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東京五輪開催、建設・土木関係が潤うことで景気は確実に上向きへ (2013/9/12 株式会社フィスコ)

 2020年の夏季五輪の開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会がブエノスアイレスで開かれ、東京が選ばれた。1964年以来56年ぶりで、2回目の開催はアジアで初となる。

 今回の東京決定の決め手となったのは、最終日のプレゼンテーションといわれている。安倍首相が原発の汚染水問題に対して明確に回答したこと、走り幅跳びでパラリンピック3度出場の佐藤真海さんの体験談、クール・トーキョー・アンバサダーを務めた滝川クリステルさんによる国際オリンピック委員会(IOC)の公用語であるフランス語によるアピールなど。

 一時マドリードが優勢とも伝えられたが、結果は東京が勝つべくして勝った。今回のプレゼンテーションをプロデュースしたのが、英国人コンサルタントのニック・バーリー氏である。夏季五輪のプレゼン制作は2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロに続き3連勝となる。

 そのほか、予想以上の大差がついた理由はロビー活動にもある。国際オリンピック委員会(IOC)によると、竹田理事長は16年の招致活動に比べ、海外出張が倍近く増えたようだ。

 こういった中、今回の五輪招致費用は総額75億円といわれている。

招致経費は75億円(民間資金38億、東京都37億)と言われていますが、この金額をどう思いますか?(グラフ) パイプドビッツが運営する政治・選挙プラットフォーム「政治山」では9月3日から10日までの期間で、招致費用についてアンケートを行っている。アンケート内容は、『招致経費は75億円(民間資金38億、東京都37億)と言われていますが、この金額をどう思いますか?』であった。

 結果は「招致に成功したら安いものだ」が41.6%、「高額だが仕方がない」が12.9%となり、過半数は納得といった結果に。「招致の成否に関わらず、他に使った方がよい」が30.7%、「招致に失敗したらトップが責任を取るべき」が8.9%だった。

 「他に使った方がよい」の30.7%については、復興関連に使うべきとの回答と考えられる。これについては、安倍首相のIOCに向けたメッセージにもあるように、汚染水問題などを含め、7年間のリミットの元、本格的に進めていくことが考えられる。そのため、概ね今回の五輪招致については国民の理解を得ているとみてよいだろう。

 一方、3大会連続で挑んだマドリードは、市東部のメーンスタジアムはほぼ完成し、地下鉄の「五輪競技場」駅も開通していた。五輪の経済効果を約100億ユーロ(約1兆3200億円)と試算していたが、一転して経済危機が懸念されている。日本が落選していた場合は、75億円に対して批判も高まるだろうが、基本的には観光立国を目指すなか、カジノ法案成立を早めるなどして、アベノミクスを推進して忘れさせるであろう。

 ともあれ、五輪開催に伴う首都インフラ整備により、経済効果が期待されよう。東京五輪は、半径8キロ圏内で行えるというコンパクトさが売りであり、メーン会場以外では、国立代々木競技場を全面改修するほかは、既存の建物を耐震補強することなどで利用する。東京都の試算では、五輪開催による国内経済への波及効果は13年9月から20年9月までで約3兆円と試算している。国立競技場に約1300億円を投じるなど、施設の総工費は4500億円超を見込んでいる。

また、東京五輪は、既存の交通手段を利用する。しかし、前回1964年の東京五輪に向けたインフラは老朽化が進んでおり、インフラ整備は重要。観光客招致のため、羽田空港と成田空港を結ぶ新線などの鉄道インフラ、東京・お台場ゾーンでの商業施設やリゾート施設などの開発も増えることになりそうだ。

 東京五輪開催決定を受けた9日の東京市場では、首都圏のインフラ整備で恩恵を受けることが予想される建設を中心に、不動産、倉庫運輸、陸運など五輪関連とみられるセクターや銘柄が軒並み急騰。翌10日もその流れは続き、大成建設の売買高は2億株を超え、データがさかのぼれる1980年以降で最多となった。大成建のほか、大林組、鹿島、清水建設の大手ゼネコン4社の売買高は1980年代後半のバブル期を超えた。その流れは材料系の強い低位の建設株へ波及し、急騰というより“爆騰”といった言葉がふさわしい上昇をみせた。ご祝儀と見られてもおかしくない状況である。

 さすがに11日の東京市場では多くの五輪関連銘柄が利益確定の売りに押される展開となったが、当然の一服か。大震災の時もそうだったが、短期間で急騰するものの、その後の調整は比較的長い。入るタイミングが重要になりそうだが、7年間という長期タームであれば、トレードチャンスは相当多くなるとみられる。

 また、ITバブルの時は、キャバクラなどにIT関係者のほか金融関係の人たちが、ドンペリなどをジュースのように空けていた時代があった。現在は、スナックなどで建築関係の若い人たちが同様に活気付いている状況である。

 これは復興需要による影響が大きいが、加えて首都インフラ整備需要が発生することにより、建設・土木関係の企業へは追い風となる。建設・土木関係者が潤うことは、IT関係者が潤うよりも消費を上向かせる波及効果は大きくなるだろう。トヨタが当初CM用に製作したピンクのクラウンを市販車として売り出す。建設・土木関係者の需要を見込んでの戦略なのかもしれない。

(株式会社フィスコ)

株式会社フィスコ
株式会社フィスコは、投資支援サービス等を提供するプロフェッショナル集団です。2013年4月19日に、インターネットを使った選挙活動を解禁する公職選挙法の改正に伴う新たなコンテンツ提供を発表し、各政治家の発言要約や影響分析のコンテンツ提供を開始しており、その付加価値向上に取り組んでいます。
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