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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第97回 議会改革「運動論」 (2014/8/6 福島県会津若松市議会議員 目黒章三郞氏/LM推進地議連会員)

政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第97回は、福島県会津若松市議会議員の目黒章三郎氏による「議会改革『運動論』」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 会津という地名は、民謡の「会津磐梯山」や1864年の戊辰戦争における「会津白虎隊」で、原発事故前は「福島県」より全国的に“有名”だった。この会津の中心都市が会津若松市であり、昨年のNHK大河ドラマ「八重の桜」の舞台にもなった。

 さて、会津若松市議会だが、早稲田大学マニフェスト研究所や日本経済新聞の議会改革度調査で毎回上位にランキングされる。こうして、議会改革が進むと視察に来られる議会が増えたり、あちこちから講師で呼ばれたりして全国に知り合いができ、各地の議会事情が分かってくる。

 私も、年間20回以上は視察に対応するが、最近の傾向は、市民対話集会の意見をどのように政策形成するのか、議員間の自由討議のやり方とその成果、予算決算審議をどう政策サイクル化しているのかなど、議会改革をどのように成果に結びつけていくか具体的課題を持って視察に来られる議会が目立ってきた。

 会津若松市議会基本条例作成は、検討委員会構成として議員のほかに市民委員と学識経験者が加わり論議した。そして「議会は多様な市民意見を背景とした議員が集まる合議体であること」、従って「よく市民意見を聴きながらそれを背景とした議員同士の議論が必要なこと」「出された結果については議決責任=自分の言葉での説明責任があること」などが集約され条文化された。

 この基本条例を有効に回す主要な3ツールは、(1)市民との意見交換会(問題発見の場=政策形成の起点)(2)広報広聴委員会(意見交換会の運営、問題の整理)(3)政策討論会(テーマの設定とその解決のための政策形成)である。この3つが機能しなければ成果に結びつくことは難しい。

 さらに、予算決算常任委員会化に向けて、決算と予算の政策サイクルを研究した。多くの先進議会(三重県、飯田市、茅ヶ崎市、多摩市など)を調査し、試行し、独自のものを作っていった。

 また、政策委員会がテーマごとに学識経験者を招き研究している。それは、地方分権という自立と自律が求められる時代、「市民との意見交換会」における意見を「問題発見の場」としテーマ設定することによって、住民の負託に応え住民自治の実現のために議会がその責任と役割を発揮するためである。

 東京都議会のヤジ問題、兵庫県議会における政務調査費の不正問題など、残念だがこういう体質の議会は、まだ1700余ある地方議会の半分以上あるのではと推定される。

 どこの議会にも、従来の「悪弊」を何とかしなくてはという問題意識を持った議員はいると思うが、「孤高の人」になってはいけないと強く思う。議会運営はその議会の慣習というのが多いので、そこの「長老議員」が言っても絶対ではない。その都度、関係法や議会規則を勉強し(時によっては、全国議長会事務局に問い合せ)理論武装しながら、他会派も含め“同憂の士”を固めることだと思う。決して自分一人ではない。

 「運動」がうまくいくか否かは、2割(先進層):6割(中間層):2割(無関心層)と色分けすると、6割の中間層をどちらの2割が引っ張るかで決まる、というのが私の考える運動論だ。先進層のベクトルを合わせ固め、あとは中間層をどう取り込むかの“仕掛け方”だ。この論を活用した東村山市や那覇市など、改革が進んだ議会がいくつか出てきた。結果として、議会改革度ランキングでも大きく躍進した。

 最後に少し余談を。議会の招集権は首長にあるが、執行部が議場にいるのは“説明員”としてである。それなのに、議長、副議長選挙や、臨時会で提案とは直接関係ない部局の長も全員議場に参集する議会が多いのには驚く。議員と執行部側が全員そろうのが議会、という固定観念があるからだろう。説明の必要のない当局者を“はべら”しておくのと同じで、税金の無駄遣いの最たるものであろう(議会改革度ランキング調査では、こういう初歩的なことも調査の時に聞いて、啓発する必要があるのではと思う)。

 またある議会では、議長選挙の時に所信を書いたペーパーを配布しようとしたら、そんな前例はなく、配布したら「怪文書」扱いにするとされ、断念したところもあったと聞く。怪文書というのは、出所不明の特定の相手攻撃が目的であって、用語として正しくない。また、日本国憲法で保障されている「表現の自由」は当然の権利である。その議会の前例は、日本国憲法の上位法とでもいうのだろうか。

 少し考えれば、おかしいことがまかり通っている日本の地方議会の現状もある。「地方自治は民主主義の学校」ということだが、この実現のため、われわれ地方議員の役割は大きい。議会改革で知り合った、全国の多くの気づき始めた仲間とこれからも頑張っていきたい。

目黒章三郎氏著者プロフィール
目黒 章三郎(めぐろ しょうざぶろう)
昭和27(1952)年7月28日生まれ 法政大学(法)中退。地域おこし運動や環境問題をライフワークとする。再生可能エネルギー(小水力発電・バイオマス)の事業化が目下の課題。
平成7年4月会津若松市議会議員初当選。その後、文教厚生委員会委員長、総務委員会委員長。平成23年8月~25年8月まで議長を務める。
議員力検定1級
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