【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第27回「ひたちなか市の現況と議会が取り組んでいること」(2013/03/13 茨城県ひたちなか市議会議員 樋之口英嗣/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第27回目は、茨城県ひたちなか市議会議員の樋之口英嗣氏による「ひたちなか市の現況と議会が取り組んでいること」をお届けします。
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人口15万7,000人、比較的平たんな地形、面積99.07平方キロ、東京から北東へ約110キロ、太平洋に面し、多くの動植物の南限・北限である茨城県のほぼ中央に位置しています。財政規模としては、2013年度予算案は、一般会計494億5,000万円、特別会計349億 1,984万円です。
出荷額等からみると工業が中心のまちですが、漁業あり、干し芋日本一の生産量を誇る農業あり、ひたちなか地区(太平洋に面した地域)には全国展開している商業施設もあり、バランスの取れたまちです。1994年11月に漁業中心の旧那珂湊市と工業中心の旧勝田市が合併し、比較的順調な発展を遂げています。近年、国際港湾の整備も進み、ひたちなか地区への大型建機類の会社が相次いで操業を開始して、人口はわずかですが増加しています。
また、2010年4月、市民参加による自治基本条例とも言える「ひたちなか市自立と協働のまちづくり基本条例」がつくられ施行されました。目的は、第1条で謳われており、次の通りです。
「この条例は、市民がまちづくりの主役であることを明らかにし,市民と市が自立と協働のもとにまちづくりを進めるための基本的な事項を定めることにより、ひたちなか市の自治力の向上を図り、誰もが安全に、安心して幸せに暮らせる住みよいまちを実現することを目的とします。」
議会は、合併当時52人の議員を抱えていましたが、現在では25人の議員で構成されています。特徴としては、議会活動がより活発にできるようにとのことから、常任委員会から予算部分を分離して新たな常任委員会とし、第一種常任委員会(総務生活・文教福祉・経済建設)、第二種(予算・決算)、第三種(広報)の構成になりました。議員は、2つ以上の常任委員会を担当できることとしています。
議会基本条例策定については、2012年4月に議会改革推進特別委員会が設置され、現在進行形で討議されているところです。また、議会では特別委員会とは別に議会運営委員会で、委員自ら課題を見つけ、答えを出し、実施するようにとPDCA的な手法で改善を繰り返しています。その他、広報委員会では小学生対象に出前講座(小学校へ出向き)を始めたところです。
目指す議員・議会像~政治家の品質~
2000年4月に地方分権一括法が施行され、機関委任事務が廃止され法定受託事務と自治事務とに変わりました。分権は、まさに地方にとって自立の絶好のチャンスなのですが、財源の委譲と事務量とのバランスを欠いております。
国および地方自治体では、バブル後、一部の自治体を除いて財政状況は悪くなる一方で、国の本音としては、住民サービスの向上ばかりでなく基礎自治体が自立を図り、補完性原理に基づき無駄を省き、財政の改善をすることが主な目的だったのでは、と思っています。
さて、権限の委譲により、地方自治体は、その守備範囲が広くなったわけですが、権限を行使する議員の質と量を見ると、量(定数)は減少の一途をたどり、質についても向上を要求されているにもかかわらず、安穏としているところも見受けられ、現状に満足せず前向きに改革する議員はまだ少数のようです。
世間一般には、政治家の品質に問題ありと言われ続けてきました。政治家の品質は、まさに政治の信頼性と正の相関関係にあり、自己研さんする議員や自浄作用が働く議会であることが期待されています。政治家個人の努力もさることながら、議会の品質を保つ、向上させるには、特に議会基本条例などにおいて、その質の担保する必要があるのではないでしょうか。
また一方では、選挙が政治家の品質を保つ道具であるべきですが、市民にとって、選挙に際しての判断基準があいまいであることなどから、それが選挙権を行使しない一因にもなっていると思っています。
そんな中でマニフェストは、選挙時における政治家の信頼性を測るツールとして重要な役割を果たしています。こんなことをやる、あんなことをやる、言うだけなら誰でもできる、その通りにやっているかどうかをチェックできるのも、きちっとしたマニフェストがあればこそです。マニフェストは、市民との政治のパイプ役となるツールです。
政治家の重要な仕事の1つは法律や条例を作成することですが、もし信頼できない政治家が作った法律・条例であったとするならば、市民は、その法律・条例を素直に受け入れることができるでしょうか、遵守の気持ちが湧いてくるでしょうか。
分権により地方への権限が増す今、地方議員・議会に問われているのは、その質と信頼性です。
都市間格差について
中央と地方の格差は広がるばかりです、理由の一因として考えられるのは、日本全国から集めた税金等の投資が中央(東京都)ばかりだったり、中央集権による権限の集中により何でも東京へ行かなければできない構造があります。地方の努力だけでは、もはや都市間格差を是正することは不可能に近い状態です。
例えば、大学ですが、東京大学(国立)の平成24年度の年間予算がおよそ2,300億円(うち運営交付金840億円)、予算のすべてが税金ではないですが、多くの税金が投入されています。2009年度の統計を見ると、国立大学12校、公立大学5校、私立大学119校が、東京都にあります。私立大学への補助金などを考えますと膨大な額の税金が首都圏に投資されていると考えられます。
また、東京の大学に通学している学生数は、約71万4,000人を数えます。某大学の統計では、学生数のうち約27%が東京出身です。東京にあるすべての大学の学生のうち、概ね半分以上の学生が親元からの仕送りなどで生活しているということになります。そして、1人当たりの仕送りが月額平均約8万円との統計もあります。これだけでも大変なお金が毎月、東京へ向かって流れています。
このような事例は、公のお金ばかりではありません、NHKの受信料も年間約6,000億円(平成24年度予算)も全国から中央・東京都に集められています。地方法人二税にしても全国で営業して上げた利益から税として納められていますが、そのうち東京都での割合は全国の約25%です。
地方で働いても東京都に本社がある場合には、税金の多くは東京都に入ります。東証一部上場会社のうち約半数が東京都に本社を設けています。この構造が改善されずに進むのであれば格差は開くばかり、地方でのどんな努力も焼け石に水の状態ではないかと思っています。衰退は一向に止まらず、夕張のようなまちが次々と出てくることになるでしょう。
地方がダメになれば結局、中央もダメになります。これは人間と同じで、頭と心臓だけでは生物は成り立ちません。動脈硬化を起こした血管は、何らかの手術や投薬が必要です。この治療をするのは政治家です。
- 著者プロフィール
- 樋之口英嗣(ひのぐちひでし):茨城県水戸市生まれ、64才。茨城県立緑岡高等学校卒後、武蔵工業大学(現東京都市大学)経営工学科卒。約6年間、永大産業にてサラリーマン生活をおくる。その後、栄伸に入社し現在にいたる。1999年にひたちなか市会議員に初挑戦、9票差の次点。2003年に初当選。現在3期目、自治基本条例特別委員会委員長を経て現在、議会運営委員会委員長。ローカルマニフェスト推進地方議員連盟会員
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