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チルドレン・ファースト!未来を担う子ども・若者世代への投資こそ必要(後編) (2017/2/2 元神奈川県議会議員 中谷一馬)

矛盾だらけの世の中を変える

 「貧困ヤンキー」のリーダーとして祭り上げられていても、私はそうした暴力が隣り合わせのような生活に次第に虚しさを覚えるようになりました。18歳の時、「このままでだめだ」と一念発起し、高校に復学しました。紆余曲折を経て、22歳の時渋谷にダイニングバーをオープン。23歳の時、行動力を買われ、当時ブームでもあったITベンチャー企業の創業に参加しました。その企業は順調に成長し、現在では、東証一部に上場するに至っています。

 その後、様々な社会の矛盾に直面する機会が多かった自分の人生の中で、そうした現実をどうにかして変えたい、そのためには、政治の道しかないと覚悟を決め、政界を目指しました。

現在は、民進党 神奈川県第7区総支部長として活動する中谷一馬氏

現在は、民進党 神奈川県第7区総支部長として活動する中谷一馬氏

 しかし、周囲の人たちに、当時中卒の私が「政治家になりたい」という夢を語ると、決まって「無理だよ」「なれるわけないじゃん」「バカじゃないの」といった否定的な厳しい言葉を多くかけられました。「どうして?」と問い返すと、「そんなの当たり前じゃん」という答え。

 一旦レールをそれたら、もう自分たちの国や地方の予算や、未来のことを考えることから、外されるのが当たり前だというしみついた社会の認識がそこにありました。こうした「社会の矛盾」は、他にもたくさんあります。

 そもそも、議会は社会の縮図であるべきはずなのに、現実には、社会の一部分の代表者しか参加できていません。私の周りにいたような若者たちは、そのなかからぬけ落ちている。「それはおかしいのではないか?」とずっと考えていました。

 では、「誰が自分たちのような『一般市民』の意見を代弁するのだろう?」それは、「自分しかいないのでないか?」そう考え、ビジネスのキャリアを捨て、元総理大臣の秘書になり、そして27歳の時、神奈川県議会議員選挙に立候補。史上最年少で当選しました。

 ただ残念ながら、私のたどった道筋は、やはりごくまれです。

 私は、たまたま人の縁に恵まれていただけで、今でもかつての私たち家族と同じような環境で生活をするお父さん・お母さん・子どもたちは、数多くいます。

 こうした問題は、他人事ではなく、私たち一人ひとりが身近な課題として、共有していかなければ、解決されない問題です。

あなたのとなりの「貧困」-「子ども食堂」から考える私たちの貧困問題

 そうした中で、最近、「子ども食堂」というワードを耳にする機会が増えました。横浜市にある私の選挙区(港北区・都筑区)においても、昨年、都筑区で長年子どもの学習支援を行っているNPOが事業を拡張する形で食堂を開設したほか、港北区でも開設に向けた準備が進められています。しかしながら、選挙区でお会いするお母さん・お父さんに、「実は、この地区でも子ども食堂が開設されまして・・・」というお話をしても、まだまだ多くの皆さんが不思議そうな顔をされます。

 補足すると、横浜市都筑区は東京に通う方のベッドタウンで、いわゆるニュータウンです。平均年齢が40歳前後と横浜市でも最も若く、子育て世帯が多いのが特徴です。また比較的所得の安定した方が、多く住んでいます。

 同様に港北区も、横浜市内で人口が増加している数少ない地域の一つであり、横浜市内で若者が一番多く住んでいる地域です。こうした背景もあり、多くの皆さんには、「子どもの貧困」の言われてもピンとこないケースが多いようです。

 しかし、現実にそうした地域でも「子ども食堂」が望まれ、また居場所を求めて子どもたちが自然と集まってくるといいます。このことをどう理解するかが、重要です。

広がる貧困

 こうした現象の背景には、都市部における「子どもの貧困」の拡大という実態があります。正確な統計データはまだ手元にないのですが、地域をまわる実感として、こうした貧困状態にある(と思われる)お子さんや、親御さんお会いする機会は多くなってきています。

 ではなぜ、子どもの貧困問題に共感が広がらないのか。

 一つには貧困のあらわれ方の「多様性」があると考えられます。

 私のお会いした当事者の皆さんは、(女性のひとり親家庭のお子さんといったケースが多いのですが)それぞれ様々な事情を抱えており、課題や受けられている支援も一人一人違います。そうしたことが、「子どもの貧困」といわれても、一概にイメージしづらい原因ではないかと思います。

 また、もう一点は、それが「目に見えない貧困」である点です。

 前述の地域で学習支援を行っているNPOに集まってくる子どもたちを、一見して「貧困」のイメージでとらえることは困難です。中には携帯や、iPhoneのような機器を、同世代の子どもたちと同じように持っている子もいます。しかし、そうした子どもたちの多くが現実に、家族の状況に由来する自分の力では解決しがたいさまざまな問題を抱えています。そして、家族や周囲の十分な手助けがないため、次第に自発性を失い、社会的な下降を受け入れてしまうケースが多いというのが実情です。すなわち、親の所得に基づく経済的な格差に沿って、学習能力やコミュニケーション能力にだんだんと差が付き、貧困の連鎖が生れてしまう。これが、いわゆる「相対的貧困」の問題です。

 ここ数年来、経済格差の拡大とともに、統計的にみても「相対的貧困」はさまざまな形で拡大しています。「子ども食堂」が求められる背景には、こうした私たちのかたわらで、一見、目に見えない形で進行する「社会の貧困化」(その多くが連鎖している)の現実があります。

子ども食堂の機能と家族

 さて、子ども食堂の背景、すなわち「子どもの貧困」問題において「家族」という要素の重要性はあらためて言うまでもありません。私の経験したケースでいえば、前述のように母が離婚しひとり親世帯となった時点で、祖母というセーフティネットがあったことで、家族の機能が何とか保たれ、かろうじて成長することができました。しかし、もし祖母がいなかったら、幼い妹たちのネグレクトや経済的な理由での家族の崩壊のような状況に追い込まれていたかもしれません。

 こうした視点から言えば、子ども食堂が求められるのは、子育て世帯における「家族機能の低下」に由来するものであると考えられます。所得や社会保障の世代間格差が拡大し、若い世代が子育てをするのにより厳しい環境にある現在、そうした家庭内での家族機能の在りように対応し、子育てを社会の側で支えるような仕組みが、必要となっているのです。

 今重要なのは、社会や家族の変化を冷静に受け止め、「子育て支援」をより強化することで、最終的には子ども食堂が必要とされなくなるような社会環境を、政治が作っていくべきであると私は考えています。

 とはいえ、子ども食堂の広がりには大きな可能性を感じざるを得ません。

 例えば、私の地元、横浜市港北区では、子ども食堂を出発点に、同じく支援を必要とする独居高齢者など、幅広い世代も利用できる「地域食堂」を目指す取り組みが模索されています。一つの方向性として、「食」を共有する空間ができることで、閉鎖的なムラ意識とは違う所で、「地域」のネットワークが、再び緩やかにつなぎ合わされていく可能性があります。

 こうした意味でも、私自身「子ども食堂」をはじめとした、地域の子育て支援の取り組みを支援していきたいと考えています。

 また政治家の一人として政治を動かすことで、社会を変えていくために、全力を尽くしていくつもりです。

第7回 マニフェスト大賞授賞式

第7回 マニフェスト大賞授賞式(最優秀政策提言賞 受賞)

「政策」は難しい?

 さて、政治家となってからは、地元の皆さんに対し様々な「政策」についてご説明する機会が多々ありました。しかし、多くの場合「政策って難しくって・・・」と拒否反応を示されてしまうケースが多く、こうした「政治との距離」を縮めることを、自身の活動の柱としていました。私もまさしくそうした若者の一人だったからです。

 そのため、政治に関心が薄い方々には、「全然難しく考えなくていいんですよ。政策とは『目の前にある問題を一つずつ解決していくこと』だから、とお伝えするようにしています。

 例えば今、母子家庭のお母さんの就労率が80%である一方で、ひとり親家庭の54.6%が貧困状態にあります。要するに、この国の一人親家庭の人たちは、働いても働いても生活ができないような就労状況、いわゆる「ワーキングプア」になっているのです。これが「自己責任だから」というのは、明らかにおかしいですよね。半数以上の人がそういう状況になっているのですから。これは社会の構造がおかしいということです。

 こういう、目の前で起こっている「おかしいこと」に対して「解決していく方法」を提案するのが政策です。だから難しく考えすぎず、シンプルに問題を捉えることが重要とお伝えしています。

未来に向けてチェンジを

 いま日本は内向きになり、将来への希望や夢を持ちにくい状況にあるといわれています。しかし、私の実感では、同世代には将来に希望をもって頑張っている人が多いです。

 「保守せんがために改革する」という言葉があります。守り続けたいなら、実は変え続けないといけないのです。社会は刻一刻と変化していきますから。安定、安心を守りたいのなら、時代の形に合わせて、変わり続けることが重要です。そのためにはまず「行動」することが大切です。

 人が動くタイミングは2つあります。明確な動機があるときか、その環境にいられなくなったときに動きます。多くの人たちは後者で「その環境にいられなくなったとき」が変わるタイミング。

 実はその行動の指標というのは投票率に現れていると言えます。

 政治的な教育を受けている人たちは投票率が高く、自分たちの生活のことをしっかり考えているといえます。この傾向は北欧などに多く見られます。あるいは発展途上国や戦争が起こっている国。今の生活に困っていて、命が脅かされるような状況にある人たちは、真剣に社会を良くするためにどうすればいいか考え、行動(=投票)を起こします。

 正直なところ、日本は中途半端です。将来の借金を重ねていきながら、目の前の安定はできてしまっている。今の世代は、今までの恩恵でなんとか生きていけてしまう。変わらないといけないよと言っているのに、どこか自分の実感として感じられていない。

 ガンも初期には痛みがないから実感できないけれど、末期になってからでは遅いのと一緒です。

 本当の変化は、教育をして変えていくか、原発事故のように本当に切羽詰ったときしか起こらないものです。自分は政治家ですので、「教育」を変えることで社会を変えたい。

 より具体的な提言については、前編でご紹介をさせていただきました拙著「だから政治家になった」(幻冬舎)をご覧いただき、皆さまと少しでも想いを共有できれば、これ以上の喜びはありません。

著者プロフィール
神奈川県議会議員 中谷一馬(なかたにかずま) [ホームページ]
1983年生。貧しい母子家庭で育つ。厳しい経済環境で育った事から、中学卒業後、社会に出る。その後、思い直し、平沼高校→呉竹鍼灸柔整専門学校→慶應義塾大学に進学。その傍ら、東証一部に上場したIT企業を創業。元首相の秘書を務めた後に、27歳で神奈川県政史上最年少議員として当選。またWEF(ダボス会議)のGSC(U-33日本代表)に選出。現在は、民進党 神奈川県第7区(横浜市 港北区 都筑区)総支部長(衆議院選挙公認内定者)として活動。
中谷 一馬氏のプロフィールページ
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