【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第95回 “脱法ドラッグ”1日も早い対策強化を~危険薬物を撲滅する取り組み (2014/7/23 神奈川県議会議員 中谷一馬氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第95回は、神奈川県議会議員の中谷一馬氏による「第94回 “脱法ドラッグ”1日も早い対策強化を~危険薬物を撲滅する取り組みについて~」をお届けします。
※編集部注:警察庁と厚生労働省は22日、「脱法ドラッグ」の呼称を「危険ドラッグ」と改めましたが、文中では「脱法ドラッグ」と記載いたします。
“薬物ゼロ”知事宣言の翌日の事件
規制対象の違法成分を含むドラッグを2014年6月26日に所持していた疑いで、辞職した元神奈川県議会議員が7月16日に逮捕されたという報道がありました。この事件の前々日、6月24日には東京・池袋で発生した脱法ドラッグと呼ばれていた「脱法ドラッグ」に関連した車の暴走事件が発生して1人の方が亡くなり、7人の方が重軽傷を負った交通事故がありました。
この事故も踏まえ翌6月25日の神奈川県議会本会議にて、私が行った「違法薬物や脱法ドラッグ等の薬物乱用を撲滅する取り組みについて」の質問に対して、知事からは次のように答弁がありました。
「不正な薬物は許さない。不正薬物の侵入は許さない。『薬物クリーンかながわ』を実現する。『薬物ゼロ』を目指して、国や関係団体とも連携を図りながら、総合的に対策を進めていく。県民総ぐるみでやっていきたいと思う次第です」
知事ご自身から決意表明がなされ、ここから本腰を入れて違法薬物や脱法ドラッグ等の薬物乱用を撲滅する取り組みを進めていこうとしていた矢先に元神奈川県議のこの事件が発生しました。
事件については、私自身も報道等でしか情報を把握できておりませんので、論評を差し控えますが、辞職したとはいえ、住民代表である議員が逮捕されることは、とても残念なことですし、同じ議員として非常に哀しい思いです。薬物乱用は、単に乱用者の身体、生命に危害を及ぼすのみならず、青少年の健全な育成を阻み、家庭を崩壊させ、社会の秩序を乱す等計り知れない影響を及ぼすことから、今後も徹底的な撲滅に向けた対策が必要です。
後輩が他界した経験からライフワークとしての脱法ドラッグ等危険薬物対策
危険薬物の撲滅については、私のライフワークとも言える問題と捉えています。
私事で恐縮ではございますが、実は私の中学時代からの友人であった後輩が脱法ドラッグ関連の事故で他界しました。私自身こうした事故を受けて、私たち法に携わる人間がもっと早い段階でこの問題を認識し、対策を講じることができれば、事故を未然に防けたのではないかと自問自答を繰り返しました。
だからこそ社会統治システムの遅れによるこれ以上の事故は絶対に防いでいかなければならないと考えております。こうした状況から私も、2012年6月から約2年間、議会にてこの脱法ドラッグを中心とした薬物の問題について取り上げ、本県としても、国による新たな規制を待つだけではなく、実効性ある脱法ドラッグ防止対策を推進するため、知事指定薬物の所持や使用の罰則規定を伴う脱法ドラッグの規制条例を制定すべきであると、条例化による防止策なども提案してきました。
ですが、インターネットなどで「覚醒剤」や「脱法ハーブ」など薬物関係の単語を検索すると、いまだに全国各地で事件が起こっている状況がうかがえます。例えば、2014年5月には、埼玉県や神奈川県に住む10代の少年3人が、脱法ハーブ欲しさに空き巣を繰り返したとして逮捕された事案が発生しています。
さらに、先の事故のように脱法ドラッグを使用したことに起因する交通事故も重大な社会問題となっております。このように使用者本人の健康被害にとどまらず、他人に被害を与える事例はあってはならないものであり、絶対に許されません。
イタチゴッコの対策 国民総ぐるみの問題に
2013年、国が第4次薬物乱用防止5カ年戦略を策定した際、特に留意すべき課題として、脱法ドラッグ等の新たな薬物や覚醒剤乱用者の高い再犯率が挙げられました。こうした状況から、厚生労働省は薬事法を改正し、成分構造が似た化学物質をまとめて規制する「包括指定」を導入しました。この包括指定により、薬事法で製造や販売を禁止する「指定薬物」は、約90種だったものが、2014年4月には1370種に増加し、これまで成分構成をわずかに変えて摘発を逃れてきた脱法ドラッグも処罰の対象となりました。
このことにより、包括指定前に神奈川県内に30店舗あった販売店は、2014年4月には13店舗へ減少し、徐々に効果を上げています。しかし、その規制すらもかいくぐる商品が次々と生み出され、取引が実店舗からインターネット上に移って、世間の目につきにくくなるなど、まさにイタチゴッコの状態が続いております。
こうした現状を改善するためには、法改正による対象薬物の拡大、警察における摘発の強化が最も効果的であると考えます。ですが、それだけではなく、こうした違法薬物や脱法ドラッグの問題を「県民総ぐるみの問題」と捉え、神奈川県においても、部局横断的に対策に取り組むことが重要であります。
教育現場における薬物乱用に関する児童生徒への指導や、保護者を含めた県民全体への啓発活動が必要ですし、保健福祉局を中心とした、県内の販売店舗への立入検査の強化も必要です。
また、薬物依存症患者を立ち直らせ、再乱用を防止するための医療・救護体制の確立なども重要な課題です。違法薬物や脱法ドラッグ等の周辺に蔓延する問題を、根本から解決するための施策を講じるべきと考えます。
こうした薬物問題に対し、本県でも、庁内はもとより国や市町村そして保護司会や薬剤師会などの関係団体をメンバーとする神奈川県薬物乱用対策推進本部を組織し、総合的に対策を講じておりました。特に脱法ドラッグに対しては、県警察や地方厚生局麻薬取締部と連携を図り、販売店に対する指導を強めておりました。販売店から品物を買い上げ、検査で違法成分が検出された場合には、連携して、店舗関係者の検挙に繋げ、違法な販売店の減少に努めております。
また、啓発活動については、行政と民間が一体となって組織する「薬物クリーンかながわ推進会議」が中核となり、県内のさまざまなところで街頭キャンペーンを展開するほか、各種広報媒体やツイッターを活用した情報発信を行っています。さらに、教育委員会と連携を図り、児童生徒に対する指導用教材の充実を図るとともに、薬物乱用防止教室を県内97%の公立中学・高校で開催しております。薬物乱用者への対策として、薬物依存の専門病院である「せりがや病院」での治療や家族への相談対応などのほか、精神保健福祉センターが相談員の資質向上のための研修を実施しています。
このように薬物乱用防止対策を、関係者と連携して総合的に行っている中での今回の事件でしたので非常に残念な思いです。
厚生労働省も今回の事件を受けてようやく、脱法ドラッグに健康被害を引き起こす成分が含まれていると疑われる場合は業者に販売の停止を命じるなど、対策を強化していくことになりました。薬事法に基づいて、脱法ドラッグに幻覚などの健康被害を引き起こす成分が含まれていると疑われる場合は、業者に商品を検査させるとともに検査結果が出るまでの間は販売の停止を命じるなど対策を強化していくこととし、業者が検査に応じなかった場合は50万円以下の罰金が科せられ、販売停止の命令に従わなかった場合は、1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が科せられるという方向性のものです。
薬物乱用問題は、本人にとどまらず、家庭崩壊や現在も頻発している脱法ドラッグの利用による暴走運転事故など、社会の秩序を大きく乱し、住民を危険な目に陥れる行為は、絶対に許されることではありません。
私も、一日でも早く脱法ドラッグによる事件事故がなくなるように、今後も引き続き対策に取り組んで参りたいと思います。
- 著者プロフィール
中谷一馬(なかたに・かずま) 神奈川議会議員 民主党 神奈川七区(横浜市港北区・都筑区)総支部長代行
1983年8月30日生まれ。母子家庭で育つ。厳しい経済環境で育ったことから、自立に焦り、中学卒業後高校には進学せず社会に出るがうまくいかず、同じような思いを持った仲間たちとグループを形成し代表格となる。しかし「何か違う」と高校に復学し、卒業後、呉竹鍼灸柔整専門学校を経て、慶應義塾大学に進学。その後、企業経営などを経て、政界進出を決意。2011年統一地方選挙にて27歳で初当選し、神奈川県議会での史上最年少議員となる。その後、World Economic Forum(通称:ダボス会議)のGlobal Shapers2011に地方議員として史上初選出され20代の日本代表メンバーとして活動。また2012年には第7回マニフェスト大賞にてその年に一番優れた政策を提言した議員に贈られる最優秀政策提言賞を受賞。さらに、民主党内では地方議員初の民主党本部役員である青年委員会の副委員長(民主党本部 最年少役員)務めるなど、多方面で活動中。
HP:中谷一馬 オフィシャルウェブサイト
ブログ:中谷一馬オフィシャルブログ「おもしろき こともなき世を おもしろく」
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