「学校が嫌だ」と言えるのも挑戦―子どもの才能を潰さない教育を (2018/5/15 政治山)
不登校の特権は時間があること
「異才発掘プロジェクトROCKET」(以下、ROCKET)の説明会は全国14カ所で行われており、11日に東京・赤坂の日本財団ビルで行われた説明会には100人超の親子連れが参加しました。
「学校が嫌だと言えるのは、ものすごく勇気のいる挑戦で、一つの才能とも言える。皆が進む方向とは別に、自分の意思で進みたい方向があるという子どもこそが、活力を失いつつある社会にイノベーションをもたらす可能性を秘めている」
「不登校の特権は時間があること。自分のやりたいことを1人でやり切る体験をしよう。例えば家のお手伝いをしてお小遣いをもらうことでもいい。自分で仕事を探したり作ったりして収入を得る。好きなことをとことん突き詰めてみる。せっかくの時間を有効に使えばいい」
不登校・学校を休みがち・学校を好きになれない子どもたちと、その子とどのように向き合うべきかを考える保護者は、ROCKETを主宰する中邑賢龍(なかむら けんりゅう)東大先端研教授の話に聞き入りました。
学校で友だちができなくても心配しなくていい
説明会の冒頭では不安気だった保護者、落ち着かない様子の子どもたちでしたが、自身のことを「変態」といい、不登校や学校に馴染めないことは悪いことではないという中邑教授のユニークな説明を受けて空気は一転。その後は子どもたちと前向きに向き合おうとする保護者と、「変なおじさん」に興味津々の子どもたちが前のめりに参加する様子がうかがえました。
会場の子どもたちの話を聞きながら説明を進める中邑教授。カマキリが好きだという少年とのやり取りでは、
「君の周りにカマキリ好きな子いるか?」
「あまりいない」
「そんな中カマキリの話をして友だちになれるか」
「なれない」
「そうだろう。君はワールドワイドな人間なんだ」
「?」
「君には校区が狭すぎるんだ」
「??」
「同じ学校に同じ趣味の子がいなくても、東京を見渡せば200人くらいいるかもしれない。日本全国なら数万人、世界中なら数十万人いる。だから学校で友だちができなくても心配しなくていい」
カマキリ好きの人口の実態はともかく、視野を広げて長い時間をかけてみることの大切さを、子どもたちとの対話を通じて保護者に伝えた中邑教授は、人と違うことを恐れる必要はないとしつつ、好きなことで生きていくのは生半可なことではないとも述べ、ROCKETに参加した子どもが学校に戻るケースも紹介しました。
ROCKETは学校教育を否定するものではありませんが、学校に馴染めない子どもがいることは事実です。例年500人ほどの応募があるものの現在は全員を受け入れられず、それぞれの事情や特性によって数十名を選抜しています。今後は自治体とも連携するなどして、「子どもたちの才能を潰さない」教育の場を展開する方針です。
「異才発掘プロジェクトROCKET」とは
日本財団と東京大学先端科学技術研究センターによって2014年から展開されてきた「異才発掘プロジェクトROCKET」。ROCKETとは、“Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents”の頭文字をとったもの。志あるユニークな才能を持った子どもたちが、そのユニークさゆえに現在の教育環境に馴染めないでいる。そのような子どもたちが、自分らしさを発揮できるような新しい学びの空間を、子どもたちと一緒に創造していこうとするプロジェクトが、このROCKETです。
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