第63回 周回遅れでも、走り続けること、諦めないこと  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第63回 周回遅れでも、走り続けること、諦めないこと (2013/12/4 東村山市議会議員 佐藤真和氏/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第63回は、東京都東村山市議会議員の佐藤真和氏による『周回遅れでも、走り続けること、諦めないこと』をお届けします。

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緑と人権のまち・東村山

東村山市議会議員 佐藤真和氏

東村山市議会議員 佐藤真和氏

 私たちが暮らす東村山市は、17平方キロという小さな市域の中に15万3千弱の市民が暮らす住宅都市。「あ~志村けんさんの…」と全国どこへ出かけても笑顔で迎えていただけるのは嬉しい限りですが、都心から一番い近い丘陵地・狭山丘陵の玄関口「八国山」や、花菖蒲が広がる「北山公園」、そしてこれからは、国立ハンセン病療養所「多磨全生園」が所在する自治体、と覚えていただければありがたいです。

 「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が施行された2009年に開設100年を迎えた全生園では、入所者の方たちが主体となり、行政や住民、議会もともに参加する形で療養所の将来を描く「人権の森構想」が進められています。 全生園は市内外の小中学生にとって大切な学びの場となっており、昨年度には園内の一角に認可保育所も開設され、入所者の方たちの悲願であった子どもたちの声が響き始めました。ぜひ機会を見つけて「国立ハンセン病資料館」を訪ねるとともに、園内を歩いてみていただければと思います。(人権の森HP http://jinkennomori.com/

行政も議会も市民も大事なのは、当事者意識

 そんな東村山市に私が移り住み、市議会に飛び込んだのは2003(平成15)年春のこと。認可保育所でありながら、庭もない、ホールも廊下もない、しかも個人経営…という前代未聞の計画に対して異議を唱えた方たちから、子どもの現場で長く働き、親としても保育園や学童クラブに関わっていた私に突然声がかかり、考えるひまもなく選挙戦に突入。政党や組織とは無縁の全くの手づくり選挙で突っ走り、当選。

 その保育所は紆余(うよ)曲折の末に開設されましたが、待機児童解消と保育の質の確保・向上という相いれぬ課題は、10年経った今、各地で一層顕在化しています。

 同時にこの問題では、認可と指導権限を持つ東京都に対して、保育の実施主体である市の主体性が大いに問われることともなりました。

 その後も、都営住宅跡地の桜並木伐採、都道沿いの高さ制限規制の変更、自殺を防ぐ取り組み等で、「主体は国や都であり、市ではない」として片づけようとする行政に対して、住民と正面から向き合うべき基礎自治体としての姿勢を問い続けてきました。

 2006年には、50年前の駅前再開発計画に対し、費用対効果と景観等の観点から見直しを求めた市民の皆さんと住民投票を提起。年末の本会議で1票差の否決となりましたが、18,000に及ぶ法定署名を集める過程で生まれた市民発の情報発信やネットワーク、市財政に対する意識の高まりは、参加と協働を旗印とした新しい市長の誕生を生むとともに、議会に対しても大きな転換を求める声へとつながっていきました。

見える議会へ、議論する議会へ

 そのころ、議会改革の勉強会や会津若松市議会などに出向き、先進議会の方たちから多くの助言と勇気をいただいていたことで、2009年に初めて3人会派「変えよう!議会・東村山」を結成。初めて加わることのできた代表者会議や議会運営委員会で議会改革について具体的な議論を重ねました。

 あれから4年半。

議会報への全議員別の賛否一覧掲載、陳情の取り扱いの改善、請願者の意見陳述(※基本条例施行までは休憩中の取り扱い)、本会議の録画配信、手話通訳の導入、委員会のUSTREAM中継、ツイッター(@hm_city_gikai)での発信等々、市民の力、議会事務局の頑張りを得て、超党派で進めてきました。

 12月議会での制定、来年4月施行へ向け、2年半にわたり取り組んでいる議会基本条例づくりでは、会派を超えた議論や街頭PR活動、報告会などを行うことで、「議会全体の向上を互いに目指す」という共通の目標に向けて汗している真っ最中。

徹底議論した議会基本条例づくり

徹底議論した議会基本条例づくり

 条例の内容について徹底議論した今夏には、会議机の配置を一枚テーブルに変え、ホワイトボードや付箋紙を活用して議論を可視化。民間では当たり前、と批判されながらも、初めてのことを一つひとつ形にすることで、議員間の信頼関係を深め、さらに前進させる基盤を固めてきました。

 現在ほぼまとまりつつある議会基本条例は、出し合った原案を元に合意が図れた項目だけを残す形としたため、先進例に比べて物足りない面があるかもしれません。多数寄せられたパブリックコメントでも指摘は多岐にわたります。専門家に入ってもらい整理をかけるべき、というアドバイスもありましたが、合意できる範囲で修正を施してこれでスタートを切り、課題については責任を持って議論し、走りながら手を加えていくということになりそうです。

 肝心要は、条例施行後に東村山市議会がどう変わるか、変われるかに尽きます。周回遅れのランナーは、いつまでたっても周回遅れかもしれませんが、立ち止まらずに走り続けることを議会として誓い、上げ底することなく身の丈を正直に明かして市民の前へ出て、情報提供と意見交換を続け、市民とともに歩むことが、今すべきことだと思っています。

市制施行50周年記念で誕生した「ひがっしー」

市制施行50周年記念で誕生した「ひがっしー」

 「こと議会改革については、会派を超えた思いの共有と信頼関係、事務局の熱意なしには成し得ない」と、先を行く議会のキーパーソンの皆さんから聞いてきた言葉。その意味が、今ようやく実感として分かったような気がしています。

 予期せぬ形で飛び込んで10年半。議会内のごく少ない無所属議員としては、自分たちのまちのことに目を向ける市民が一人でも増えること、芽生えた関心がつながり合い、新たなエネルギーを生んでいくための輪がさらに広がることを願い、自分のできることをしっかり重ねていきたいと思っています。

 議会は特別な人たちによる特別なところではないので、自分自身が飛び込んでやってみるという選択肢もいつでもありますよ、ということを発信できるのも、私ならではかもしれません。

 本気度と覚悟を、絶えず自分自身に問い直しながら。

著者プロフィール
佐藤 真和(さとう まさたか):1963年6月27日生。東京都日野市出身。慶應義塾大学卒。民間社会教育・野外教育の職員として13年。その後、学童保育、保育所等に勤務の後、2003年4月の市議選に初当選。「大事なことは市民が決める東村山へ」をテーマに、一貫して無所属。3期目の現在は一人会派「ちゃんと変えよう!東村山」として活動。NPO法人多摩住民自治研究所理事
blog:佐藤まさたか WEBSITE
facebook:佐藤 真和
twitter:佐藤まさたか
東村山市議会HP:東村山市議会/東村山市
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