【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第70回 「区民に寄り添う・区民起点」が議会改革の原点 (2014/1/29 墨田区議会議員 加納進氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第70回は、東京都墨田区議会議員の加納進氏による「『区民に寄り添う・区民起点』が議会改革の原点」をお届けします。
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東京スカイツリー(R)開業で知名度アップの墨田区
私が暮らす墨田区は人口25万。東京の城東地域、下町に位置し、中小零細企業の集積するモノづくりの町として今日まで歩んできました。隅田川を挟み対岸の台東区は、浅草、上野を抱え、国内有数の観光地ですが、墨田区は歴史と文化の息づく街でありながら、存在感のあまりない都市であったといえます。それが、2012年5月の東京スカイツリー(R)開業によって一変いたしました。国際観光都市を目指しさまざまな取り組みを行ってきましたが、東京スカイツリー(R)周辺に観光客があまり流れず、地域経済の活性化につながっていないとの評価もあり課題は山積しています。一方で緩やかながらも人口が増え続け、また、新規開業を希望する若者が流入するなど明るい材料もあります。今後は、観光資源の掘り起こしと回遊性の向上、商店街の活性化に向けた施策の充実など、着実な取り組みが求められます。
忘れえぬ出会い
中小企業のサラリーマンとして22年間勤務したあと、平成15年に初当選いたしましたが、議会運営について当初からなんとなく違和感を覚えていました。営業として、常に結果を求められる世界にいましたので、議会だけではなく行政も含め、スピード感のなさと事業の成果を評価する仕組みが確立されていないことへのいらだちを感じる日常が続きました。しかし、先輩議員諸氏と対話する中で、同じ思いを多くの議員が持っていることも知りました。したがって、早くから、議会改革に取り組む全国の自治体の事例を研究し、墨田区においても議会改革の必要性を感じていましたが、本題に入る前に、忘れられない出会いを紹介したいと思います。
ひとつは、軽い障がいを持ちながらも一般企業で働き続けているあるご婦人との出会いです。ある時お話を伺うと、数カ月前に会社をリストラされ求職中とのこと。リストラされた理由は、「とろいから」だったそうです。言うまでもなくそのようなことで、解雇を正当化することはできません。その後すぐに再就職が決まりご本人も納得されましたが、社会に出て働こうと意欲を持ち前向きに考える障がい者にとって、いかに現実の社会が厳しいかを目の当たりにしました。このことがきっかけで、時間はかかりましたが、障がい者就労支援センターを開設し、さらに現在では職業訓練や就労後のフォローも行う障がい者就労支援総合支援センターの開設へとつながりました。障がい者の就労支援の取り組みを一歩前進させることができたと思っております。
もうひとつは、待機児の問題に係わってお会いしたあるご婦人との出会いです。学生結婚した若夫婦で収入も少ない。就職してまだ間がない。しかも通勤時間がご夫婦とも1時間以上でほぼ毎日残業という、厳しい条件にもかかわらず、認可保育所に入れなかった悔しさを、時に涙を浮かべながら切々と訴えられました。入所基準をあまり勉強していなかったことを反省しましたが、結果としてそのご夫婦は、1年間保育料の高い、しかも自宅から離れた認証保育所にお子さんを預けざるを得ないこととなってしまいました。
基礎的自治体議会はニッチ産業
この2つの体験を通し、私たち議員は、立ち位置を区民側におかなければならない、区民に寄り添う議員でなければならないと強く感じました。私たちは毎日大勢の方とお会いします。さまざまな問題について、意見交換もしますし、要望も伺います。個人的な相談も受けますし、切実な悩みを伺うこともあります。ときに利己的なわがままな要望もありますが、そうした声も含め、多くの情報から課題を抽出し優先順位を決め課題解決に結び付けるまで、執念を持って取り組むことの重要性を感じています。
既存の法令や制度で解決できることであれば問題はありませんが、逆に言えば、行政側は、既存の法令や制度になければなかなかやろうとしない、ということでもあります。財源の厳しさを理由に、国や都からの負担金、補助金が見込まれない事業の実現に大変なエネルギーを要することは、多くの議員が経験していることだと思います。立ち位置を区民側に置くことで、法令や制度にない隙間で悩む方がいる現実が見えてきますし、悩むのは区民ではなく、私たち議員であり行政であると考えます。そういう意味で、地方議会・議員は、既存の制度の谷間を見つけ解決するニッチ産業でなければならないと思います。
墨田区議会の現状と課題
以上申し上げた点を踏まえ、議会内において議会改革の必要性を早くから訴えてまいりましたが、これまで大きな前進は残念ながらありません。2007年には議会のあり方検討会を立ち上げることができ、1年間議論しましたが、目を見張る成果は得られませんでした。それでも、インターネット中継の拡大などが進み「開かれた議会」という点で、意識統一がされてきていますし、議員提案の政策条例を制定しようと勉強も始めています。
現在、周回遅れと言われるかもしれませんが、改めて昨年議会改革検討会を立ち上げ、議論を進めています。議会基本条例を作らずともできることから始めようと、請願・陳情を提出された方々から意見を聞く機会を設けることとしましたし、議会報告会についても他の自治体を見学するなど導入に向け前向きに議論を進めています。今後は、二元代表制の趣旨を踏まえ、議決機関としての機能、監視機関としての機能、政策立案機能など、議会の権能強化について詳細な議論を行う予定です。区民側に立ち、成果を出すことのできる議会とはどうあるべきかを常に念頭に置き、議論を進めてまいります。ともすれば、議会は会派や個々の議員のパフォーマンスの場となりやすい側面があります。ねたみや足の引っ張り合いで、改革に不必要な時間をこれ以上かけないよう議論をリードする決意です。
現在は、非公開の検討会なので事前の勉強をしないで臨む議員もいて建設的な議論が進まない現状があります。近いうちに特別委員会または正式な会議として再編し、改革の過程そのものを区民に開かれた場で行うべきと考えていますが、せっかちな性格が災いしないよう、腰を据え取り組んでまいります。
- 著者プロフィール
- 加納 進(かのう すすむ):1958年11月10日、墨田区向島生まれ。創価大法学部卒 金属製品製造業勤務後2003年初当選(公明党) 現在3期目。福祉保健委員長等歴任。現在、墨田区議会副議長。
HP:墨田区議会議員 かのう進のホームページ
facebook:加納 進
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