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成熟型成長都市研究会

福島原発事故に関する「国会事故調」の活動について トークサロン「第2回 まちづくりの環」開催 (2013/8/4 成熟型成長都市研究会事務局 細川甚孝)

成熟したまちを対象としたまちづくり、政策などを議論するトークサロン「第2回 まちづくりの環~福島原発事故に関する『国会事故調』の活動について~」が4日、東京都府中市のルミエール府中で開催された。今回は夏休み特別編として、「福島原発事故」がテーマ。講師は、トークサロンを主催する「成熟型成長都市研究会」主宰者の東京都府中市議の西宮幸一氏と、国会事故調に調査統括補佐として参加した石橋哲氏が務め、国会事故調査報告書の紹介や現在の原子力行政、原発事故対応の状況について議論を行った。ここでは、成熟型成長都市研究会事務局の細川甚孝氏のレポートをお届けする。

公共施設マネジメントに関するトークサロン「第1回 まちづくりの環」開催

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4つの事故報告書~国会事故調査委員会の特性

意見交換をする西宮氏(左)と石橋氏(右)

意見交換をする西宮氏(左)と石橋氏(右)

 石橋氏は、より多くの人に報告書の意義を理解してもらうために2012年11月、「わかりやすい国会事故調プロジェクト」を国会事故調に参加メンバーを中心に立ち上げた。現在、ワークショップ、イベントなどを通じ、国会事故調査報告書の紹介などを中心としたさまざまな活動を行なっている。トークサロンでは、原発事故は決して収束しておらず、今後、さまざまなデータを中心に、比較可能な形で議論を進め、我々市民が自分のこととして福島原発事故を捉えることが必要であるとした。

 西宮氏からは、福島原発事故に関して、政府から東京電力まで4つの事故報告書が提出されており、それぞれの視点で整理・分析されていると報告があった。今回の講師の石橋氏が参加された「国会事故調査委員会」は日本の憲政史上初めて、国会として調査を行った事例であると紹介した。ヒアリング・アンケート・タウンミーティングと幅広い調査、かつ、ほぼすべての情報を公開したという点で画期的であったという。

国会事故調査報告の7つの提言

国会事故調査委員会報告書をもとに原発行政の現状を説明する石橋氏

国会事故調査委員会報告書をもとに原発行政の現状を説明する石橋氏

 石橋氏からはまた、国会事故調査委員会報告書における7つの提言を中心とした内容の報告があった。その中で、原子力発電所の安全な運営に対する外部からの監視・監督機能が崩壊したことと、そもそも原子力発電所の安全神話の中で、原子力発電所に関する危機管理体制が存在しておらず、情報そのものの共有体制がなかったことが大きな原因の1つとした。そのため、誰がリーダーシップをとったとしても、事故が発生した場合、同様の危機を迎えただろうとしている。

 西宮氏からは、これまでの原子力行政のあり方として、原子力災害に関する情報の流れが固定的であり、トラブルに対応したものでなかったのではという問題提起がなされた。また、属人的であり、システムとして災害対応力が弱く、さまざまな議論に耐えうる仕組みではなかったのではないかという問いかけがあった。

原子力災害への不完全な組織的対応

石橋氏は「わかりやすい国会事故調プロジェクト」を国会事故調の参加メンバーを中心に立ち上げた

石橋氏は「わかりやすい国会事故調プロジェクト」を国会事故調の参加メンバーを中心に立ち上げた

 石橋氏は、この課題に対して、そもそも行政は効率的な反復を行動原理とする組織であり、災害などの突発的な動きには弱い組織であると指摘した。災害に対しては、命令系統の一本化など迅速な動きが可能な組織づくりが必要であるとした。また、規制のあり方としても、これまでが「規制の虜」として、関連する事業者が大きく影響力を発揮する仕組みだったが、今後は利害から独立した監視体制が必要であるとした。

 最後に、現在は原子力行政及び原発事故に関する「見ざる」「言わざる」「聞かざる」という思考停止の状況が広がっており、今後は、政治家などの関係者への活発な対話の呼びかけ、質問などによる問いかけの実施を行なっていく必要性があるとした。

 また、石橋氏が現在取り組まれている、「わかりやすい国会事故調プロジェクト」に触れ、スライド形式でのダイジェスト版、アニメーション形式の要約版などが紹介された。そこでも、今回の組織的な課題などを分かりやすく解説されているとした。

 会場から、そもそも報告書の結論に関して、結論に至るプロセスを示すことができないのかという質問がでた。石橋氏は、議論を活発化させるために、今後作成を検討すると回答した。

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 トークサロン「まちづくりの環」は、人口増加・経済成長と市街地の拡大が続いてきた時代が終わり、成長・拡大が落ち着いたこれからの「成熟型」都市において、必要なまちの仕組みやまちづくりのデザインについて、西宮氏を聞き手に識者を招き、議論する目的で開催されている。成熟型成長都市研究会では、今後も講師を招き、地域レベルでの社会保障のあり方やシティプロモーションなどこれからのまちづくりに関するテーマについて研究会を開催するという。全5回を予定しており、次回は10月に予定している。

細川甚孝(ほそかわ・しげのり):有限責任事業組合 政策支援 代表組合員
2009年、早稲田大学大学院公共経営研究科修了(公共経営学修士)。2000年前後から自治体などの総合計画、行政改革などのコンサルティングに携わる。土木設計、大学機関、広告代理店などでそれぞれの持ち味を活かしたプランニング・コンサルティングを経験。2010年ごろから、活動範囲も政治・政策までに広げ、現在全国規模で活動中。
facebook:有限責任事業組合 政策支援

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