成熟型成長都市研究会
公共施設マネジメントに関するトークサロン「第1回 まちづくりの環」開催 (2013/5/7 政治山)
学校やコミュニティ施設など公共施設の管理を通じたまちづくりについて議論するトークサロン「第1回 まちづくりの環~公共施設マネジメント~」が5月6日、東京都府中市のルミエール府中で開催された。講師は、会を主催した「成熟型成長都市研究会」の主宰者で府中市議の西宮幸一氏と、東洋大学PPP研究センターリサーチパートナーの岡田直晃氏が務めた。岡田氏は、現在、千葉県習志野市財政部に所属しており、同市で先進的に取り組んでいる公共施設の管理・再生事業について経験を織り交ぜ、解説した。
公共施設マネジメント白書は「健康診断」
トークサロン「まちづくりの環」は、人口増加・経済成長と市街地の拡大が続いてきた時代が終わり、成長・拡大が落ち着いたこれからの「成熟型」都市において、必要なまちの仕組みやまちづくりのデザインについて、西宮氏を聞き手に識者を招き、議論するのが目的で開催された。初回のテーマは、公共施設の老朽化や自治体の財政難などを背景に注目されている「公共施設マネジメント」について。岡田氏によると、公共施設の管理をするのは、(1)将来の更新費用などの「将来の負担を減らす」、(2)少子高齢化などによって利用者の利用環境が変化したことによる「利用者ニーズに合った施設整備」――の2つが目的だという。
西宮氏からは、東京都多摩地域の取り組みについての紹介があった。全国に先駆けて都市化が進んだ東京都のうち、特に多摩地域26市中13市では現在、「公共施設マネジメント」に関する指針・白書が策定されている。1964年の東京オリンピックで施設されたインフラの多くが老朽化していること、また少子高齢化などによる住環境の変化が著しいため、こうした取り組みが先行したという。西宮氏はさらに、府中市の特徴として、「公共施設マネジメント白書」だけでなく「インフラマネジメント白書」も作成していることを挙げた。
岡田氏はこういった「白書」について、「医療で言えば、『健康診断』。どこが悪いのかを整理することで、どう改善していくのか計画や取り組みを考えることができる」と説明した。
その後、岡田氏は、習志野市で作成している「公共施設マネジメント白書」を例に、現在の取り組みを説明した。先進的と言われる習志野市も、施設の老朽化が進んでおり、取り組まざるを得なかった状況だったと言う。習志野市では老朽化や新しい耐震基準対応のために公共施設を順次更新した場合の費用を試算したところ、すべての更新は不可能で、現状の43%の施設しか更新できないという結果が出た。同市の小中学校分しか施設の更新ができないということだが、では子育て施設や生涯学習施設、市庁舎はどうするのかという議論になった。
そこで必要なポイントとして、「『機能』と『施設(建物)』の分離」「保有総量の圧縮」「施設の質的向上」の3つを議論の「前提」として挙げた。特に「機能と施設の分離」について、「例えば、図書館で言えば、知識を得ることが求められる『機能』であり、それは少子化で教室が余っている学校に図書館を作っても機能としては同じ」とし、機能を整理し、それをすでにある施設で多機能化・複合化していくことで、将来の施設更新の負担とサービスの質向上を同時に進めていくことが可能だとした。
会場からの質問で、こうしたテーマが市民の議論や選挙の争点にならない状況をどうすべきかという質問があり、西宮氏は「議会で特別委員会を立ち上げて、調査・情報共有を進めることが1つだ」と回答。また、岡田氏からは習志野市で「公共施設調査特別委員会」が2011年6月に設置され、行政でも近々「公共施設再生計画」策定が予定されており、施策として優先的に進めている現状が報告された。
成熟型成長都市研究会では、今後も講師を招き、再生可能エネルギーやシティプロモーションなどこれからのまちづくりに関するテーマについて研究会を開催するという。全5回を予定しており、次回は8月に予定している。
(政治山)
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