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テクノロジーでフェアな社会を―2020年ネット投票実現に向けて (2018/12/4 政治山)

 東京・永田町で3日、「インターネット投票の実現に向けて~つくば市のネット投票実証と総務省研究会のまとめより~」と題したセミナーが開催されました。主催したのはインターネット投票研究会※(湯淺墾道主査)で、本年4月に開催したネット投票セミナーの第2弾となります。

第1弾:ネット投票で在外邦人や障害者にも平等な投票環境を―超党派の国会議員7人が集う

鈴木隼人衆院議員

鈴木隼人衆院議員

まずは選挙人名簿の標準化が必要

 はじめに登壇したのは、若者政策推進議員連盟(牧原秀樹会長)の事務局長代理を務める鈴木隼人衆院議員。被選挙権年齢と供託金の引き下げを推進している同議連の取り組みを紹介したうえで、今後のインターネット投票(以下、ネット投票)への取り組みにも意欲を示しました。

 続いて、前総務大臣政務官として総務省「投票環境の向上方策等に関する研究会」(磯部力座長)のとりまとめに尽力した小林史明衆院議員が登壇し、同研究会の成果を報告しました。報告書の中では在外選挙におけるネット投票導入の方向性が明確に示されており、小林議員は自治体ごとに管理している選挙人名簿(管理)の標準化の必要性を強調しました。

小林史明衆院議員

小林史明衆院議員

JAXAが立地するつくば市で宇宙からのネット投票を

 次に特別報告として五十嵐立青つくば市長が登壇、本年8月に実施したネット投票の実証について紹介しました。この実証ではマイナンバーカードによる個人認証とブロックチェーンによる投票データの管理が行われ、1人1票、秘密投票、投票データの非改ざん性を担保する投票システムが構築されました。

 現在の選挙制度では、日本人宇宙飛行士は宇宙ステーションから投票できない実情に触れ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が立地し関係者が住民票を置く同市におけるさらなる実証に前向きな姿勢を示しました。

五十嵐立青つくば市長

五十嵐立青つくば市長

セキュリティポリシーの見直しも検討すべき

 続いて、パネリストに河村和徳東北大学准教授、毛塚幹人つくば市副市長、小林史明衆院議員、室橋祐貴日本若者協議会代表理事(50音順)を迎え、湯淺墾道情報セキュリティ大学院大学教授がモデレーターを務めてパネルディスカッションが行われました。

 もっとも議論が盛り上がったテーマは選挙人名簿(管理)の標準化で、小林議員は各自治体に任せてきた政府に責任があるとし、国として標準化の指針を示すべきと主張しました。河村准教授からは、2016年以降設置が認められた共通投票所が浸透・拡大していない理由として、自治体ごとに定めるセキュリティポリシーがオンラインでの本人確認の障壁となっているとの指摘がありました。

義務化できない選挙公報のテキストデータ化

 また、選挙情報の提供方法について、総務省の研究会では選挙公報の電子化(テキストデータ化および音声データ化)も検討すべきとの方向性が示されており、登壇者からは概ね賛同の意見が聞かれました。ただし、そもそも選挙公報への掲出自体が候補者に義務付けられていないことから、電子データの提出も義務化は難しく、選挙関連への情報発信にはなお課題が残っていることがうかがえました。

パネルディスカッションの壇上

パネルディスカッションの壇上

移動や自書が困難な人にこそネット投票を

 ディスカッション後の質疑では、半身に障害を持つ参加者から、自書(自筆)が困難な自分たちはどのように投票したらいいのかと、質問とも嘆願ともとれる声が聞かれました。湯淺教授からは代理投票制度の紹介があり、小林議員は「テクノロジーでフェアな社会を実現したい。誰もが参加することができる環境を整備してきたい」と応じました。

 総務省は今年度から在外選挙のネット投票について具体的な調査に着手しており、来年度には予算計上もしています。マイナンバー関連法制の改正が前提となりますが、つくばの実証も含めて参加者からは「ここまで進んでいるのか」との声もあがりました。在外選挙ネット投票の実証システムは「2020年3月までの構築を目指す」(小林議員)とのこと。実装に向けてさらなる検討と実証の積み重ねが期待されます。

※主催団体等は以下の通り。
<主催>情報ネットワーク法学会(手塚悟理事長)内インターネット投票研究会(湯淺墾道主査)
<共催>日本若者協議会(室橋祐貴代表理事)
<特別協力>若者政策推進議員連盟(牧原秀樹会長)
<協力>情報通信政策フォーラム(山田肇理事長)
ヤフー株式会社(妹尾正仁 政策企画本部長)
株式会社VOTE FOR(市ノ澤充 代表取締役)

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