【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第82回 公共施設の維持・管理・更新。みなさんの街は今後どうしていきますか? (2014/4/16 越谷市議会議員 菊地貴光氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第82回は、埼玉県越谷市議会議員の菊地貴光氏による「公共施設の維持・管理・更新。みなさんの街は今後どうしていきますか?」をお届けします。
◇ ◇ ◇
越谷市について
埼玉県越谷市。人口は33万人を超え、県内東部では最大の都市です。しかし、しっかりとしたイメージがないためか、「越谷って小江戸だよね」(それは川越です)、「暑いところだよね」(熊谷と勘違い?でも熊谷並みに暑いのは確かです)、と混同されているようです。このためイメージアップを目指して越谷ナンバーが導入されることになりました。
越谷は東京から20~30キロメートルに位置しているベッドタウンですが、古くは日光街道の3番目の宿場町でした。その面影は中心市街地に若干残る程度ですが、徳川家康が好んで鷹狩りをしに来ており、市内の寺院には今でも家康ゆかりの品が残されています。また鷹狩りの際の宿泊施設として、当時は御殿もありました。残念ながらその建物は江戸城本丸が明暦の大火で焼け落ちた際に江戸城内に移築されて現存しませんが、現在そういった歴史にスポットを当てて街を見直そうという運動が起こっています。
その公共施設について
さて、越谷市の公共施設の現状です。
公共施設の維持・管理・更新はどこの自治体でも既に問題視されていますが、私はこれまで、2010年9月議会で東京都調布市を調査した結果を元に「公共建築物の維持管理について」と題して、主にライフサイクルコストの観点から議会で取り上げたのを皮切りに、毎年公共施設の老朽化や耐震化について質問をしてきました。今回はその中でも、2013年3議会、また6月議会で具体的な数字を明らかにした内容について記したいと思います。
もともと公表されている数字もありますが、改めて議会で明らかにしたのは、
・公共施設の総床面積 約57万平方メートル
・このうち築30年以上の施設の総床面積 約28万8000平方メートル
・全体に占める築30年以上の総床面積の比率 約50.5%
仮に、築30年以上の施設の更新を「同じ場所に・同じ機能で・同じ大きさで」したとします。これに要する費用はいくらとなるでしょうか? 以前、公共施設マネジメント白書の調査に行った神奈川県藤沢市が更新費用の積算根拠にしている1平方メートルあたり35万円という数字を、築30年以上の施設の総床面積の約28万8000平方メートルにかけると約1008億円という数字になります。もちろんあくまでも理論的な金額ですが、市はこのような試算もしていません。
さらに、東京近郊のベッドタウンとして昭和40年代から50年代にかけて急激に人口が増加する過程で、児童・生徒数が急増したことにより毎年のように小中学校を整備してきましたが、こちらも議会で明らかにした数字は、
・学校施設の総床面積 約32万2000平方メートル
・このうち築30年以上の学校施設の総床面積
校舎 約19万1000平方メートル
屋内運動場 約2万8000平方メートル
計 約21万9000平方メートル
・全体に占める築30年以上の総床面積の比率 約68.0%
文部科学省の調査によると全国の中核市・特例市の平均が60~62%であるので、この約68%という数字は そのどちらよりも高い数値となっています。さらにいえば、築30年以上の公共施設の約76%は学校施設であり、越谷市における公共施設の老朽化対策とは、そのまま学校施設の老朽化対策といえます。
ではこの現状に対して市・市教育委員会の取り組みはどうなっているでしょうか?
これも私の提案によりますが、現在市では2013年度・2014年度の2カ年で公共施設マネジメント白書作成に取り掛かっています。その完成が待たれますが、今後の対応はその白書の作成が終わった後に行うとしています。教育委員会としても、老朽化が進みつつある市の施設の約76%を学校施設が占めているにも関わらず、あくまでも白書完成の後に市と一緒に考える、という姿勢です。白書作成と同時並行で考えるべきではないか?と私は思います。
私が考えること
今後ますます進展していく少子化社会や超高齢社会への対応をどのようにしていくのかという大きな問題があります(ちなみに2012年、越谷市は超高齢社会に突入しました。議場でこのことを言及したのも私が初めてです)。
その中で限られた財源を使ってどのように施設を整備するか、維持・管理をどうするか、更新をどうするか。それを考える際には移転や統廃合、また複合化ということを考えなければなりませんし、それには地域住民の理解が必要になるなど問題・課題は複雑かつ多岐にわたります。
結局のところは、議会・議員や行政が積極的に市民へ情報を発信して問題意識の共有を図り、その上で市民同士が話し合い「どのような形が自分たち、また次の世代にとっては良いのか?」を市民が自ら考えて、そして市民が決めるほかはないのだと思います。このことをきっかけとして「自ら感じ、自ら動く市民」を少しずつ増やしていければ、と思っています。
みなさんの街はどうですか?
- 著者プロフィール
- 菊地 貴光(きくち たかみつ):1971年4月生まれ。42歳。山梨学院大学商学部卒業。石油会社勤務ののち、衆議院議員秘書。2007年4月初当選。現在2期目。「みんなで考え、みんなで決めて、みんなで動き、みんなで責任を負う」政治を目指している。
HP:越谷市議会議員 きくち貴光オフィシャルサイト
blog:きくち貴光活動報告
twitter:越谷市議会議員 菊地貴光
Facebook:菊地貴光
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