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オストメイトや車椅子利用者のトイレはどこに―佐倉市と松戸市で行政マップの活用進む (2016/11/10 政治山)

 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)に基づき、官民ともに段差の解消や障害者用トイレの設置に取り組んでいますが、その機能を備えたトイレがどこに設置されているのかは十分に周知されていません。この事態の改善を唱えて高木だいすけ 佐倉市議とともに行動している関根ジロー 松戸市議にご寄稿いただきました。

1.取り組み概要

 行政が発行するマップにオストメイト(病気や事故により人工肛門・人工膀胱を造設した人のこと)や車椅子利用者等が必要としているトイレの表記が盛り込まれていないことが多い。そんな中で、佐倉市議の高木だいすけ氏、株式会社ゼンリン、公益社団法人 日本オストミー協会千葉県支部、筆者(松戸市議の関根ジロー)が連携して「佐倉市暮らしの便利帳マップ」にオストメイトトイレの表記を、「松戸市防災マップ」に車椅子用トイレの表記を盛り込むことを実現した。

佐倉市暮らしの便利帳マップ

佐倉市暮らしの便利帳マップ

佐倉市暮らしの便利帳マップ(上下とも)


松戸市防災マップ

松戸市防災マップ

 さらには、その後に作成した「千葉市中央区ふくし・防災ガイド・マップ」にはオストメイトおよびび車椅子利用者用のトイレ表記をマップに盛り込むことを実現した。なお、松戸市防災マップは松戸市長から感謝状をいただいた。

松戸市長からいただいた感謝状

松戸市長からいただいた感謝状

2.行政が発行するマップに、オストメイトや車椅子利用者等が必要とするトイレの表記が盛り込まれていない

 民間が作製するマップでは、オストメイトや車椅子利用者等が必要とするトイレを表記する動きが進んでいる。例えば、東京メトロ大手町駅構内図のトイレ表記には、ただ単にトイレマークだけではなく、どこのトイレに「車椅子対応トイレ」「オストメイト」等の機能が備えられているのか分かりやすく表記されている(添付5)。東京メトロに限らず、ショッピングセンターや観光地においてもオストメイトや車椅子利用者等が必要とするトイレの配置状況をマップに盛り込む動きが加速している。

 一方で、各自治体が発行するマップは遅れてしまっている。各自治体は、バリアフリー法に基づいて「車椅子対応トイレやオストメイト対応トイレ」等の整備に力をいれていることは事実であるが、せっかく「車椅子対応トイレやオストメイト」等を整備しても、その機能が備えられたトイレがどこに設置してあるのか、自治体が発行するマップに盛り込まれていることは稀である。これでは、どんな人にでも公平に使えるマップとは言えないし、行政こそが率先してオストメイトや車椅子利用者等が必要とするトイレの表記をマップに盛り込むべきである。

東京メトロ大手町駅構内図

東京メトロ大手町駅構内図

3.地方議員・地図会社・障がい者団体が連携して実現

 このことに問題意識を持った高木議員と筆者が、ゼンリンや日本オストミー協会千葉県支部の協力を得て、それぞれの議会において提案し「佐倉市暮らしの便利帳マップ」にオストメイトトイレの表記を、「松戸市防災マップ」に車椅子用トイレの表記を盛り込むことを実現した。

 また、その後に作成した「千葉市中央区ふくし・防災ガイド・マップ」にはオストメイトおよび車椅子利用者用のトイレ表記をマップに盛り込むことを実現した。これからも文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がい・能力の如何を問わずに利用することができるマップの作成にむけて、オストメイトや車椅子利用者等が必要とする情報をマップに盛り込むことを全国に水平展開していく。

千葉市中央区ふくし・防災ガイド・マップ

千葉市中央区ふくし・防災ガイド・マップ

千葉市中央区ふくし・防災ガイド・マップ(上下とも)

4.取り組みのポイント

(1)佐倉市にオストミー協会支部を設立

 平成27年2月に、高木議員と佐倉市内のオストメイトの当事者が連携して「オストミー協会千葉県支部『佐倉の会』」を設立し(以下、佐倉の会と呼ぶ)、佐倉市に対して下記3つの要望活動を行った。

  1. 市内の公共施設内に、オストメイトが使いやすい多目的トイレの設置を促進すること
  2. 市外から訪れるオストメイトの方々のために、オストメイト対応トイレの設置個所の一覧とマップを作成し、駅、観光施設など主要箇所に配置すること
  3. 今後、多目的トイレを新設する場合、オストメイトにとって使い勝手の良いトイレにするために、設計段階で、設備の機能や配置について、当会と協議すること

 その後、平成28年1月に、佐倉市が「佐倉市暮らしの便利帳マップ」をゼンリンに協力を得て発行することとなり、上記の「佐倉の会」の要望に基づき、佐倉市とゼンリンと「佐倉の会」が協議し、その結果、「佐倉市暮らしの便利帳マップ」にオストメイトトイレの設置場所を盛り込むことを決定することができた。

(2)評価基準を策定し、市内の主要な施設のオストメイトトイレを数値化

 「佐倉市暮らしの便利帳マップ」にオストメイトトイレの設置場所を盛り込むために、「佐倉の会」と高木議員が協力して、佐倉市内の公共および民間の実態調査を行った。その結果、公共施設(12カ所)、駅(6カ所)、商業施設(23カ所)にオストメイトトイレが設置されているものの、実際に当事者の方が使用した場合、使用しづらいトイレが散見された。

 そこで、「佐倉の会」に評価項目を策定していただき(添付6)、市内すべてのオストメイトトイレを数値化し、一定の数値が上回った10カ所を「佐倉市暮らしの便利帳マップ」に記載することにした。併せて、市民の理解を広く求めるため、オストメイトの説明を掲載した。加えて、オストメイトトイレの取り組みを専用ホームページで広報している。

佐倉の会策定_オストメイトトイレ評価項目表

佐倉の会策定_オストメイトトイレ評価項目表

(3)約61平方キロメートルある松戸市を3つのエリアに分割してマップ作成

 筆者が平成26年12月議会で提案したことをきっかけに、翌年1月に松戸市はゼンリンと「災害時における地図製品等の供給等に関する協定」を締結した。この協定の一環で、防災マップをゼンリンの協力を得て作成することになった。約61平方キロメートルある松戸市を3つのエリアに分割したマップを作成することにより、詳細な地図情報の表示が可能になったことで「車椅子対応トイレ」の表記を実現した。このエリアごとに3分割された3種類のマップは、計45,000部がゼンリンから松戸市に寄付された。

■協力
日本オストミー協会千葉県支部
株式会社ゼンリン

関根ジロー 松戸市議会議員

プロフィール
関根ジロー(せきねじろう) 松戸市議会議員
 [オフィシャルブログ]
マニフェスト大賞2年連続3度受賞(8回・11回優秀賞、10回最優秀賞)/【発起人・事務局】避難者カード標準化プロジェクト、東葛政令市移行推進協議会、学校トイレの洋式化推進ネットワーク、選挙公報.com/民進党/松戸市議会議員(2期連続最年少当選)/1984年7月生まれ/上本郷小・明大明中高・明大法・明大公共政策大学院(池宮城秀正ゼミ)/前職はNTT東日本/O型・かに座・子年
関根 治朗氏プロフィールページ

 
て高木だいすけ 佐倉市議

高木だいすけ(たかぎだいすけ) 佐倉市議会議員 [ホームページ]
1971年岐阜市生まれ、愛知県江南市育ち。名古屋商科大学大学院マネージメント研究中退・早稲田大学大隈塾フェロー。2011年3月、19年勤務した(株)梅澤(現・三井食品(株))を退社。同年4月、農業の6次産業化、産業振興の推進を掲げ、佐倉市議会議員選挙に立候補、初当選。現在2期目。
サラリーマン時代の経験を活かし、マーケティング思考を用いたシティプロモーション、福祉政策などに取り組む。2012年1月「地域資源を産業に!!」を掲げ、食品商社・佐倉社中合同会社を起業。佐倉の農産物を原料にした調味料を商品化するなど、事業者としても産業振興に取り組む。また、食品流通に関する28の資格・認定を取得。
モットーは「挑戦すること 好奇心をもつこと」。尊敬する人物は一番星・星桃次郎。民進党所属
高木 大輔氏プロフィールページ

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