[用語解説]衆院選、選挙費用
衆院総選挙の費用は600億円!! その内訳は? (2014/11/13 政治山)
2015年10月から消費税を10%に引き上げるか否かの決断を目前に控え、にわかに衆議院解散・総選挙の論調が強まってきました。選挙が行われる際には、選挙管理委員会などの選挙を執行する側と政党や候補者などの立候補する側それぞれに費用が生じるわけですが、選挙の執行にはどれほどの費用が必要なのでしょうか。
総費用の約半分が投票所などの人件費
2012年12月に行われた第46回衆議院議員総選挙を見てみると予算執行額は587億円で、2009年(第45回)の598億円からわずかに減額となっています。
主な経費の構成は、投票所または開票所にかかる経費(管理者や立会人の人件費)、期日前投票にかかる経費、各選挙管理委員会の事務費(選挙の啓発や入場券の送付)、その他(ポスター掲示場費や選挙公報発行費)となり、投・開票所や期日前投票の人件費(超過勤務手当含む)が総費用の約半分を占めています。
選挙公営として新聞広告に100億円超、日本郵便には20億円
政党や候補者が有権者に支持を訴えるために、テレビや新聞、印刷物などを用いる際にその費用を税金で賄う仕組みを「選挙公営」といいます。政見放送や経歴放送を収録して報じる各放送事業者には約1億円、新聞広告を掲載する各新聞社と、推薦はがきを発送する日本郵便株式会社にはそれぞれ約20億円が支払われています。
推薦はがきの発送については、全国を網羅する配送事業者は国内に複数ありますが、入札が行われた実績はありません。
また、2013年にインターネットを利用した選挙運動が一部解禁となりましたが、選挙公営によるインターネット広告は認められていません。
なお、新聞広告費用について、上記の20億円は総務省から新聞社に支払われている分のみとなります。都道府県への委託費(市区町村への委託費を差し引いた額)は140億円ほどで、その8割以上が選挙公営費に充てられています。
民間会社への委託の9割以上が随意契約
啓発企画や開票速報業務など民間会社への委託費は3.2億円で、少なくとも9割以上が随意契約(一般競争入札ではない)により支払われています。2009年には5.4億円の民間への委託費のうち7割以上を大手広告代理店が占めており、有権者から見てその事業者が選ばれた経緯や何にいくらかかったのか、分かりにくい状況が続いています。
「政治とカネ」が再び注目され、各地で不正投票や不正集計が発覚し、政治や選挙への信頼が揺らいでいる今だからこそ、選挙を執行する側もこれまで以上に襟を正す必要があるのではないでしょうか。
- <著者> 市ノ澤 充
- 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。政治と有権者の距離を縮め、新しいコミュニケーションのあり方を提案するための講演活動も実施している。
- 関連記事
- ネット選挙解禁で広がる、政見放送の可能性(2014/11/7)
- 公訴時効は3年、宮沢経産相らの外国人献金問題(2014/10/30)
- 米中間選挙2014-ねじれ解消と大統領選の行方(2014/10/28)
- そのほかの用語解説