【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第81回 「良いところ取り」で進化する滝沢市議会 (2014/4/9 滝沢市議会議員 高橋盛佳氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第81回は、岩手県滝沢市議会議員の高橋盛佳氏による「『良いところ取り』で進化する滝沢市議会」をお届けします。
◇ ◇ ◇
「人口日本一の村」から滝沢市へ
滝沢市は、岩手県の県庁所在地盛岡市の西側に隣接する。農耕馬を大切にする伝統行事「チャグチャグ馬コの里」としても知られている。70年代から盛岡市のベットタウンとして人口が急増し、5万5千を超す「人口日本一の村」(2013年12月31日まで)として知られてきたが、住民サービスの向上を目ざし、本年(2014年)1月1日に「滝沢市」に市制移行したばかりである。
村時代の改革
滝沢村議会時代には、(1)2000年3月の「一般質問の一問一答」採用(質問、答弁合わせ60分)、(2)2009年11月に議会に対する関心度・評価・改革・定数・報酬・政務調査費など全23項目の住民アンケートを実施、(3) 同年12月定例会よりボタン表決システムを導入、(4) 同じく12月定例会より議場内に液晶ディスプレイを2台設置し、議員、傍聴者に賛否態度や質問の残り時間明示と質問通告の配布、(5)2010年1月臨時会よりインターネット中継を開始、(6)2011年改選から議員定数22人を20人に削減、政務調査費を月2万円を1万5千円に減額、(7)「新成人議会」を同年から3年実施、(8)議長選挙における意思表明と質問制の採用、など一定の議会改革をしてきた。また、村としても2009年に『住民投票条例』を制定済みである。
フル装備の議会基本条例制定
市制移行と並行して、2013年12月議会では「滝沢市議会基本条例」が、また、2014年1月には、行政の側から「人口日本一の村(量)から住民自治日本一の市(質)」を目指し「滝沢市自治会基本条例」が提案され制定された。
福島県会津若松市、長野県飯田市、宮城県東松島市や北海道芽室町などの先進議会に学ぶとともに、江藤俊昭教授(山梨学院大学)のご指導をいただき『良いところ取り』のフル装備の条例となった。
(1)市民議会、議会報告会、市民懇談会や政策討論会の実施、(2)行政の反問権、(3)議会サポーターからアドバイザーの採用、(4)9月の2013年度決算審査と議会報告会等で集約された市民の声を基に、次年度予算編成への提言、要望に反映させる政策評価を含む政策のPDAC化、(5)予算決算と公聴広報の常任委員化、(6)災害に対する議会独自の対策導入のほか、(7)「タブレット端末機」の議場持ち込みを想定したIT化条項も盛り込んである。
公聴広報常任委と予決常任委に期待
(1)条例に先立ち『公聴広報常任委員会』が8月に設置された。早速、10月に開催した「議会報告会」で住民から出された質問、要望等を、3常任委員会別に振り分け、どのように対処すべきか審議できるように資料を整理してくれた。これによって報告会で出された要望、課題が、議会全体の課題として受け止めることができるようになり、事案ごとに後日、各地区や住民に議会から報告が届けられた。同時に、住民の多くが、「報告」より、まず自分たちの声を聴いてほしいという気持ちが強いことが分かった。会派視察で芽室町を訪問した折、「議会報告会並びに意見交換会」という名称にしていることを知り、「さすが!」と感心した次第であった。今後、「開かれた議会」「市民とともに歩む議会」「行動する議会」を目指すには、名称1つでも、議会目線や上目線にならぬよう、市民目線、参加者の立場に立った感性が必要ではないかと思う。
(2) 予算、決算審査は『特別委員会』ではなく『予算決算常任委員会』で行う方式に改め、3つの
専門委員会に振り分けて予算審査を行った後、予算決算常任委員会で委員長報告とそれへの質疑、総括質疑と必要に応じて議員間の自由討議、そして賛成反対討論と議決を行う方式に改められた。
今回の3月議会では、専門委員会ごとに質問点の事前通告と記録(委員長報告用の要点メモ)を委員が分担し、記録様式も専門委員会ごとに作成するが、後日よい点を採用し統一した様式にするという合意ができた。また、この記録の総括質疑前配布が実現したことで、いつでも市民に広報できる体制も整い、これまでとは格段に違って、分かりやすい集中した予算決算審査ができ画期的改革となった。
もっと傍聴者を増やす努力を
初当選以来、私は議会開会に先立ち毎回、自分の居住域だけではあるが、一般質問の傍聴案内となる『葉書・議会便り』を印刷して個別配布している。この成果は大きく、私が議員になる前はほとんど一ケタ台だった傍聴者が、私の地域だけでも平均15人を超えるようになり、それが刺激したのか、次第に増え始めてきた。数年前からは、市内にある看護短大や県立大学では、授業の一環として学生がまとまって傍聴に来ることもあって、傍聴者は年間300人台になっている。インターネット配信も結構だが、多くの市民が直接傍聴席に座っている事は、議員のみならず、市長以下の幹部職員にも、市民から厳しい評価が下されるだけに、普段にはない緊張感を与え好ましい状態をつくっているように思う。
議員一人ひとりが、まずは支持者に声をかけるだけで、議員自身も議会も行政も、少しずつだが変わっていくことを確信して実践してみてはどうだろうか。
- 著者プロフィール
- 高橋 盛佳(たかはし もりよし):岩手県滝沢市議会議員。1943年生まれ。早大第2政治学科卒、02年、県立高校教諭を退職し県議補選、翌年本選に立候補し落選。会社勤務、私立高校講師経て07年村議初当選。村議2期中、2014年1月1日市制移行により市議1期目。2002年、地域の退職者等高齢者を中心に「上の山そば会」を結成し会長に就任。11年から「滝沢手打ちそば道場」(そば屋兼業)を主宰し、そば打ち修行とともに地産地消とそばによる絆づくりに取り組み、正会員90人、試食会員600人を擁する地域活動を展開中。ローカルマニフェスト地方議員連盟会員。「三陸の海を放射能から守る岩手の会」会員
Facebook:高橋盛佳
- LM推進地議連の連載コラム
- 第80回 <緊急寄稿>全国初、通年議会の廃止へ(長崎県議会議員 松島完氏)
- 第79回 議員定数問題にどう取り組んだか(下)(千葉県流山市議会議員 酒井睦夫氏)
- 第78回 逗子市議会が導入した「クラウド文書共有システム」について(神奈川県逗子市議会議員 君島雄一郎氏)
- ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM推進地議連)連載コラム一覧