コロナ対策は「お座敷券」?しがらみ政治を断つ地域政党の可能性 (2020/5/13 湯河原町議会議員/地域政党ゆがわら党首 土屋由希子)
歴史ある温泉町で始まる、しがらみなき地域政党の挑戦
東京で20年間過ごし、地元である湯河原町にUターン移住した私がこの町議選に挑戦しようと思ったのは、東京にて「地域政党自由を守る会」の姿を目にしたことが大きかった。湯河原町は現在人口約2万5000人の昔から続く温泉町であり、観光立町である。高齢化率は50%に迫る勢いであり、少子化もここ十数年でジリジリと進んでいる田舎町だ。政治活動などを東京で経験していたこともあり、今後ずっと暮らしていくであろう湯河原の人口減少と少子高齢化という課題に、未来ある子ども達への責任として政治を変える必要があると立候補を決めた。
「地域政党ゆがわら」を立ち上げ選挙戦を繰り広げた結果、ダントツのトップ当選を果たすことができた。なぜこの選挙戦で地域政党という形にこだわったのか。「古い議会を新しく」「しがらみのない政治」「町全体の利益を考えた政治」という私の想いが、地域政党という形にピッタリ当てはまったからである。地方議会の抱える問題はどこも共通点が多いが、とりわけ湯河原のような小さな町はその課題が顕著に出ている。地縁、血縁、しがらみ選挙を脈々と受け継いでの議会は、健全な二元代表制を保っているとは言い難い。政策や理念やビジョンをしっかりと打ち立てた、本質を見据えた選挙をやろうと地域政党を立ち上げた。
地域政党の本領発揮は議会に行ってから
選挙で当選すればそれでおしまい、ではない。議会に行ってから、是々非々の立場でハッキリと自身の意見を言えるようになるためには、選挙のやり方からもう勝負が始まっている。 超少子高齢化の町で「子育て、教育支援」を高らかに叫んで当選させていただいた。「あなた(団体)の利益になりますよ」という甘い誘い文句は提示しない。してしまったら最後、しがらみ政治の波に飲まれるだけだ。だから組織票も持たない。一部には泡沫候補とも思われていたらしい。そこを補填するためにも国政政党に準じる発信力を持つ地域政党は強い力となった。
また、たとえ自分が一議席取ったとしても、しがらみだらけの議会では少数派になるであろうこと、議会いじめに遭うだろうことは予想していた。しかし地域政党という母体があれば、市民活動を同時並行で行い、常に市民と一緒に地方政治を考えることができる。たくさんの方が応援してくださった選挙戦も、終えて議会に行ってしまえばそこにいるのはたった一人である。地域政党という母体を持つことで、議会の内部をすぐに共有し、精神的な孤立化を避けることができるであろうと考えた。
緊急事態宣言下の「お座敷券」が賛成多数で可決
当選させていただき議会に入って「やはり」と感じたしがらみ政治、既得権益、忖度文化、すべて想定内ではあったが、ここまでとは思わなかった。当選して最初の臨時会が行われた4月9日は緊急事態宣言の2日後であったが、初の議案で上がってきた補正予算に含まれていたのは新型コロナウィルスの経済対策としての「宿泊予約キャンペーン」と「お座敷券(宴席で芸妓を呼べるプレミアム補助券)」というもの。完全に時期を間違えている。質疑と反対討論をさせていただいたが結果、町長派の2大会派の賛成多数で議決されてしまった。
一度進めてしまったものはどんなことがあっても撤回できない、思考停止の予定調和、町民の税金は無駄に消化されてしまう。「新人のくせに」「仲良くしないと意見が通らない」「昔からこうだ」といった同調圧力の強さたるやものすごい。とても健全な議会とは思えない。議会では少数派である私だが、これからジリジリと議会を変えていく算段をしている。
強力な武器は、発信力と市民参加力の高い地域政党だ。市民感覚とズレた政治を続けてきた地方議会をこの地域政党で変えていく。国政政党が掲げる政策や理念と、片田舎の湯河原町での地域課題には大きなズレが生じている。小さな田舎町の議会には、国政政党の理念や考えは要らない。地方自治体は国の下請けではないという考えの下、各地方自治体が、それぞれの地域の課題をそれぞれで解決しようとするには、地域政党ほど動きやすい母体はないのではないかと考える。課題が見えれば、その都度その課題にダイレクトに取り組むことができるフレキシブルさが地域政党にはある。
新型コロナウィルス感染症対策における地域政党の役割とは
今は新型コロナウィルスの課題に対して各地方自治体がそれぞれの取り組みを、知恵を絞って考えている。このような有事に、地方分権の力が試される。国の施策を待っていては遅い、地域主導でやれることをスピーディーにやるべきだ。地域政党が議会や行政に訴えて行くことはできることであろう。
幸か不幸か、こんな事態だからこそ政治への関心が高まっている。市民生活が危うい今、こんなにも政治が大切なのかと一人一人が意識するキッカケとなっている。地域政党は市民の生活に寄り添った位置でより細かなニーズを捉えることができると確信している。お座敷券などと言っている場合ではない、今は目の前の脅威と必死に戦わなければいけない現状だ。
今、私たちは未だ経験をしてこなかった事態に置かれている。一方向からのアクションではなく、多方面からの対策が必要であろう。形や体裁にとらわれた決まりごと政治ではなく、本当に市民のためになる政治をしなければ手遅れになる。こんな時に必要なのが、それぞれの地域の特徴と市民感覚と政治を繋げることであろう。それこそ、地域政党の在り方そのものだ。やり方次第では、市民のエンパワメントという贅沢な副産物もついてくるはずだ。未だかつてこんなにも地域主導の力が試される事態になったことはあるだろうか。今こそ地域政党の出番ではないだろうか。
湯河原町議会議員/地域政党ゆがわら党首 土屋由希子湯河原町出身、出産と育児を通じて政治を身近に感じる。子育て環境のため東京から地元へUターンした後も政治課題に取り組み、2020年3月の湯河原町議会議員選挙にてトップ当選を果たす。
土屋由希子氏プロフィールページ
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- 関連リンク
- 地域政党連絡協議会(地域政党サミット)