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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3)◆静観状態の日韓関係◆  株式会社フィスコ 2017年5月14日

関連ワード : 北朝鮮 貿易 金融経済 韓国 

年明け輸出増も、対韓取り組み低調

誰がなっても「反日」と言われた韓国大統領選は文在寅氏が予想通り選ばれた。日本経済への影響、市場インパクトは小さいと見られ、調べて来なかったが、当面、朝鮮半島情勢に変化が出るかどうかを通して影響を見ることになろう。安倍首相は早期の首脳会談を求める意向を表明したが、北朝鮮や中国のコメントは出ていない。わずかに、「同盟関係の大幅変更は見込まず」との米当局者のコメントが流れただけだ。

驚いたのは、最近の日韓経済、日韓貿易を論じた記事がほとんど見当たらないことだ。当然、政権交代の影響予測もない。JETROが3月に発表した報告書で、「今後の輸出ターゲットとする国・地域ランキング」で韓国は「大企業」が挙げた10位、ASEAN諸国を下回る(欧州は西欧で一括り)。マレーシアやフィリピンより低い。「中小企業」ではランク外。「海外拠点の所在」(全企業)では「販売」で8位に上がるが、これも4位の台湾、7位の香港に見劣る。「生産」や「研究開発」(技術を盗まれるリスクがある)の地位は下がる。

日韓貿易は韓国の慢性的赤字で、日本からの生産機械、部品輸入に依存した貿易立国とされる。東日本大震災後に日本企業を誘致するような動きがあったが、その後の「反日」展開もあって盛り上がらなかった。ただ、ジリ貧を続けてきた日韓貿易が今年に入って輸出増が顕著、月間輸出額が5000億円を超えてきている。日本の黒字額は3月に前年同月比35.9%増の2986億円、1-3月で同20.5%増の6999億円。13年以降で最高水準にある。THAAD問題で中韓関係が厳しくなっている余波が出ている可能性が考えられる。日韓とは関係ないが、ホンダなどの中国販売が伸びているのは中韓関係の悪化で現代自、起亜など韓国車の販売不振が影響している面が考えられる。仮に半島情勢が劇的に変化するような事態になれば、注目度が一気に上がる可能性はある。

半島情勢のカギを握る北朝鮮は、オスロでの米朝接触の詳報は伝えられていないが、14-15日北京で開催される中国の「一帯一路」国際首脳会議に代表団を派遣すると伝えられた。外交攻勢に転じる気配がある。中国が貿易を本当に止めているか不透明だが、この時期は食糧難の「春窮」に当たる(作物が芽吹いたばかりで在庫が乏しくなる時期)。また、肥料など生産物資を調達しないと農業生産に打撃が広がり、極端なモノ不足に襲われる可能性が高まっている。焦りが滲み出て来る公算がある。「一帯一路」会議は、中国の対南北政策を見る上で、最初のチェックポイントと思われる。

なお、昨日でTOPIXの前年比は+21.05%、6ヵ月前比は+21.57%。6ヵ月前はトランプ相場のスタート地点。年明けの日本株が海外市場に比べて「出遅れている」との「解説」があるが、昨年末の上昇ピッチが米国に連動して早く、その後「円高圧力」、「北朝鮮情勢今までにない緊迫」があったためで、圧迫要因が薄れればある程度は追い付く。33業種で見ると、6ヵ月前比は全業種プラス、前年比では「空運」のみがマイナス。出遅れ循環物色が進行している。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/10号)
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