成熟型成長都市研究会
こども支援に関するトークサロン「第3回 まちづくりの環」開催 (2013/12/18 成熟型成長都市研究会 細川甚孝氏)
成熟したまちを対象としたまちづくり、政策などを議論するトークサロン「第3回 まちづくりの環」が15日、東京都府中市のルミエール府中で開催された。今回は、「貧困とこども~こどもの居場所づくりを中心として」がテーマ。講師は、トークサロンを主催する「成熟型成長都市研究会」主宰者の東京都府中市議の西宮幸一氏と、大阪市西成区で幅広いこどもの支援を行っている「こどもの里」館長の荘保共子(しょうほ ともこ)氏が務めた。子どもがかけがえのない個人として尊重される地域社会のために必要な支援と制度設計のあり方について議論を行った。ここでは、成熟型成長都市研究会事務局の細川甚孝氏のレポートをお届けする。
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困難を抱えた子どもたちのための「こどもの里」
荘保氏は、大阪市西成区で「こどもの里」という、困難を抱えた子どもたちの遊び場運営・相談活動・一時保護などを行うホームを運営している。今回は、ご自身の取り組みをご紹介いただくとともに、子どもたちがDV・ネグレクト・不登校・家出などに追い込まれていく状況や「子どもの居場所になれるまち」のために必要な体制について、具体的な事例とともにお話しいただいた。
「こどもの里」の始まり
1989年に大阪市が独自に「子供の家事業」の実施をはじめた。利用者の年齢も0~18歳で、障害をもった子どもたちも多く、「学童保育」とは異なり、親たちの相談所、なにより様々な問題を抱えた子どもたちの「駆け込み場」「居場所」となっているところが特徴である。「こどもの里」もその中の一つである。
しかし、大阪市は、2014年には「子供の家事業」を廃止するとしている。それに伴い「こどもの里」も、有料の「学童保育」に移行せざる負えない状況である。そのため、現在、社会福祉事業法人の資格を取得し、自立の道を検討しているという。
「こどもの里」が大切にしていること
「こどもの里」は、釜ヶ崎の近隣の人たちだけではなく、必要とする人は誰でも利用できる場として、乳児、幼児、小中学生、15歳以上の青年、障害児、外国人など、必要がある人はすべて受け入れている。
様々な家庭環境の中で、幼いうちから背負いきれないほどの重荷を負わされている子どもたちに、遊びを通じて自分の能力を知り、自分に自信を持ってほしい。自分自身を大切にすることができれば、他者を大切にすることができる、それを学ぶ手助けする場でありたい。 そして、青年たち、保護者たちがホッと一息でき、ありのままの自分でいられる場が必要であるとした。
地域ぐるみで子供を守るネットワーク
ちなみに、府中市では、子ども支援「たっち」で相談事業を行っており、青少年対策推進協議会も活発である土地柄である。また、来年から、コミュニティ・スクールが始まる。これらの動きを背景として、「個別的である活動が地域全体に包括的に広がっていくには?」という西宮氏の質問には、「西成区地域支援システム」があり、73団体がネットワークを組み、発見、相談、助言、見守り、支援等の連携を取っているとした。
また、「あいりんこども連絡会」という、地域の福祉・医療・保健・教育が連携しあう、子どもを守るネットワークもある。福祉や教育上、最も困難な状況におかれている「釜ヶ崎(あいりん)地区」の子どもたちの生活を、少しでも「子どもの権利条約」の理念に近づけたい、そんな思いを実現するために「釜ヶ崎(あいりん)地区」で子どものかかわる仲間同士の、子どものための情報交換や相互支援のためのネットワークづくりを進めた。「あいりんこども連絡会」を参考に、中学校区ごとにケース会議をはじめた。2005年には、中学校区ごとにケア会議を開催している。
今後は、医療や学校、司法と連携を取り、包括的地域子どもセンターを中学校区ごとに設置することで「子育ち対策、貧困対策、子育て対策、虐待防止策」の場としていく予定だ。
遊び場の大切さ
国際的な統計から、環境からの孤立感が強く・自己肯定感が他国に比べ突出して低くなってしまった日本の子どもたち。既存の行政組織や地縁組織・学校だけでは受け止めきれない実状があり、子どもの居場所がなくなっている。
2013年12月に「にしなりプレイパーク」プロジェクトを立ち上げた。子どもが住みやすいまちは、大人も住みやすいはずである。子どもの住めるまちを取り戻すための「遊び場」プレイパークづくりに取り組んでいる。
■関連リンク
「こどもの里」ホームページ
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トークサロン「まちづくりの環」は、人口増加・経済成長と市街地の拡大が続いてきた時代が終わり、成長・拡大が落ち着いたこれからの「成熟型」都市において、必要なまちの仕組みやまちづくりのデザインについて、西宮氏を聞き手に識者を招き、議論する目的で開催されている。成熟型成長都市研究会では、今後も講師を招き、地域レベルでの社会保障のあり方やシティプロモーションなどこれからのまちづくりに関するテーマについて研究会を開催するという。全5回を予定しており、次回は2014年3月に予定している。
細川甚孝(ほそかわ・しげのり):有限責任事業組合 政策支援 代表組合員
2009年、早稲田大学大学院公共経営研究科修了(公共経営学修士)。2000年前後から自治体などの総合計画、行政改革などのコンサルティングに携わる。土木設計、大学機関、広告代理店などでそれぞれの持ち味を活かしたプランニング・コンサルティングを経験。2010年ごろから、活動範囲も政治・政策までに広げ、現在全国規模で活動中。
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