【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1)◆目先危機感緩和も、長期化の様相◆ 株式会社フィスコ 2017年4月16日
米中首脳会談、中国動けず。米圧力中心の展開へ
米中首脳会談はトランプ・ペースで展開された印象だ。15年9月に習近平を私邸に招いて習−オバマ会談が実施された際、習近平が原稿棒読み的対応に終始したことに激怒したオバマが南シナ海問題で「航行の自由作戦」に踏み切ったが、極めて限定的で、逆に中国側に油断があったとされる。今回も習近平に臨機応変の対応は見られず、トランプがセットしたシリア空爆の衝撃など、米優位の雰囲気に覆われたようだ。9日にティラーソン国務長官はシリア攻撃は北朝鮮を強く牽制するもので、「我々の目的は朝鮮半島の非核化だと明確にしている」と述べた。少なくとも、習近平は、この点で同意した。
米中首脳会談決裂で、週末にも対北朝鮮軍事行動との目先的な危機的圧迫は和らいだ。北朝鮮は今週からイベントが相次ぐ。11日は金正恩最高指導者就任5周年、最高人民会議開催予定、15日太陽節(金日成生誕105周年記念)、25日朝鮮人民軍創設85周年。祭典や軍事パレードが開催される見込みだ。9日は平壌でマラソン大会が開催されたそうだが、北朝鮮発表で外国人1100人が参加、11日からは外国記者団(日本だけで60人規模)が入り、一種の人間の盾状態になっている。ミサイル・核開発の強硬発言は変えないと見られるが、実験などに踏み切れるかは不透明だ。
次のヤマ場は月末ではないかと見られているようだ。8日、オーストラリアに向かっていた米空母カール・ビンソンが朝鮮半島に向かうと発表され、米国内で韓国への核再配備などが議論されていると報じられた。北朝鮮が挑発すれば事態は急変するが、体制整備のニュースは準備活動を示す。中国が北朝鮮にどういった圧力を掛けるかの見極めも必要だ。韓国大統領選は中道派安氏が親北の文氏に対し、一気に優勢となった。中朝国境の警備が強化され、医療救護部隊も動員されているとの観測が出ている。
ただ、株式市場の圧迫材料は北朝鮮情勢だけではない。11日に東芝4−12月期決算期限を迎えるが、既に延期観測が出ている。半導体売却で経産省が奉加帳を回し始めたようだが、売却が上手く行くとは限らない。米国は東芝の特許侵害の可能性をチラつかせ、原発売却も問題視する報道が出ている。シリア情勢では、10日のG7外相会合、11-12日のティラーソン国務長官訪露などでの協議が続く。
統計では13日の3月中国貿易統計が焦点。既に1,2月の対米黒字は200億ドル台に低下しているが、春節のイレギュラーを除いて、本格的な減少基調と看做されるか注目される。ロス商務長官の発言通り「中国の改善の姿勢が見える」のであれば、18日の日米経済対話への警戒感も和らごう。週末の米雇用統計は下振れたが、小売業の2.97万人減や気候条件(中旬に猛寒波に見舞われた)の影響と見られる。次の利上げは6月が焦点と見られ、雇用統計は2回あるので、大勢への影響は限定的と見られる。
日経平均は一時的に下限メド(170ドル×110円=18700円)を踏み外した(ドル建て日経平均が168ドル台に低下)が、基調はボックス圏内の動きと考えられる。売り方の買戻し圧力が強まれば、反発場面も想定される。2月期決算発表および3月期決算の業績修正動向をベースに個別物色地合いと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/10号)
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