【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3)◆開戦前夜のムード◆ 株式会社フィスコ 2017年4月9日
不透明感嫌い、リスク回避先行
詳細不明ながら、朝方から北朝鮮の飛翔体発射が伝えられている。ハムギョン南道新浦付近からの発射で、昨年SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射した近辺のようだ。最近は連日のように、対北朝鮮軍事行動の緊迫を伝えるニュースが出ている。例えば、31日に麻生財務相が「北朝鮮情勢は報道より深刻」と発言、2日には英FT紙がトランプ大統領インタビューで、「中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々が単独でもやる」との発言を掲載、3日には日本の駐韓大使帰任が発表された。
反対を押し切って駐韓大使帰任を命じたのは、在韓邦人の帰国体制を整備するためとの見方で、日本政府が有事に備える動きを加速させているとの見方になる。在韓邦人退避問題は15年10月に日本政府が協議を提案したが韓国側が拒否と伝えられた。その後の韓国政治の混乱を考えると、取り決めはできていないと見られる。自衛隊が動くことへのアレルギーが強いものと見られる。在韓邦人は当時で3.7万人。30日、自衛隊は空自美保基地(鳥取県境港市)でC2輸送機の配備記念式典を行った。3機配備され、当面は運用試験だが任務遂行は可能と考えられる。現在のC1に比べ、1.5倍の大きさ、航続距離は1700km(5トン搭載時)から7600km(20トン搭載時)に大幅な性能向上。
その後も、米CNNは「北朝鮮、世界の銀行を狙うサイバー攻撃に関与か」と、ロシア・サイバーセキュリティー企業カスペルスキーの調査結果を積極的に伝えた(狙われたのはバングラ、エクアドル、フィリピン、ベトナム。その他に13カ国・地域に攻撃があったと報告)。米下院は中国に対北圧力強化を求める決議を採択、米国連大使は28日にティラーソン国務長官が出席して安保理閣僚級会合を開催すると発表した。
北朝鮮問題で金正恩排除の「斬首作戦」が語られるが、ポスト金正恩体制の議論はない。これが不透明感の大きな要因になっているが、28日の国連会合は暫定的な国連統治の方法を模索する会合になる可能性がある。逆説的に言えば、それまでに軍事行動が起こる可能性がある。最短は、6-7日の米中首脳会談が決裂、週末にも米軍が(単独で)行動を起こすリスクだ。
今まで北朝鮮情勢は日本株の上値を抑える要因と受け止められてきたが、昨日は東証空売り比率が今年最高の43.2%に上昇、中小型の防衛関連銘柄が乱舞した。駐韓大使帰任ニュースがリスク回避を一気に強めたと思われる。戦争そのものの在り方が異なるので参考になるかどうか分からないが、1950年の開戦時は、開戦直後が安値、国連軍参戦から優勢で徐々に切り返し、中国軍参戦の波乱を交えつつ、右肩上がりの展開となった。日本の証券取引自体が再開間もない状態だったが、「朝鮮特需」による経済復興を織り込む流れだったと受け止められる。
今のところ、中長期の展開シナリオは見当たらず、韓国の行方すら不透明感が強い。ボックス下限の攻防となっている様相は致し方ないところだが、下値拾いの動きも出て来ると想定される。中国の出方がカギになると考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/5号)
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