第62回 市民から期待される、いや、まずは、気にされる「議会」にしたい  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第62回 市民から期待される、いや、まずは、気にされる「議会」にしたい (2013/11/27 旭川市議会議員 上村有史氏/LM推進地議連会員)

関連ワード : 上村有史 北海道 地方議会 旭川市 条例 

政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第62回は、北海道旭川市議会議員の上村有史氏による『市民から期待される、いや、まずは、気にされる「議会」にしたい』をお届けします。

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東北以北で第3の人口規模を有する旭川市

旭山動物園

旭山動物園

 旭川市は人口35万人で北海道第2の人口規模を有する中核市。毎年冬を迎えると初冠雪がニュースとなる大雪山連峰に抱かれ、四季が織りなす自然、旭山動物園や旭川ラーメンなどの観光資源もあり、台湾をはじめとした外国人観光客の入り込みも増加している。旭川駅周辺の「北彩都」再開発事業が最終段階を迎え、新駅舎や駅前広場、北彩都ガーデンの造成が進められているほか、2015年春に駅直結型のイオンモールの開業が予定され、街の「顔」が大きく変わりつつある。旭川市議会は定数36人。圧倒的多数を持つ会派がなく4人の無所属議員を含めた時々の構成により、多様な議会意思を形成することが可能となっている。さらに、2011年の統一地方選挙で11人の新人議員が誕生したことで、過去の慣習やしがらみにとらわれない新たな議会を形成するチャンスが訪れている。

議会の変化と旭川市議会基本条例の制定

 私が旭川市議会に身を投じたのは2007年。全国的に議会改革が叫ばれていた中、初当選後の議会の雰囲気は決して褒められた状況にはなく、議会運営委員会における議会改革論議も、全会派一致の原則により重要事項は常に先送りの状況が続いていた。さまざまな提案を行ってみたものの、その中で実現に至ったことは、本会議を始める前にわざわざ議会事務局職員が各会派の控室に参集の呼びかけに来るという運用を廃止して、定刻に自主的に参集する、という本当に当たり前のこと。同じ趣旨で提案した定例会や委員会の郵送による召集通知の廃止は、なぜかそれを求める議員がいるということで見送られた。

 そんな、旭川市議会に大きな変化が訪れたのは2009年。2年交代が慣例となっている議長選挙における候補者の1人が議会基本条例の制定を掲げたことに端を発する。わが市議会において、議長選挙が議会に変化をもたらす大きな転換点となることが多い。普段あまり変化を望まない大会派が、議長ポストの獲得を意図してさまざまな知恵を絞り改革を訴え始めるからだ。その後、検討委員会が発足し、議員自らが条例文案を作成し、地域説明会を開催するなどの精力的な作業の上に、2010年12月に旭川市議会基本条例が制定された。

基本条例制定後と広聴広報委員会の活動

 旭川市議会基本条例の特徴的な点は、本会議質問における一問一答方式の導入、請願・陳情提出者の常任委員会における趣旨説明の機会の提供、市民との意見交換会の実施、外部機関による議会運営の評価検証の実施などが挙げられる。これまでも協議をしてきたものの、全会一致の原則により毎回、棚上げになっていた案件も多い。その導入がスムーズに決定されたのは、条例制定という一定の目的が共有され、結論を導く目標時期があったから。一定の議論を踏まえながらも多数意思で決断したことによる。議会基本条例制定の最大の成果は、こうした進めるべきことをスピード感をもって決めるという、当たり前のことを少しは進められる文化が根付き始めたことであろうか。

市民と議会の意見交換会

市民と議会の意見交換会

 そのほかにも、議会広報誌やホームページなどの広報と意見交換会を企画・運営する広聴広報委員会が設置され、これまで議会事務局任せであった広報誌を議員目線でリニューアルしていく契機となったこと。そして、議員全員が「議会」として市民と直接対話を行う意見交換会を実施する中で、これまでの議員個人あるいは会派という発想から「議会」という視点が現れ始めたこともある。今後の活発な議員間討議の実施や議員、あるいは常任委員会発議による条例提案などの外向きの議会意思の形成が期待できるという実感が持てるようになった。

これからの課題と期待

 とはいえ、旭川市議会の現状は、そうした期待への緒に就いたばかりである。広報誌のリニューアルに際しては、公平性を論拠にいまだに議員の個人名や写真が掲載されることをタブー視する内向きの風潮がある。未着手である議案の賛否内容の公表をしようにも、市民にとっては何ら関係もない会派単位で良いという意見、無所属議員を含めて議員個人の議決結果を公開することに抵抗感をもつ旧来的な発想が根強く残っており、やる気をそがれ心が折れそうになることもある。

旭川市議会議員 上村有史氏

旭川市議会議員 上村有史氏

 それでも、基本条例後の議会運営は大きく改善の方向に向かっており、以前では考えられなかった委員会などのインターネット中継の実施も検討の俎上(そじょう)に上ってきた。今年3年目を迎えた意見交換会は、議員間の合意を踏まえた個別テーマを設けて実施するところまできた。市民から提示された要望や課題に対する「議会」としての対応も見え始めている。近いうちに、活発な議員間討議や議会提案による政策形成が行われるだろう。

 しかし、ここ数年で取り組んでいる議会の取り組みに対する評価はまだ十分ではなく、意見交換会の参加者も議会の傍聴者も少ないのが現状だ。いまだに市民からは期待されていない「議会」ではあるが、せめて興味をひく「議会」となるようあきらめることなく、一歩ずつこの取り組みを担っていきたい。

著者プロフィール
上村 有史(かみむら ゆうじ):1977年生まれ。中央大学法学部卒。グッドウィルグループ(株)帯広支店長、北海道統括部サービスマネージャー等を経て故郷への貢献を胸に2005年に帰郷。元エンターテイメントスペースEDEN(ディスコクラブ)代表。2007年の統一地方選挙で旭川市議会議員初当選(29歳)で現在2期目(無所属)。1期目で波紋を呼んだ民生常任委員会委員長を経験。現在、広聴広報委員会の副委員長を務める。スポーツ新聞仕立ての広報誌「ギガスポ」で第5回マニフェスト大賞・優秀コミュニケーション賞を受賞。
HP:旭川市議会議員 上村ゆうじの公式サイト
facebook:上村 有史
twitter:上村ゆうじ
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