【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1)◆リスク要因薄れ、上値追い展開◆ 株式会社フィスコ 2017年5月14日
マクロン氏勝利、米雇用統計押し上げ
仏大統領選は早々と決着が付いた。日本時間午前3時台に出口調査でマクロン氏65%、ルペン氏35%との報が出て、開票はほぼその通りに進んだ。早朝の為替取引では、ユーロが124.52円(1.10ドル台)、ドル円は112.97円を付けた。7日に行われたもう一つの選挙、ドイツ・シュレスウィヒホルシュタイン州議会選挙で、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)が前回比2.5ポイントアップの得票率33%強で勝利し、9月の連邦議会選挙への懸念が萎んだことも追い風になったと思われる。
EUが諸問題を抱えていることに変わりはないが、「EU崩壊」のようなストーリーは陰を潜めよう。2日にはギリシャ財務相が国際債権団と金融支援を巡る改革案で合意したと発表、債務軽減協議が前進する見込み。焦点は6月の英総選挙とブレグジット交渉、アリタリア航空の事実上破綻などイタリア情勢、中東を訪問したメルケル独首相が締結期待を表明したEUと湾岸諸国の自由貿易協定(ただし20年越し。今月下旬にトランプ外遊で中東、欧州訪問が予定されている)などが考えられる。
GW連休中、最も大きなインパクトを与えたのは米4月雇用統計。非農業部門雇用者数増加が21.1万人、市場予想18.5万人を上回り、失業率は10年ぶりの4.4%に低下した。賃金上昇率は前年同月比2.5%増にとどまったが、GSは6月利上げ確率90%(従来70%)に引き上げ、モル・スタは「6月利上げ巡る不透明性後退」とのコメントを出した。6月FOMC(13-14日)前にもう一回雇用統計があるが、見切り発車ムード。ただ、米長期債の金利上昇は鈍く、5日の10年債は2.3505%、30年債2.9903%、ともに前日から小幅低下している。9-11日に控える総額620億ドルの四半期定例入札に思惑(金利が跳ね上がると不調になるリスクがある)があり、通過後が焦点と思われる。
3日付日経新聞がようやくドル建て日経平均の動きを記事にした。2日の173.52ドルは17年1ヵ月ぶり(日経平均採用銘柄が大量に入れ替わった時)高値だそうで、記事には無いが、次の大台180ドルに向かうかどうかが焦点。ドル円が米雇用統計などを受け、フシ目の112.5円を越えてきており(目線は110円±2.5円から110~115円ゾーンにシフトする)、最大値は180ドル×115円=20700円になろう。目先の焦点は企業業績。今週は発表ラッシュで、9日総合商社、10日トヨタ、11日パナソニック、12日日立など集中日。時事通信の5月1日集計で、今期予想4.4%増収、5.9%経常増益の目線が切り上がるかどうかが注目ポイント。韓国大統領選が控えているが、北朝鮮情勢で突発的な動きが無い限り、影響は小さいと思われる。安倍首相の憲法改正提案は今秋総選挙への布石と考えられる。
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/8号)
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