特集「参議院議員選挙2013」
「第11回政治山調査」から読み解くマーケット展望 (2013/8/1 株式会社フィスコ)
政治山が第23回参議院議員選挙(参院選)投票日に実施した「第11回政治山調査『参議院議員選挙とネット選挙に関する意識調査2』」では、有権者が考える争点が選挙前後で大きく変化し、選挙期間中に意識の変遷があったことが判明。また、「ネット選挙(インターネットを使った選挙運動)」に関する調査では、当初の想定よりも、有権者があまり活用しなかった可能性を示す結果が出ました。ここでは、投資支援サービスや情報を提供する株式会社フィスコが、この「第11回政治山調査」をもとに、参院選後の各マーケットの展望を分析します。
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半数近い有権者が景気対策を重視
「第11回政治山調査」の結果により、回答者の半数近い48.4%が「景気対策」を重視して投票していたことが分かった。参院選挙前に行われた第10回政治山調査の数字(52.9%)との比較ではやや低下したものの、有権者の関心が最も高い項目だったことは変わらなかった。今回の参院選で自民党は65議席を獲得し、参議院第1党の座を奪取したが、有権者は自民党の「景気対策」に最も大きな期待を寄せていたことが自民党の勝因となったと言えよう。
消費増税実施で景気対策の効果は相殺される?
政治山調査の結果では、「消費増税」が25.6%で4位にランクインしたことから、同政策も有力な判断材料の1つであったことが読み取れる。ただ、自民党の各候補者は選挙期間中、消費増税についてさほど多くを語らなかったイメージがある。
消費増税について、安倍首相は7月27日にフィリピン・マニラで行われた会見で、5%の消費税率を2014年4月に8%へ引き上げる方針について、「経済状況をしっかりと見極めながら判断していく必要がある」と説明し、「経済を成長させてデフレから脱却し、同時に財政再建を進めることを勘案して適切に判断する」と語った。
しかしながら、麻生財務相は7月23日に行われた閣議後の会見で、「消費税引き上げは国際公約に近い」との見方を示しており、「予定通り消費税率を引き上げなかった場合、大変な影響がある」と指摘している。財務官僚の思惑が見え隠れするが、安倍政権としては麻生財務相主導で2014年4月の「消費増税」を推し進める考えかもしれない。
ここで問題となるのは、自民党の景気対策に期待して1票を投じた有権者や、安倍政権が提示した「成長戦略」を評価した株式市場の反応である。将来的な財政再建の必要性は認めるとしても、増税によって景気回復や経済成長が実現される可能性はほとんどないとの見方が支配的である。
日本株や円相場にとって9月は一大転機となる可能性も
増税は株高を抑制する要因であることは否めない。1997年に消費税率は5%に引き 上げられたが、増税実施が決まった1996年6月を境に日経平均株価は下落に転じている。また、1997年の消費増税実施後に日本の名目GDPが縮小した事実は見逃せない。消費増税実施でデフレ脱却への道のりは険しくなり、安倍政権の支持率は大幅に低下するかもしれない。その結果、「アベノミクス」の成就は難しくなり、株安・円高が進行する可能性はある。2014年4月の消費増税実施の可否が決定する9月は、日本株と円相場にとって一大転機となる可能性がある。
日本株買いを仮定すると軸となるのはどこか
政治山調査の結果では、「景気対策」が1位となっていることで、有権者からの期待感が一番高いこの項目(成長戦略)を安倍政権は推し進めるとの公算が大きい。成長戦略の内容は期待外れ、といった見方も出ているが、それは、これまで成長戦略を打ち出しても、毎年のように首相が交代していたため実現に移すことができなかった影響がある。しかし、今回の安倍政権は長期安定政権が見込めることから、成長戦略の実現性の確率は相当高まったと考えられる。こうした背景を考慮するとやはり、成長戦略に関連した銘柄が物色の中心となろう。
初のネット選挙、有権者にはどのように映ったか
まず、ネット選挙解禁に当たって関連銘柄の動向を説明したい。今回はドワンゴを例に挙げるが、同社は7月5日に戻り高値をつけた後はじり安基調が続いた。皮肉ではあるが、参院選が公示された翌日に戻り高値をつけ、17日間の選挙戦では調整をみせていたことになる。その他の関連銘柄も軒並み調整が続く格好となった。
初のネット選挙解禁となったことで、政党や候補者は、フェイスブックやツイッターを利用し、情報を発信してネット選挙に対応した。ただ、投票率は52.6%で、戦後3番目の低さに留まった。選挙前から自民党優勢の情報がメディアで報じられており、関心が薄れたとの見方もある。与党と野党との活発な論戦などが繰り広げられれば、深夜のツイッターなどで盛り上がりがみられたかもしれない。また、フェイスブックやツイッターなどでの炎上を恐れてか、過度な書き込みが限られたことも、視聴者の選挙参加意欲を後退させた要因と思われる。
「今回の参院選において、インターネットをどういうふうに利用したか?」のアンケート結果では、「選挙に関することには利用しなかった」が6割を超えた。「投票の参考にする情報を閲覧した」が2割だった。「政党や候補者との交流」「SNSや掲示板への投稿」「政党のブログなどへの投稿」などは1~2%程度だった。自分が推す政党や候補者が選挙戦で拮抗となれば、これら1~2%の結果は大きく変わっていたかもしれない。
(株式会社フィスコ)
- 株式会社フィスコは、投資支援サービス等を提供するプロフェッショナル集団です。2013年4月19日に、インターネットを使った選挙活動を解禁する公職選挙法の改正に伴う新たなコンテンツ提供を発表し、各政治家の発言要約や影響分析のコンテンツ提供を開始しており、その付加価値向上に取り組んでいます。