【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1)◆新年度入りでの売りは小さくなるか◆ 株式会社フィスコ 2017年4月9日
国内機関投資家の売り圧力の一巡睨む
31日後場の急落は意外感があった。日経平均は前場のプラス圏から終値は153.96円安の18909.26円。終わった後の解説は、「国内機関投資家の利益確定売り」。国内機関投資家の動向を反映する「信託銀行」が3月24日週まで8週連続、「投資信託」が15週連続売り越していたので、期末は一旦軽くなると思っていたが、売り継続となった可能性がある。ちなみに、昨年の日経平均も3月14日高値17291円から4月8日安値15471円へ、10.5%調整した。4月25日には17613.56円まで切り返したので、相場変動のボックス圏内だが、理由は記憶にないぐらい薄く「期末ドレッシング」が死語になった印象を与えた。
売りの主導となった先物売買手口を見ると、日経平均先物6月限の売り越しトップは野村の1630枚、次いでクレディ・スイス1141枚、ドイツ銀1027枚と続く。TOPIX先物はみずほ証の6312枚が突出、2位のクレディ・スイスは1524枚。買い大手はともにメリルリンチ。国内勢がトップを占めたこと、および為替連動でなかったこと(株価下落してから若干円高に振れた)などが、「国内機関投資家の利益確定売り」の説明に繋がっていると思われるが、問題は何故、後場からの売りなのか。
トランプ政権の通商問題高姿勢は朝から出ていたので、後講釈の域を出ない。今週6-7日に米中首脳会談が正式発表となったので、北朝鮮問題が意識された可能性はある。米国は会談まで動かない(中国の了解を取る必要がある)と見られるが、北朝鮮は先制攻撃を辞さない構え。一触即発ムードが続いている。
もう一つ、東芝の関連が考えられる。メモリー新会社2兆円売却説が出て、市場が注目する米アップルの名前も出た(読売)。後場一段高に急伸し、買戻し相場色が強まった。インデックス投資家が空売りを外した(買い戻した)とすると、同時に先物を売りつないだ可能性がある。メモリー新会社を売却したとしても、東芝が安泰とは言えない。実際、引け後にロイターは11日の決算発表が再延期される可能性があると報じた(信用売り残および空売り残は今週発表される)。11日に向け波乱要素となるリスクが残ろう。
機関投資家の懐事情での売りかも知れない。1日付日経新聞は大手信託銀行4行の年金基金向け17年度運用で国内株への配分比率を引き下げると報じた。平均で前年度比0.5ポイント低い27.5%、ただし、よく見ると三井住友信託一行が3ポイント引き下げ(比率は全体より高い28%)が影響したもの。上積みは国内外の債券。国内機関投資家が日本株にそれほど強気になっていないことを反映しているものと思われる(→全体上昇より、銘柄入れ替え、選別物色の色彩が濃い相場が想定される)。利益確定売り一巡のタイミングが注目されよう。
今週は週末に掛けての米中首脳会談と米雇用統計が最大の焦点。「IS殲滅」で、NO2殺害が発表され、米国がシリアのアサド政権容認に傾き、ひと山越えた可能性がある。その分、次は北朝鮮となり、緊迫感の高い状況が続くと見られる。米利上げ問題は6月が攻防点だが、雇用統計で駆け引きが強まるか注目される。直近の日経平均高値は3月2日の19668.01円。昨年のような10%調整があるとすれば、17700円処が計算されるが、今までの流れから見ると、そこまでの下落懸念は小さいと考えられる。今月下旬からの決算発表を睨んだ選別相場が想定される。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/3号)
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