マニフェスト大賞で加速する「開かれた議会」―鷹栖町議会 (2021/8/5 鷹栖町議会)
地方自治体の議会・首長等や地域主権を支える市民等の優れた活動を募集し、表彰する「マニフェスト大賞」。今年で第16回を数える同大賞の応募が、7月1日から始まりました。過去の受賞者に、応募した取り組みの紹介や、受賞して感じたことなどを綴っていただきます。今回は、2020年(第15回)に優秀コミュニケーション戦略賞を受賞した鷹栖町議会です。
「開かれた議会」を目指して
鷹栖町議会では「開かれた議会」を目指し、議会の情報発信は議員自らの手で行うべきという考えを持ち、広報広聴活動を行っています。
以前は事務局主導で作っていた議会報をはじめとする議会の発行物について、住民の目線を意識し、見せ方や伝え方を議員主導で考え、実際の製作もDTPソフトを使いながら議員が行っています。
2020年のマニフェスト大賞では、その中の「中吊り広告風議会案内チラシ」と「一般質問の通信簿」の取り組みで優秀コミュニケーション戦略賞を受賞しました。
広報広聴活動を行う上で重視しているのは、住民の方に「興味を持ってもらう」「理解を深めてもらう」「参加してもらう」という3つの視点です。
「中吊り広告風議会案内チラシ」は「興味を持ってもらう」ための取り組みで、定例会の案内チラシを中吊り広告風にすることでインパクトのあるものを目指しました。
「理解を深めてもらう」ための取り組みとしては、今回受賞した取り組みではありませんが、「議会傍聴ガイドブック」を作成しました。
「一般質問の通信簿」は「参加してもらう」ための取り組み。各議員の一般質問を、聞き取りやすさやテーマ設定は適切だったかなど5つの項目について5段階で、傍聴者に評価してもらいます。
いずれも3期連続無投票だったことを受け、何とかしなければならないという思いからはじまった取り組みで効果を検証しながら継続しています。
早大マニフェスト研究所の佐藤淳氏による「政治山」内の記事でも、鷹栖町議会の取り組みについて詳しく紹介していただいていますので、ご参照ください。
■住民に興味をもって、理解を深めて、参加してもらう議会への挑戦
受賞後の展開
鷹栖町議会は早稲田大学マニフェスト研究所の議会改革度調査では常に下位、マニフェスト大賞というのもまるで無縁の世界の話という感覚でした。議会基本条例も作っておらず、議会中継も実現できていません。それでも「まずはできることを実践していこう」と一丸となり取り組んできました。
受賞という形でそれが評価されたことで自信を持つことができ、その後の活動につながっています。
●傍聴ガイドブックの作成
ちょうど授賞式の時期には「理解を深めてもらう」ための傍聴ガイドブックを編集中でした。
傍聴者の方に議場での過ごし方、議会のルールなどを説明するためのもので、Q&A形式にし、言葉遣いなども含め、わかりやすいものを目指しました。手にとってもらえるよう、ショウワノート株式会社の許可をもらい学習帳風の表紙を採用しています。
マニフェスト大賞受賞直後に完成したことで、こちらの取り組みも多くの方から注目していただきました。
●案内チラシのバリエーションを増やす
定例会の案内チラシは「中吊り広告風」受賞後、「少年マンガ雑誌風」「女性誌風」とバリエーションを増やしています。
同じパターンだと飽きられるからというだけでなく、議会ごとに異なる注目ポイントを、それにふさわしいアプローチの仕方で表現するためです。今後も1つのパターンにとらわれず、興味をもってもらえるような広報を目指します。
●ニコちゃんシール制度
「参加してもらう」ための取り組みとして、予算審査特別委員会でよい質問をした議員をシールで評価する取り組みを試行しました。新型コロナの影響で検証はできない結果でしたが、同様の取り組みは今後も検討していきます。
●議会広報コンクールで特選
議会報は案内チラシ以前から議員主導で住民目線の議会報を目指し製作していましたが、読みやすさやわかりやすさに主眼を置いているため、インパクト重視のチラシと比べると、地味な紙面です。
受賞を機にチラシのテイストを取り入れ、見出しのつけ方や写真の使い方などを従前より大胆にしました(議会報としてのバランスを考慮しながらなので、週刊誌風の紙面になっているわけではありません)。またページ下部にひとことコメントを入れる、過去の関連記事がわかるようにするなど、新しいアイデアの採用にも今まで以上に積極的になることができるようになりました。
常に紙面の改善を続けており、2021年2月に発行した議会報は第41回北海道町村議会広報コンクールで最高賞の特選に選ばれています。
マニフェスト大賞の醍醐味
マニフェスト大賞の醍醐味は取り組みが加速することだと感じています。
「まずはやってみよう」とは言うものの、前例のない取り組みもあり、町民の方の反応はどうなのか、ルール上問題がないのか、など手探り状態で進んでいました。
これがマニフェスト大賞に応募することで変わります。
まず申し込む際に、取り組みの紹介文を書きますが、このときに自分たちの取り組みの意義を再確認することになります。何のためにはじめた取り組みだったのか振り返りながら、それがどの程度達成できているか、課題は何かの認識もできます。文章をみんなで確認する作業を通し、取り組みについて前向きな意見交換にもつながり、活動の方針が明確で具体的なものになっていきます。
さらにマニフェスト大賞のプレゼンや記念誌用の原稿作りもあり、そのたびにこの作業を深めていくことになります。
マニフェスト大賞は他の素晴らしい取り組みを知る機会でもあります。2020年はオンラインでの開催でしたが、プレゼン研修大会は真似をしたくなるような事例の宝庫で、今後もどのような取り組みが発表されるのか注目して、取り入れられるものは取り入れていきたいと考えています。
マニフェスト大賞の注目度の高さも想像していた以上でした。
議会の案内チラシは受賞以前も多くの方に話題にしていただいていましたが、受賞後はさらに多くの取材やお問い合わせをいただきました。知ってもらえるというだけでなく、専門家や他自治体の議員など、いろいろな方と対談する機会にも恵まれました。
自分たちの取り組みのどこに注目していただいているのか、どんなことを期待されているのかが示されただけでなく、今後の指針となるヒントやアイデアなど多くの刺激を受けています。
進むべき方向が明確になることで、前述の議会報の紙面の改善など、他の取り組みにも波及効果が生まれており、鷹栖町議会ではかつてないほど新しい取り組みに挑戦しようという機運が高まっています。
マニフェスト大賞はどんな取り組みでも気軽に応募できますし、応募することで必然的に善政競争の輪の中に入ることになります。
私たちとしては、町内でチラシを手に取った方がクスっと笑ってくれれば成功、という程度に考えていた取り組みですが、議会改革の調査などを行う早稲田大学マニフェスト研究所からの案内でマニフェスト大賞のことを知り応募。他の議会の方からは「なぜ実現できたのか?」と興味を持っていただきました。
逆に私たちがどうやったらこれが実現できるのかと思うような取り組みでも、何かきっかけさえつかめば実現できるはず。そしてそのヒントを参加者のみなさんは惜しみなく披露してくれています。
マニフェスト大賞に応募することで、さまざまなアイデアに触れ、それを取り入れることで自分たちの取り組みをさらに磨き上げることもできますし、自分たちの取り組みをより練り上げてくれる方々に出会うこともあるかもしれません。わくわくするような可能性が拡がっています!皆さんも善政競争の輪の中に飛び込んでみませんか!?
■第16回マニフェスト大賞(応募は8月31日まで)
http://www.maniken.jp/manifestoawards/
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