雨漏り・ひび割れ当たり前の新校舎、西宮の公共施設管理の現状 (2017/1/17 西宮市議会議員 渋谷祐介)
竣工半年の校舎で大量のクラックと6カ所の雨漏り
昨年4月、兵庫県西宮市立高木北小学校が開校しました。高木北小学校の校舎は開校に先立つ2月に竣工・引き渡しされた真新しい校舎であり、大規模災害発生時の緊急避難場所にも指定されています。ところが、この新校舎において竣工後わずか半年程度のうちに校舎の壁面に大量のクラック(ひび割れ)が発生し、6カ所で雨漏りが起きる等、様々な問題が発生しました。
このことは学校・地域において大きな問題となり、私がブログで取り上げたことから一部新聞紙上にも掲載されました。ところが施工管理・確認を担当した市の営繕部は当初、雨漏りが起きたことについてはもちろん、施設の安全性を懸念する声に対しても、「鉄筋コンクリート造の建物でクラックが発生するのは当たり前」「雨漏りなど珍しくもない」という驚くべき説明を繰り返しました。
しかしながら購入したマンションや戸建て住宅で、竣工後わずか半年程度のうちに複数のクラックが発生し、雨漏りまで発生したなら、大変な問題になることでしょう。仮に、私個人に同じことが起きたなら、原因の究明を設計者や施工業者に依頼し、場合によっては損害賠償請求や建物取り壊しを要求することも考えます。ところが本市の公共施設では、このような重大な事故が当たり前のように、珍しくもないこととして処理されてしまっていたのです。こうした市の認識と姿勢は、世間一般の常識と比べて、きわめて特異なものではないでしょうか。
過去に建設された学校施設の7割で雨漏りが発生
さて、こうした事態を踏まえ、最も懸念されたのは校舎に安全上の問題があり、それがクラックという形で現れているのではないかという点でした。仮に、校舎に安全上の問題があった場合、
- 構造計算上の不備による建物の荷重集中・荷重強度の不足
- 鉄筋強度・鉄筋本数の不足
- コンクリート強度の不足
のいずれかに問題がある可能性が高いと思われます。そこで、この3点について調査した結果、いずれの項目にも明白な問題はなく、施設の安全性は一定程度担保されていることが分かりました。
一方で調査の過程において、過去10年間に市が建設した10の学校施設のうち7施設で雨漏りが発生していることも明らかになりました。だからこそ市は当初、「鉄筋コンクリート造の建物でクラックが発生するのは当たり前」「雨漏りなど珍しくもない」という説明を繰り返したのでしょう。しかしながら、こうした市の姿勢・感覚は世間一般の感覚とは大きく乖離しているように思われます。
求められる今後の対応、市民目線の「当たり前」を
事前の協議を経て行った議会質疑の結果、市は
- 瑕疵担保期間の1年間を過ぎた後であっても、一定期間は無償で施工会社に補修させるよう協議していく
- クラックを誘発させる目地の配置密度を高める・可能な限りコンクリート打設後の養生期間を長くとる・外壁の仕上げを防水性の高い材料とする等、クラックの発生を抑え、雨漏りの発生を防ぐための対策を今後、検討していく
という考えを示しました。当初の「施設には安全上、一切問題はない。よって、なんの対応も必要ない!」と言わんばかりの姿勢からは、一定の前進が見られたように思います。一方で、依然として担当部局には、この問題を深刻には受け止めていない面があると強く感じています。
自治体には、保有する公共施設について施工過程の管理・監督、引き渡し物件の確認等を行い、安全・快適な施設を供用する責任があります。また、その責任を引き受けるに相応しい意識・能力を持つ必要があることは言うまでもありません。
一方で、本市のみならず多くの自治体において、今回本市で明らかになったのと同様の事例が起きていること、あるいは、そうした事態の発生を未然に防ぐために必要な意識・能力自体が欠如していることも危惧されます。今後、本市の対応を見極めるとともに、必要な提言を続けていきたいと思っています。
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著者プロフィール
西宮市議会議員 渋谷祐介(しぶや ゆうすけ) [ホームページ]
昭和48年12月26日生まれ。血液型はB型。趣味は空手・読書。浜脇小・浜脇中・明星高・京都大卒業後、阪急電鉄(株)勤務。平成16年初当選、現在4期目。
渋谷 祐介氏プロフィールページ
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