています。日本、そして世界に対して、公正な選挙を支えるシステムを提示することは、世界平和に大きく貢献することでもあります。

 続いて、SDGs推進本部が定めた5つの実施原則に照らしてみます。

  1. 普遍性 国政選挙から地方選挙、住民投票まで、国内外での利用が可能となり、「誰一人取り残さない」というビジョンに適っています。
  2. 包摂性 移動の困難な人や自書(自筆)が困難な人、山間部や島しょ部、国外に住む人も等しく投票機会を得られます。
  3. 参画型 技術的革新、必要な法整備と実施運用、主権者教育等の視点から、産官学が連携して取り組むことができます。
  4. 統合性 木や紙の利用が減ることで環境保全に貢献し、ジェンダーやイノベーション、そして平和と、様々な角度からSDGsの達成に寄与します。
  5. 透明性と説明責任 投じた一票が正しく処理されたことを本人が確認することができます。また、選挙自体の正当性を複数のプレーヤーが検証することができます。現行制度上かかるコストと比較して民主主義のコストを明らかにします。

 このように検証してみると、インターネット投票は、SDGsの達成、特に「平和と公正」に貢献すると言うことができそうです。イノベーションを通じてあらゆる不平等を解消し、すべての人の参画を促すような、民主主義の根幹を支えるシステム作りが期待されます。

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