異才発掘プロジェクトROCKET、スカラー候補生が成果発表―武田双雲氏のトップランナー講義も (2017/10/20 日本財団)
「異才発掘プロジェクトROCKET」を展開している日本財団と東京大学先端科学技術研究センター(以下、先端研)は9月25日、先端研ENEOSホールで、スカラー候補生の成果発表会とトップランナーによるセミナーを開催した。2016年度に選ばれた第3期スカラー候補生の修了式に合わせた教育プログラムの一環で、発表に臨んだ27人の候補生は興味関心に応じて高めてきた学習の現状とROCKETプロジェクトへの思いを披露し、書道家・武田双雲氏がトップランナー講義を行った。
突出した能力はあるが、現状の教育環境になじめず不登校傾向にある小・中学生を選抜し、継続的な学習保障と生活のサポートを提供するROCKET プロジェクトは2014年12月に始動した。書類選考と面接で選ばれたスカラー候補生には、科学技術や芸術、スポーツ界など多分野で活躍するトップランナーによる講義や討論に加え、料理や工作など身近なものを題材にした実践型の教育プログラムも提供。一人ひとりの興味に応じてインターネットを利用した個別フォローも行っている。
プロジェクトが始まった14年度(1期生)は応募者601人から15人、15年度(2期生)は同536人から13人、16年度(3期生)は527人から31人が、スカラー候補生に選ばれた。17年度(4期生)は6月半ばから募集を開始し、間もなく候補生が決まる見込み。
成果発表に先立ち日本財団の前田晃・専務理事は「いろいろな可能性が一人ひとりにあると思う。自分からやってみようという気持ちが前に出ていけば、持っている秘めた力が、才能が、もっともっと光ってくると思う。楽しく努力してほしい」とあいさつした。
1期生から3期生までのうちの27人が紹介した興味関心の領域は、絵を描くことから園芸・育苗、ロボット、人口知能、ものづくりゲーム、昆虫、魚、クジャク、湧水、鉱物、5次方程式、情報技術など実にさまざま。「いやだった人との関わりが増えた」「趣味に走ってもいいと知った」「ものごとを決め付けない、ということを学んだ」「ほとんど別の世界を感じさせてくれた」「質問する力がついた」「自分は自分のままでいい、ということが分かった」「学習障害のいくつかは環境によってつくられる相対的な障害だと身をもって学んだ」などROCKETへの多彩な感想が発表された。
トップランナー講義で熊本県出身の武田氏は「父ちゃん」「母ちゃん」と両親にまつわる各種エピソードなどを熊本弁で披瀝して子どもたちを笑いに誘った。その上で「常識では全く想像できない子たちが時代をつくっていく時代がやっときた」と述べ「自分が感じている世界だけが芸術。だから自分が今何を考えているかということよりも、何を感じているかが大事」「頑張らなくても自分が好きなことにチューニング(同調すること)するだけでいい。感情を整えてチューニングしてから世の中に接すると、ノイズがないからトラブルは起きない」と心を整えて臨むことの大切さを呼び掛けた。
武田氏の講義については、ROCKETプログラム初の自治体連携として特別な才能に着目した新たな教育システムの構築を目指す東京都渋谷区の児童・生徒計42人と保護者からも、聴講申し込みがあった。
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