【早大マニフェスト研究所連載/マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ】
第23回 今だからこそ、マニフェスト、政策で選ぶ選挙に~2014年師走総選挙に向けて~ (2014/12/2 早大マニフェスト研究所)
早稲田大学マニフェスト研究所によるコラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第23回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。今回は、「今だからこそ、マニフェスト、政策で選ぶ選挙に~2014年師走総選挙に向けて~」をお届けします。
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2日、衆議院議員選挙が公示されました。解散風が吹き始めて、20日間ほどでのバタバタの選挙戦です。今回の解散に大義があるか否かは、有権者の意見も分かれるところだと思います。しかし、解散したのですから、現在の日本の抱える課題について、選挙戦で議論を深めなければならないと思います。日本には待ったなしの課題が山積しています。
争点はアベノミクスだけではない
マニフェスト型の選挙を標榜する上で、まずは、政権与党自民党の前回選挙のマニフェスト(政権公約)が出来たか否か、経済政策である「アベノミクス」に限定せず、全体を評価することが重要です。できたこと、できなかったこと、約束なしに踏み込んでやったことなど、ここも有権者の評価は分かれるところだと思います。安倍首相は、争点は、増税先送りの是非、2017年からの消費税10%の是非、「アベノミクス」の成果と言っていますが、それだけを争点化してしまうと、その他の政策は「白紙委任」の状態になる危険性があります。それ以外にも争点として考えられるものは、増税先送りによる社会保障のあり方、地方の活性化を含む地方創生、集団的自衛権行使容認等の安全保障政策、原発再稼働等といくつもあります。
アベノミクスのシナリオを信頼できるかどうか
2年しか経過していない時点での「アベノミクス」の評価は、一般有権者にとって難しいと思います。第1の矢(大胆な金融政策)に関しては、金融緩和が株高、円安を導き、大企業の収益はアップしました。大企業の賃金アップの兆しもありますが、それが地方に広がり、消費が全体的に上向くといったシナリオ、いわゆる「トリクルダウン理論」が信頼できるかどうかだと思います。第2の矢(機動的な財政出動)に関しては、ばらまきにつながらないか否かというところ。また、第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)に関しては、自民党に岩盤規制を打ち破る覚悟があるのかどうなのか。実現の可能性の感じられる成長シナリオを描けているかどうか。有権者は慎重に見極めなければならないと思います。
マニフェスト型選挙から大きく後退
今回各党から出されたマニフェストを見ると、選挙を「お願い」から「約束」に変えることを目指したマニフェスト型選挙から、残念ながら大きく後退しています。各党とも、スローガン調で具体性に欠け、これでは、従前の破られて当たり前、事後評価のできない公約に逆戻りです。争点化したくない、自らを縛りたくない、党内調整が不調で踏み込みたくないなど、各党の思惑が見え隠れするマニフェストになっています。有権者にはマニフェストの裏を読み解く目が必要になります。
争点は政治家ではなく有権者が決めるもの
政策の具体性は乏しいですが、アベノミクスの評価、2017年以降の消費増税、原発再稼働、安全保障政策等、主要な争点での各党の立ち位置の違いは比較することができます。争点は政治家ではなく、有権者が決めるもの。関心のあるテーマでの各党の立ち位置を比較して投票することは可能だと思います。今だからこそ、マニフェスト、政策で選ぶ選挙にしていかなければならないと思います。投票日まで、各党、各立候補者による政策の論戦が盛り上がることを期待したいと思います。
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青森中央学院大学 経営法学部 専任講師
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員
佐藤 淳
1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業。三井住友銀行での12年間の銀行員生活後、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。現在、青森中央学院大学専任講師(政治学・行政学・社会福祉論)。早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員として、マニフェスト型の選挙、政治、行政経営の定着のため活動中。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
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