【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2)◆人手不足感の押し上げ効果を測る◆ 株式会社フィスコ 2017年4月9日
人手不足感、25年ぶり水準、ようやく押し上げ効果出るか
笛吹けど踊らず状態だったデフレ脱却、賃上げ好循環、消費活性化などに変化が出るかどうか、ようやく注目される局面に入ってきたと考えられる。31日発表の2月失業率は2.8%、22年2ヵ月ぶりの2%台に入った。昨日発表の3月日銀短観で人手不足感を示すDIは-25、前回比マイナス幅が4ポイント拡大し、25年ぶりの水準となった。失業率が3%を割れば、劇的に環境・行動が変化すると言われて来た。その変化を見る局面に入ってきたと思われる。
ロイターは「人手不足でもIT投資増えない謎、停滞続けば国際競争力に打撃」と題する記事を配信。人手不足にも拘わらず、賃上げ、設備投資がそれほど大きく進んでこなかった背景を探ると同時に、いわゆる「競争劣後」の恐怖心を煽るパターンの記事だ。日本経済全体の流れは、人よりも一歩先行して対策を打つより、「困った、困った」と言う方が押し上げ効果が高いと言われる。「人手不足倒産」と言った様な不安心理を煽る記事が増える方が、インパクトが出るとの見方だ。
例えば、失業率が低下し、有効求人倍率1.43倍の高水準でも、非正規労働者2005万人、労働者の37.1%。25年前に比べると正社員は400万人程度少なく、非正規は1000万人多い。これが目立った賃上げ効果が出ない一因とされてきた。人手不足の正念場を迎え、こういった構図の変化が加速するかどうかがポイントとなる。IT投資も同様、「(13年度頃と比べ)投資が増えないのは、経営陣と中間管理職の権限見直しが遅れ、情報化投資の効果が生産性向上に結び付かず、投資として無駄というトラウマを生んだ」構図に変化が出る必要があると分析されている。
4月は恒例化しつつある値上げラッシュの時期。2月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%上昇、3月東京都区部のコアCPIは-0.4%。欧米の+1.5~+2%攻防と比べ、依然、大きく出遅れている。日本企業が失って久しい「値上げできる」構図が戻るかどうかもカギとなろう。
ただし、ほぼ全員が挙げる「海外情勢の不透明」は昨日もマイナスに出た。ロシア・サンクトペテルブルク地下鉄爆発事件を契機に、欧州債券利回りが急低下、ドイツ10年物国債利回りは一時、1ヵ月前水準の0.275%。つれて、英、米国債に波及した。米10年物国債は2.3229%と下限と見られる2.3%水準に近付いた(余談だが、トランプ当選時1.8%を基準に、2.3%は2回の利上げを織り込んだ水準。3回目を見越すなら2.55%程度に上昇する必要がある。最近は2.6%強が壁になっているので、4回目は無いとの見方になっている)。いわゆるリスク回避、安全資産買いのパターンだが、米株、ドルは弱含みながら踏み止まった印象。
北朝鮮情勢緊迫、米中首脳会談見極め、米雇用統計、ブレグジット交渉決裂懸念、仏大統領選など見送り材料に事欠かない状況。国内要因は海外情勢に掻き消されるかも知れないが、4-6月は変化見極めの局面と位置付けられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/4号)
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